第四話 思念獣
無事釣り人の記憶を消すことに成功した。
アレを記憶を消した事になるのならだが……。
「まさか忘却魔法が物理だとは思わなかったわ~~」
湿った音と石を砕くような感触。
其のあとの感触に背筋がゾッとする程悪寒がする。
アレは普通なら即死していた。
即死しない方がおかしい。
最後のあの感触。
石の下の柔らかい何かを潰した感触がした。
「どうしたのマー君」
僕の肩に乗って家へ帰宅途中のタマは此方を見る。
前は普通の猫と思ってたのに……。
忘却魔法の事もあり悪魔としか思えん。
「別に」
ひゅんひゅんと、周囲の景色が流れていく。
疑似的な魔法少女の力で家まで移動していた。
体感速度でいえば新幹線と同じぐらいだろう。
「忘却魔法が物理攻撃とは思わなかったと言ってるんだよ」
「脳の海馬に記憶が移される前に物理的に破壊する其れが忘却魔法さ」
タマは手を組みながらエッヘンと踏ん反り返る。
此奴絶対普通の猫じゃない。
悪魔と言っても信じるぞ。
「なんだよ~~ジッと見つめて~~」
いや~~んと、身を捩らせるタマ。
うん。
キモイわ。
流石は引きますよ。
「御前……」
自然にジト目に成る。
「僕を長時間視ていいのは可愛い子猫ちゃんだけさ」
「そうかい」
「其れはそうと……どう? 魔法の感想は?」
「魔法って……記憶を脳味噌事物理的に粉砕する事だろ」
「そのあとは治癒魔法で治療して完成だね」
「普通に殺人なんだけど」
「違うよ~~魔法だよ~~」
「飽くまでも魔法と言いはるかい」
「記憶が消えるんだから魔法だろ?」
此奴の正体は正義の味方ではなく悪魔だろう。
何で御母さんは此奴を信用したんだろう?
「はあ~~」
うん?
「不味いっ! 馬鹿なことをしたっ!」
血の気が物凄く引いた。
「どうしたのマー君?」
「タマが此処に居たら御母さんが変身できない」
「大丈夫だよ~~」
「待っててくれ御母さんっ!」
「聞いて無いし~~」