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プロローグ

練習用を手直ししました。


元は幻想家族が自重しないんですけど実母は魔法少女。(吐血)


前回見た人は七話目から見ることをお勧めします。

 ずきずきと痛む後頭部を摩りながら僕は鞄を抱え直す。

 はあ~~と溜息が出た。

 いや本当に。


「あ~~痛かった」


 後頭部の痛みの原因は仕事中の不注意が招いた結果だ。

 幸い病院に掛かるほどの傷ではないが大きな瘤が出来たのは御愛嬌だろう。

 派遣先の食品加工工場のから帰宅したは良いが残業が多く遅くなった。

 最終電車を乗り損ねなかったのは運が良いと思う。

 

「季節的に涼しくなったな~~」


 季節は夏から秋。

 蒸し暑い季節を過ぎた頃だ。

 リーン、リーンと鈴虫の鳴き声が聞こえてくる。

 空を見上げる。

 時間的に言えば深夜。

 見渡す限りの満天の夜空に僕は感嘆の息をつく。

 四十代後半。

 出会いもなく気が付けば此の年だ。

 最早結婚は無理だろう。

 両親は既に七十代後半。

 何時お迎えが来ても可笑しくない。

 兄弟は兄と姉が一人ずつ。

 自分が末っ子だ。

 残りの家族と言えば猫ぐらいだろう。

 兄と姉は既に結婚しており子供もいる。

 其れに比べ自分は結婚どころか出会いすら無い。


 目下の悩みは其れだ。

 まさしく何処にでもいるモブのような人生だ。


 僕は目を伏せて考え込む。

 後は……。


 ズズン。


「×※××で×※」


 地面が揺れると同時に誰かの声が聞こえる。

 

「うん?」


 何だろうと思い目を開けると非現実的な光景が広がっていた。

 

 黒い大きな巨人。

 

 そうとしか表現できない何か。

 ゴムのようなの質感をした巨大な人型。

 そう人型。

 ツルツルとした鈍い硬質のゴムのような体を持つナニカ。

 明らかに一目で生物ではないと分かる。

 顔には人と同じように二つの目と鼻に口が有る。

 ゴムのような皮膚を持っているのは見ればわかる。

 目に該当する部分は硝子のような物がはめられている。

 鼻はヒクヒクと動き息をしているのが分かる。

 口の中は底なしの闇の様に暗く奥まで見えない。

 耳らしき物は見えない。

 なのに其れは生物の一種と感じた。

 異形

 異形の巨人。

 ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。


「オオ~~ストレスッ!」

「はあ?」


 余りの異常な光景に僕は硬直する。

 決して間抜けなセリフに呆気に取られたとは言わない。

 僕の日常に、こんな非日常は存在しない。

 

 こんな日曜日に放送される特撮物の怪物なんて知らない。

 そう生物ではなく怪物。

 明らかに此れは生物ではない。

 かと言って無生物ではない。

 なのに動いている。

 非現実的な光景に僕は凍りついた。

 というか昔はやった特撮物の敵にそっくりだ。


「オオオオオオッ! ストレスウウウウウウウウッ!」


 其れはニヤリと笑みを浮かべる。

 拳を握り込んだ其れはグワッと両手を広げる。

 其処から僕を殴ろうと大きく手を振りかぶる。

 

「危ないっ! マー君っ!」


 聞きなれた声とともに僕は誰かに庇われて其れを躱した。

 

 ズズンッ!


 電柱を砕いた其の攻撃に恐怖する。

 そう恐怖した。

 人一人を簡単に殺せる異形に。

 しかしその前に其の前に僕を助けてくれた人に目を向けた。

 其処には予想通りの人物がいた。


「母さん」

「マー君大丈夫だった?」


 ニッコリと笑うその女性。

 僕の実の母である。

 暁貴子。

 僕の……

 暁真央の実の母である。

 七十八歳の皺だらけの老婆。

 そう老婆と言っても差し支えない年齢だ。

 此の年になってもマー君呼ばわりは止めて欲しい。

 だけど今は差し迫った問題が有る。

 目の前の異形だ。

 此れは明らかに僕を狙ってる。

 何故か。

 早急に逃げなくてはならない。


「母さん逃げるよっ!」

「マー君大丈夫よ」

「はあ? 何言ってるの逃げないと殺され……」


「オオオオッ!」


 異形の腕が振るわれる。

 僕たちを殺すために。


 ガシッ。


 其処までだった。

 そう其処まで。

 巨人の一撃を軽々と受け止める母さん。

 とても七十台の老婆とは思えない。

 明らかな異常だ。

 そう異常。


「ヤレヤレ間に合ったみたいだね」

「タマ遅いよ」

「はい?」


 タマ僕の家で飼われている猫の名前だ。

 その声の方を見ると、そいつが居た。

 我が家の猫タマだ。

 但し後ろ足で立っている。

 タマは、にこやかな笑顔を見せると僕に手を振る。


「お帰り真央君」

「え?」


 片目を瞑るタマに僕は唖然とする。

 其のあと母さんの方を向くと手を広げる。


「ごめんよ~~僕の可愛いハニーが引き留めててさ~~」

「はいはい分かったわ」


 チャラ男のような口調で言い訳をするタマ。

 ため息を付きなら其れを流す母さん。


「扱い雑っ!」


 憤慨するタマ。


「其れより変身するよ」

「良いよ~~」


 タマの言葉と共に母さんが眩い光に包まれる。

 はい?

 何で光るの?


「「マジカル変身っ!」」

「は?」


 タマと母さんの言葉に唖然とする。

 眩い光が徐々に収まってくる。

 其の中から一人の少女が現れた。

 ピンクの髪。

 黒い目。

 張りのある肌。

 沢山のフリルが付いたドレス。

 見た目は十代前半の少女。

 手には魔法のステッキを持っていた。

 そして顔は何故か見覚えが有った。


「愛と平和の使者マジカル・タカコ此処に参上っ!」


 当然だ。

 僕の母親だからだ。

 但し十代前半の。

 写真で見たことが有るからだ。


「ストレスウウウウウッ!」


 巨人は再度襲い掛かる。

 但し僕ではない。

 母さんを襲うみたいだ。


「はあっ!」


 ゴンッ!


 其れを躱す母さん。


「甘いっ!」


 ガンガンッ!

 ゴスゴスッ!


 一方的である。

 母さんは反撃を封じ蹂躙する。


「アッ! ストレスッ!」


 ボロボロになりながらも耐える巨人。

 

「此れで最後よっ! 必殺マジカル~~撲殺っ!」


 必殺と言いながらガスガスと素手で殴る。

 光線も何も出ない。

 しかも魔法のステッキは全く使ってない。

 唯の撲殺だ。

 昔の設定のままだ。


 ゴンゴン。

 ガンガン。

 ゴンゴン。


「ふんっ!」


 外見に似合わない言葉と共に巨人を破壊していく。


「ア~~ストレス」


 最後の悲鳴を上げズズンッと倒れる巨人。

 大きな地響きを上げ消えてなくなる。


「勝利っ!」


 チョキと母さんは指を開く。

 此処に再び正義の魔法少女が爆誕したっ!

 其の名はマジカル・タカコ(七十八歳)。


 今後の活躍に御期待っ!








「頭を打った所為で変な幻覚見た……」

「「現実です」」

「……」

 

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[一言] これはひどいw(褒め言葉)
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