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おかえりなさい。

先程の海沿いの防砂林の道から農道へ。

窓を開けるとフンのニオイが車内に立ち込める。

「くっさ!!誰よ、窓開けたの!」

「アハハハハ!くっさーい!」

俺は園芸科に通っている。野菜を育てたり、畜産物を育てたり……。

だから牛糞を発酵させた肥料をよく利用する為、慣れてはいるが、車内に充満するとなれば話は別だ。


「ハナ、元気かな。」

ハナとは畜舎で飼っている仔牛だ。

中々大きくならずに心配している。

「彊兵、そういうのは憶えてるんだね。」

確かに………。全部記憶がなくなったわけじゃなく、一部分だけがゴッソリ抜け落ちた感じだ。

「うん……。まるでパズルのピースの様に、重要で思い出さなきゃいけない部分だけが丸々無くなってる感じなんだ。」

なんでなんだろうか……。何か自分にとって都合の悪い事なのか?


「石原先生の事もですか?」

「ちょっとお姉ちゃん、なんて事聞くの?!信じらんない!」

「湯川さん、この状態で言う事ではないですよ!さすがはポンコツですね!」

湯川さんの言葉に憤慨ふんがいする奈緒ちゃんとマリア。

マリアに至っては腕を組み、完全に不機嫌モードになっていた。

「湯川さんはもう少し、デリカシーというものを身につけるべきですね。」

「ごめんなさいーーー!!」

湯川さんは只々謝っている。


「彊兵先輩、何でもないですから!」

「そうよ、彊兵!気にしないで!私だけ見てればいいから!」

「何それ、私が彼女アピールやめてもらえますか?まだ諦めてませんから、私!」

「な、なんですってー!」


「いや、もう事件の事は全て思い出したから。ほら、奈緒ちゃんと付き合うってなった時に事件の事や観覧車の事を断片的に思い出したって言ったじゃん?その後に、ちょっとずつ夢に出てくるようになって、事件の事はピースが全て揃った感じ!」


「「へ?」」

マリアも奈緒ちゃんも虚をかれたかのような声を上げる。

「か、観覧車の件は?」

「マリアと二人で乗ったのは覚えてるよ!」

マリアは俺の言葉にガックリと肩を落とす。

『初キスだよね、あれ!』

俺はマリアに耳打ちする。マリアは途端に顔を真っ赤にして振り向いてくる。


「彊兵………まさか………。」

「もう少し黙っていたかったけど、マリアが可哀想だから。……全部思い出したよ、何もかも。」

「彊兵…!!彊兵!!…………んんッ!!」

俺が思い出しました発言をしたと同時くらいに、俺の口はマリアのキスによって塞がれる。

俺の頬に冷たい何かが付く。マリアの涙だった。

俺はマリアを抱きしめると、今までの失われた時間を取り戻すようにいつまでもキスを交わしていた。


「彊兵先輩…………。あ〜ぁ、今日は一人で慰めモードかな……。」

「奈緒ちゃん、下品だからやめて!」

「何よ、お姉ちゃんだって、夜中に彊兵君、彊兵君て言いながらしてるじゃない。隣の部屋なんだから丸聞こえなんだけど。」

「わーー!!止めてーー!!」

湯川姉はハンドルから手を離し、奈緒の口を塞ごうとする。

「ちゃんと運転してよ、変態!」


俺達は無事に家に着けるのか心配だが、こういうのも、悪くはないよな。

家に着くまで、まだあと一時間はかかる。湯川姉には悪いけど、もう少し後ろで楽しませてもらいます。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりモテモテですね。 記憶もかなり戻ってきてるみたいですね。 ここからは年齢制限的なことが多発ですかね? それはないか(笑)
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