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これからの思い出。

「さて、荷物も積み終わったし、二人共満足したみたいだし、帰りますよ!」

ルームミラーからチラッと覗いて何故かジト目で見てくる湯川さんは車を走らせる。


「そういえば今朝、不法侵入の覗き魔がいましたので、通報しておきました。」

マリアが窓を見ながら、若干デカ目の独り言(?)を言っている。

多分、湯川さん宛だろうが……(笑)


キキーーッ!!

車が急ブレーキで止まる。まだ林道で幸い走っている車がいなかったから良かったものの………。


「お姉ちゃん、なにしてんの!?」

奈緒ちゃんはマジで怒って、湯川さんの耳を引っ張り、抓る。

「イダダダダダダ!! ごめんなさいぃ!!」

そこに姉の尊厳等は見られない。

「早く走らせて!」

「はい!!」

車は再び動き出し、防砂林の横を走り抜けていく。

窓を開けると、俺の大好きな潮の香りがする。


「天ヶ瀬さん、さっきの話、冗談ですよね?」

運転しながら、ルームミラー越しにマリアをチラチラ見て話しかけてくる湯川さんは、非常に怯えていた。

「冗談ですよ。ただ、人のロッジに忍び込み、こっそり覗き見する変態さんには何も言われたくはないですが。」

マリアの嫌味は続く。

「先程、未成年者がどうの言ってましたが、不法侵入と覗き見しちゃう方にはどういう罪があるんでしょうか?元警察官さん。」

マリアの猛攻撃に湯川さんには反論の余地は無く

「もうじわげありまぜんーーー!!」

涙と鼻水で美人台無しになっていた。


「もしかして、スキあらば彊兵を奪おうなんて考えてないですよね?」

ルームミラー越しに湯川さんを見て語りかけるマリア。 


キキキキーーッッ!! 


「はぁ、はぁ、あっぶなっ!! ちょっとお姉ちゃん!!マジで気を付けてよ、ぶっ殺すわよ!!」

二度目のドリフト気味の急ブレーキに、流石に奈緒ちゃんがキレる。


ーーーーーー。  


「それだ!思い出した!昔の事!湯川姉妹と篠宮と俺で遊んでた頃の事!」

「本当ですか!? ほらー、お姉ちゃんの急ブレーキの効果よ、奈緒ちゃん!」

再び車を走らせながら、湯川さんは自慢げに運転する。

「うるさいな、運転に集中しなよ、ゴミムシが!」

「彊兵君にフラれたからって、地を出さないでーー!」

俺は知ってる………というか、思い出した!


「奈緒ちゃん、昔から口悪かったもんねー!!」

「あ、いや…………本当に忘れて下さい……今のは違うんですぅ!!」

俺の言葉に、心底ビビる奈緒ちゃん。

「奈緒ちゃん、もう猫かぶりは無理があるわ。貴女のメッキは剥がれたのよ。もう彊兵を狙うのはやめて。」

マリアは窓の外を眺めながら、奈緒ちゃんに釘をさす。


昨日、今日と楽しかったなぁ………。

車内ではギャアギャアとマリアと奈緒ちゃんが言い争っているが、そんな事が気にならないくらいに楽しめた。


それに、ほんの少しだけど

「良かったですね、昔の記憶が戻って!」

マリアが俺の心を読んだかの様に声を掛けてくる。

「そうだね、ほんの少しだけど……。思い出せて良かった。」

でも、俺はこれからの思い出を大事にしていきたい……。

これからの思い出を……。

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