天国から地獄。
お風呂に二人して浸かる。
湯川さんからしたら、俺が小さい時から、お姉さん的な立場で俺を見てきただろうから、俺の身体なんて興味ないだろうけど……。
湯川さんは出るとこ出て、引っ込むとこは引っ込んで…………美人さんで………。
ただ、思考が残念なのが、本当に玉にキズなんだよなぁ。
でも、隣に裸の湯川さんがいる………普段はスーツ姿しか見られない湯川さんが裸でぇぇ!! どうしたらいいんだ!!
平常心でいられる訳がない!!
…………ピトッ
湯船の中で俺と湯川さんの膝が当たる。
ーーーーーー!!??
「「ごめんなさい!!」」
俺達はお互いに仰け反る。その瞬間、態勢が向かい合う形になる。
「待って……………見えてるんですが!!」
俺は湯川さんの胸を指差し、片手で目を覆い隠す。
「見えてる………?きゃあっ……!!」
湯川さんは慌てて湯船に沈む。
「ごめんなさい………!わざとじゃないですから!!」
「わかってます…………。彊兵君、あの……先に上がっていてもらえますか……?」
「わかりました………。じゃあ、先に出ますね!!」
俺はそそくさと風呂場から出て、タオルで体を拭く。
色々とやばかったなぁ………こんなとこを天ヶ瀬さん達に見られなくて良かったよ。
俺は着替えを済ませ、タオルで髪の毛を拭きながらリビングに向かう。
「「おかえりなさい。お楽しみでしたね。」」
ハモった声が俺の前から聞こえる。
頭を拭いていたタオルをどかしてリビングを見ると、そこにはソファーに座った天ヶ瀬さんと奈緒ちゃんが俺を睨んでいた。
「ゾウさんが何とか言ってましたけど、ゾウさんなんて飼ってましたっけ?」
奈緒ちゃんが笑顔で問い掛けてくる。
「ごめんなさい、わざとじゃないんです!って、何がわざとじゃないのかしら?」
天ヶ瀬さんも笑顔の問い掛けだ。
その時だった。
「ーーーーーーーーーーーー!!」
湯川さんの何とも色っぽい声が風呂場から聞こえてくる。
なんというタイミングの悪さ……ってか、何してるんですか、湯川さんは!!
この声で完全に天ヶ瀬さんと奈緒ちゃんは、疑惑から確信に変わったようだ。
「お姉ちゃんが出てきたら裁判を行います!」
奈緒ちゃんはテーブルをバンッと叩き、怒りを顕にした。
『天国から地獄』とは、まさにこの事を言うのだろう。
そして、『自業自得』と言う言葉もこういう時に使うのだと改めて身にしみたのだった……。




