第三十九話 隙を作るって簡単だよね。(結果と過程を考えなければ)
さて。
僕は眼前の光景を観察する。
遠くを見ればこの騒ぎの中何故か誰も出てこない環境。
其れに加え何故か近くの民家は明かりは有るが生活音が無い。
この時間だ既に寝てる可能性は有る。
有るが明かりを付けて寝る者は少ないと思う。
少し異常だ。
見渡すかぎりの民家を含むビルの明かりは有る。
それに店などの看板に備えられてる照明も点灯してる。
それなのに異常なまでに静かだ。
まるで無人の死んだ町に訪れたみたいだ。
食事途中で忽然と住民が消えた町に。
だけど其れが違う事は証明済みだ。
近くで気絶している青年たちが居るからだ。
「うう~~ん煩いな」
「此処は何処だ? うん?」
「おいアレ」
あ……気絶してる青年たちが起きた。
「「「ひいいいいいいっ!」」」
驚いてるけど腰が抜けたみたいです。
まあ良いか。
此処に一般人が居るという事は先程の僕の考えを否定してる。
だから完全に無人という訳ではない。
なのに此の静寂だ。
まるで風景が切り取られているみたいだ。
不自然だ。
具体的に言えば写真の中に紛れ込んだ感覚だ。
「どっせいいいいいいいいいっ!」
「ぎやあああああっ!」
「くそおおおおおおおっ!」
訂正。
静かだという事は訂正する。
愚兄達が戦っている音が煩い。
「ふんっ!」
「「なっ!」」
轟音を立てて支援機を投げ飛ばす蛸型異星人。
「その程度かっ! 我が宿命のライバルよっ!」
触手を腕の様に組み蛸型異星人は愚兄達を見下ろす。
「くうう~~転倒したぜ」
転倒したカブを起こす愚兄。
「私は頭を打った~~」
一回転した軽トラックで愚痴る姉。
二人とも頭を押さえてる。
というか蛸型異星人。
あんたそんな馬鹿二人を宿命のライバルにしてるの?
というかスキあり。
静かに疾走して僕は金属バットを蛸型異星人の頭部を狙う。
柔らかい衝撃を感じた。
此れは触手?
何時の間に?
僕の金属バットは頭部を庇った触手に防がれた。
「ふむ……不意打ちとは卑怯な……」
「戦いに卑怯も何も有るかっ!」
「ふあっ!」
僕の言葉に素っ頓狂な声を上げる蛸型異星人。
不意打ちが駄目なら……手数で。
僕は怪人と魔法少女(服装のみ)に変身した得た怪力で連続攻撃する。
だけど全て防がれた。
やはり不利だな。
足がわりに使ってる触手をは問題ない。
問題は残り六本の触手。
其れで全ての攻撃が防がれてる。
力は互角。
速度は僕が上。
だけど手数が違う。
六本の触手は予想以上に厄介だ。
僕は一旦仕切り直しをすべく離れる。
「一筋縄でいかないか……」
「やはり我が宿命のライバルの弟だけは有る手ごわい」
「あんな弱虫と一緒にすんなっ!」
「えええええええっ! 弟なのに否定するのっ!」
「当たり前だろうに」
「言い切りやがったっ!」
ふう~~。
戯言は良い。
「愚兄達と違う所を教えてやる」
「「言い方っ!」」
煩い。
「見せてやる僕の魔法を」
僕の言葉と共に金属バットが輝きだす。
魔力の高まりを感じる。
ナノマシンの所為か何時もよりも魔力を感じる。
「まさかっ! 御母さんと同じ魔法を使えるのっ!」
「そんな馬鹿な魔法少女の力を本当にっ!」
愚兄達の驚愕の声は響く。
その言葉と共に魔力が一際高く高まり其れに呼応して光が輝きを増す。
其れは魔法少女の力。
不完全ながらも僕が引き継いだ力だ。
「魔法だとっ! そんな馬鹿なっ!」
僕の言葉に蛸型異星人は戦慄の声を上げる。
未知への恐怖。
其れが蛸型異星人の心を占めていた。
「真忘却魔法おおおおおおおおおおおおっ!」
光輝く金属バットを振り上げ僕は突進する。
其の速度は通常の速度を遥かに超える。
そして僕の金属バットは目標を粉砕する。
「「「ぎやああああっ!」」」
目標である青年達の頭部を。
粉砕し飛び散る赤黒い物。
白い破片も有るが気にしない。
「「「まさかの誤爆ううううううううっ!」」」
蛸型異星人と愚兄達が眼前の惨状に悲鳴を上げる。
あまりのグロ光景に震えあがる。
大きな隙だ。
此の隙を作るために僕は魔法を使った。
どうせ真忘却魔法の効果で頭部は復元されるんだし。
「今だっ!」
その隙を僕が見逃すはずがない。
振りぬいた金属バットを僕は方向転換する。
「ひっ!? ぎやああああっ!」
そして其のまま蛸型異星人の頭部を粉砕する。
「見たか僕の魔法の力をっ!」
「一般人を殺す何て悪逆非道……流石悪の怪人」
「弟が快楽殺人犯に……」
僕の所業に放心状態で文句を言う愚兄達。
「ふう~~真忘却魔法とは物理攻撃で脳を完全に記憶事破壊し蘇生させる魔法です」
「「だから?」」
「隙を作るため使いました」
「「鬼かああああああああああっ!」」
「良いじゃん~~どうせ後で蘇生するし」
うん。
会心の一撃でした。




