マリアの笑顔。
「二人の大事な話を聞くわけないじゃない。なんの為にマリアちゃんがキョウちゃんだけを呼んだと思ってんのよ?そこまで野暮じゃないわ。」
「でも、そこに隠れて……。」
「タイミング見計らってきたのよ、ババアの力甘く見んな!!」
なんで逆ギレしてんのか分からないが、多分湿っぽい感じにならないようにしてくれてるんだろう。
「さ、服買わないと!さっきこれ渡し忘れたから入って来ちゃったんだよね。本当なら、初めから二人にしようと思ってたんだけどさ……。」
そう言いながら、母親はバッグの中から封筒を差し出してくる。
「これって……。」
「あんたたちの為にコツコツ貯めててさ!これで服買ってきて! 私達はここの喫茶店でお茶してるから。」
母親は少しでも俺達を元気づけようとしてくれてる。
マリアも、あの発言をしたとき、相当な勇気が必要だったはずだ。
俺は俺のできる事をやろうーーー。
ーーーーーー。
俺とマリアは服を買い揃え、喫茶店で母親達と落ち合う。
ごった返していた買い物客は少し落ち着き、ゆっくりとテナント店舗を見て回る事が出来た。
必要な日用品や化粧品等を買い揃えて、自宅へ帰る。
マリアには俺の隣の空き部屋を利用してもらう事になった。
その夜ーーー。
「いやーーーーーーー!!」
凄まじい叫び声と共に全員が飛び起きる。
「マリア!!」
扉を開けると、マリアはベッドの上で汗まみれになって震えていた。
「どうした、マリア……何があった?」
皆もマリアの部屋に来て心配している。
「まさか…………。」
マリアは無言だったが、言わなくても分かる。義理の父親の性的暴行の悪夢を見ていたんだ。
恐らく、今日だけじゃないはずだ……。
「マリア、落ち着いて……大丈夫だから、こっちを向いて。誰か分かる?」
俺はマリアの顔を軽く撫でながら目線を合わせる。
「彊……兵………。私、私は………。」
肩にしがみついて泣き出すマリア。
こんなにも心に傷を負っていた彼女に気づいてあげる事が出来なかった自分を悔いた。
「大丈夫、もう大丈夫だから……。」
俺はマリアを抱きしめ、頭を撫でる。
「キョウちゃん……。」
「分かってる。マリア、俺の部屋で寝よう。」
「いやいや、そこは同じ女同士、私と奈緒ちゃんとで寝ましょう!私はこれでも警察官ですよ?」
「元でしょ?ここは彼氏の俺の務めですね。」
「でも、女同士なら女子トークもできるよ、マリアちゃん!」
「フフッ!皆さん、ありがとうございます!じゃあ………湯川さん達と寝ます!」
「おーい、そこは俺とじゃないのかよー!(笑)」
良かった……みんなのおかげで、マリアに笑顔が戻った。まだまだだな、俺も。
ーーーーーー。
マリアはあれから湯川さん達と一緒に寝ているが、大丈夫なようだ。
「寝れないな……。」
俺は部屋を出ると、リビングに降りる。そこには母親が座っていた。
「母さんも眠れないの?」
「キョウちゃん……。うん。キョウちゃんが家に来た時の事を思い出してたの。」
「俺も昔はあんな感じだった?」
俺はキッチンに行き、ホットミルクを作る。
「母さんも飲むよね、ホットミルク。」
「頂こうかしら。……そうね、あなたが来た時も毎日、真夜中になると叫びながら飛び起きてたわね。悪夢にうなされて。」
母親は天井を見上げながら、昔の事を思い出していた。
「はい、母さん。」
コトンッとホットミルクを置くと、二人で静かにすする。
「マリアちゃんをあんな目にして、許せないわ、そいつ。」
「学校では普通にしてたから、全然気付けなかった……。」
「キョウちゃんのせいじゃないわよ。全部、義理の父親のせいなんだから。」
母親はホットミルクを飲み干すと立ち上がる。
「私はそろそろ寝るわ。キョウちゃん、マリアちゃんの事、離しちゃ駄目よ!」
「わかってる………おやすみ。」
母親は寝室へ戻って行く。
「マリア………。」
ーーーーーーーーー。
「先輩、彊兵先輩! なんでこんなところで寝てるんですか!もう朝ですよ!」
奈緒ちゃんに叩き起こされる。どうやら、あれからソファーで寝てしまったらしい。
「首痛って〜!」
「ソファーなんかで寝るからですよ!」
「彊兵、おはよう!」
マリアがリビングに降りてくる。
「おはよ、寝違えた、首痛い!」
「寝違えたって、そんなとこで寝るから!(笑)」
マリアがケラケラと笑ってくる。
俺はこの笑顔を取り戻さなきゃならない。絶対にマリアを悲しませる奴は許さない。




