表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/81

第三話 忘却魔法

 ひゅんひゅんと、風が唸る。

 足元を見ればドンドンと景色が変わる。

 建物から建物へ。

 電柱から電柱へ。

 尋常でない速度で僕は駅まで移動していた。

 歩道を使わずに。

 建築物を足場にして跳躍しながら移動していた。


 思った以上の運動能力だ。

 この能力は。

 

「どうだい~~マー君調子は?」

「思った以上だこの能力は」

「其れは何よりだね~~」


 僕はタマの言葉に興奮しながら答える。

 興奮の理由は簡単だ。

 お試しとして変身した魔法少女の力に酔いしれていた。

 人を超越する反射神経。

 コンクリートすら粉々にする怪力。

 トラックの衝突すら軽々と防ぐ防御能力。


「凄い」

「そうだね~~」


 はっきり言って人知を超えた能力に興奮を隠せない。

 そのまま僕は無人の海岸に降り立つ。

 そのままザックザックと、砂浜を歩く。


「でもな~~この格好はいただけないよな~~」

「仕方ないよ~~」

「はあ~~」


 タマの言葉にふう~~とため息を付く。

 超人的な能力を誇るといえどため息も出る。

 フリルのついたドレス。

 下着が見えそうなミニスカート。

 ローティーンの少女なら映えるゴスロリ服。

 魔法のステッキ。

 魔法少女の標準的な衣装だと分かる。


 此れが少女なら物凄く似合うだろう。

 しかし先程見た鏡では違った。

 ゴスロリ服を着たオジサン。

 見た目変態だった。

 そう変態。


 先程鏡を見た時の衝撃は忘れない。

 横に引き伸ばされたゴスロリ服を着たオジサン。

 余りの光景に心臓がきゅっと、止まるかと思った。

 トイレにこもり晩御飯を吐いたのは初めてだった。

 しかし心を強く持った僕は能力の検証を考え付く。

 結果は予想以上だった。


「此れで責めて衣装が御助けキャラと同じなら良かったのに~~」


 特撮番組マジカル・タカコ。

 其れには御助けキャラが出てくる。

 其の名も背広仮面。

 流行遅れの背広にアイマスクをした謎の戦士。

 その正体は悪の組織ストレスの裏切り者だ。

 という設定です。

 

「無茶言うなよマー君」

「言いたくもなるわっ! 此れを見ろ」

「キモイね」

「僕の未来は死ぬかキモイ格好だけかいっ!」

「何も血涙流さんでも~~」


 僕は剛毛が生える太腿を見ながらスカートの裾を広げる。


「御助けキャラなら背広と目元を覆うマスクだけで済むのに」


 何処で人生を踏み外したんだろう。


「ノリノリで変身したくせに」

「してないわっ!」


 ギャアギャアと、僕たちが言ってる何処かでズッと砂の音がした。

 すると懐中電灯の光が、砂の音がした方からした。


「不味い此の格好を見られたら不審者と思われるっ!?」

「大丈夫だよ~~普通の人はその姿を認識できないから~~」

「そうかい……」

「××※何××※※」


 どうやら夜釣りに来た釣り人みたいだ。

 釣り竿とクーラーボックスに懐中電灯を持っているようだ。

 多分此処の砂浜で釣るみ予定なんだろう。

 懐中電灯の光を僕に当てると顔を引きつらせる。


「うん?]


 じいい~~と、明らかに此方の服を凝視してる。

 


「おや?」

「おい」


 釣り人の様子がおかしい。

 目はキョロキョロしている。

 明らかに不審者を見る目だ。

 というか認識してるみたいだ。

 此の格好を。


「ひいいっ!」


 慌てて釣り人がスマホを取り出す。

 ヒヤッとする。

 此の後の展開は分かる。

 通報されるのだろう。

 この距離だ顔もばれてる。

 どうする?


「マー君忘却魔法を使えっ!」

「忘却魔法っ!」

「使えば相手の記憶が五分ほど無くなる魔法だ」

「どうすれば良いんだ!?」

「僕の言うとおりにしてくれっ!」

「良し先ずは相手に近づいてっ!」


 僕は指示通りに素早く釣り人に近づく。

 釣り人の引きつる顔が映るが気にしてる暇はない。

 

「そのまま魔法のステッキを振りかぶって僕の詠唱を真似してっ!」

「分かったっ!」


 キイイーーンと、異様な音が魔法のステッキからする。

 そのまま見た事のない光が溢れる。


「マジカル~~」

「マジカル~~」


 魔法のステッキを振りかぶる。


「「忘却魔法」」


 魔法のステッキの光が強くなる。

 

「其のままステッキを地面に叩きつけるように振ってっ!」

「分ったっ!」


 その言葉と共に僕は振り落とす。


 ゴスッ!


「グエッ!」


 鈍い音がした。

 当たり前だ。

 釣り人の頭部を殴ったからだ。


「あれ?」


 思わず僕から唖然とした言葉が出た。

 当然だ。

 思わず勢いで当てたからだ。

 そのまま釣り人はズザッと、音を立てて倒れる。


「此れで記憶は消えた……多分」

「じゃねねええええっ!」

「え~~確実に記憶消すなら後は五発程殴った方が良いよ」

「普通に犯罪だあああああああああっ!」

「え~~」


 タマの心外だという態度に顔を引きつらせる僕だった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさか忘却魔法が物理だとは思わなかったわ そもそもこれ本当に魔法?w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ