第六十話 増えました。(いい加減にして)
其れは精神を破壊する性能を誇っていた。
一度見た者は心に異常をきたし知らず知らず狂気に苛まれる。
そんな存在だ。
有史以来一定の確率で存在する其れ。
其れは着々とその場にいる者の心を犯す。
此れは。
此れは。
此れは一種の兵器だ。
「は~~い美しい人~~僕の虜にならない~~」
「結構です」
胸を大きく開けバラを咥えた変態が堂々と僕の嫁を口説いてる。
口説いてるよな?
家に上がり込んで嫁の足元に膝突き手を差し伸べてる。
其れを見下す嫁。
嫌悪と蔑みの目で見てます。
此奴の存在は平気だな。
「既婚者を口説くな魔法青年大介」
魔法青年大介。
またもや変態の関係者です。
大きく開けた胸に口にくわえたバラ。
一昔前の少女漫画に出てくる感じの人物ですね。
スカートを履いてるけど。
変態が居ます。
「口説いてるのかアレ?」
「うんそうね」
「馬鹿だな目が悪いらしい」
「口説かれてる本人は虫けらを見る目で見てるけど」
大樹さんが大介という人物を叱責する所を太輔さんがツッコむ。
其れに同調する御母さん。
嫁よ頼むから悪の怪人としての目は止めて。
可愛くないから。
「御風呂借りるね」
「は~~い」
御母さんの言葉に僕は頷く。
またかよ。
というか此の状況で行くか?
「嘆かわしいね~~」
オタネさんのんびり御茶を飲むのは良いけど。
いい加減御茶請けの漬物食うの止めて。
塩分で倒れるぞ。
「まあ~~変態が増えたという事で」
「そうかい? 何やってるんだい?」
「商売道具をだしてます」
「はい?」
いそいそと僕はバックを開ける。
其れを見て呆れるオタネさん。
ブンッ!
僕が取り出したバットを魔法青年大介に振るった。
「ひいいいいいいいいいいいっ!」
迫るバット。
其れはためらいもなく大介の頭部を狙う。
「タマ取ったるっ!」
「嫌だあああああああっ!」
全力だ。
改造人間の力を存分に生かした一撃。
次の瞬間柘榴の様に成るだろう。
大介の頭部は。
「旦那様……素敵」
僕の行動に感動した様な顔をする。
大概だな僕の嫁。
ガシッ。
大介の頭部に当たる習慣其れは止められた。
一本の指で。
「危ないの~~若者よ」
「あんたはっ!」
其れを成し遂げたのは一人の老婆だった。