彼氏って何だ?
自宅に着いた俺達は荷物を下ろす。
「疲れたーー!!」
全員一斉にソファーに座り込む。
「そのまま寝ちゃいそーーー。」
湯川さんはそのままぐでーんと横になる。
「運転お疲れ様です、湯川さん。」
俺はお茶を皆に配る。
湯川さんには、特別にジャスミンティーを。
「おかえりなさい、皆!暇だったよ、わたしゃ。」
母親が寝室から出てくる。
洗濯物が溜まってるし、食器は溜まってるし……。こりゃ大変だ。
「俺が洗い物するから、母さんはゆっくりしてて。」
俺は溜まりに溜まった洗濯物を洗濯機にぶち込んでスイッチを入れる。
食器を洗いにキッチンに行くと、マリアが既に洗い物をしてくれていた。
「ありがとう、マリア。休んでいてくれて良かったのに…………。」
「大丈夫ですよ、このくらいこなせないと、立派な奥さんにはなれませんから!」
ーーーーーーん?
「マリアちゃんみたいな子がお嫁に来てくれたら、お母さん大喜びよー!」
ソファーから、半分酔っ払った様な母親の声が聞こえてくる。
キッチンからソファーを覗くと、母親がウィスキーを飲んで酔っ払っていた。
「あるぇ〜、このおひゃ(お茶)、もやもやしまふれぇ〜?」
声の主は、なんと奈緒ちゃんだった。酔っ払ってるー! 母親なんてモン飲ませてんだー!!
「なおひゃん、おさけははたひになってからなんれすよ〜?」
もう一人酔っ払いがいる……。湯川さんだ……この人は……。
「母さんが二人にお酒飲ませたの?」
「だって、お茶だけじゃ疲れ取れないから。でも、お姉ちゃんにしか渡してないんだけどなぁ……。」
「わらひがわけてあげたんれす〜!」
呂律が回ってない湯川さんが手を振ってくる。 またダメ姉っぷりが発揮されてるな……。
「湯川さん、奈緒ちゃんは未成年者!アホ元警察官!」
俺はソファーに奈緒ちゃんを寝転がせる。
「あるぇ〜、きょ〜へ〜せんぱいら〜!」
気が付くと俺は、寝ている奈緒ちゃんに抱き寄せられ、キスをされていた。
「んんッーーー!!」
力強えーー!!取れねーーー!!
「彊兵を離しなさい!!奈緒!!」
マリアが走り寄ってきて何とか剥がれた。
「この姉妹は……油断出来ない……。」
湯川姉妹には本気で警戒しないと、大変な目に遭うことを身をもって知った俺だった。
ーーーその日の夜。
俺がベッドに横たわっていると、部屋の入り口のドアがノックされる。
「はい、どうぞ。」
「彊兵。」
入ってきたのはマリアだった。
「どうしたの?」
マリアは泣きながら飛びついてくる。
「彊兵、彊兵は私の彼氏だよね?彼氏だよね……?」
「当たり前だろ?どうしたんだよ、一体…………。」
「私をどこかに連れ去って欲しいの……。」
ーーーーーーえ。




