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海と釣り。

やっぱり俺には、泳ぐよりも合ってる物があったんだ。

俺は近くにあった餌屋さんに向かい、餌を購入すると、湯川さんの車からタックルボックスと釣り竿を出し、堤防へ向かう。


「先輩……?先輩……!?」

俺を見つけた天ヶ瀬さんは砂浜へ上がって追いかけてくる。

「釣り竿………。釣りですか?」

「そう、昔から好きでさ。良くやってたんだよ。」

「………?記憶戻ったんですか?」

「……………確かに。釣りの事、思い出してる………。」

以前までは何も思い出してなかったけど、今朝、無意識に車に積んでいたな。


「この調子で、どんどん思い出していけるといいですね!」

「そうだな……。ありがとう!」

天ヶ瀬さんの満面の笑みに何か救われた気がした俺だった。


「先輩、さすが釣りやってただけあって手際いいですね!」

俺は自分の分と天ヶ瀬さんの分の釣りのセッティングを済ませていく。


「さっき、そこの餌屋で買ってきたんだ!」

俺は二つあるパックを開けて、中の餌を見せる。ミミズの様な赤い物体が蠢いている。

アカイソメとアオイソメだ。

「キャーーーーーーーーーー!!」

耳を劈くような悲鳴を上げる天ヶ瀬さん。

周りにいた釣り人や、海水浴客が何事かとこちらを見てくる。


「な、な、ななな何ですか、その気持ち悪いムカデみたいなミミズみたいなのは!!」

確かに俺も一番初めに触った時は抵抗があったなぁ。

「これを針につけて釣りをするんだよ。餌は俺が付けるから………はい、どうぞ! 釣りはやった事ないの?」

俺は餌をつけた釣り竿を手渡す。

「いえ、釣り自体はやった事あるんですけど、練り餌ばかりで……。」

なる程、だからあんなに絶叫したという訳か。

「ありがとうございます………うぉぉぅ………やはり直接は無理なので、餌取られたら付けて下さいぃぃ……!」

天ヶ瀬さんはビクビクして仰け反りながら釣り糸を水中に垂らす。


ーーーーーー。

釣りは、この待って当たる時間も楽しいんだよなぁ……。

すぐ近くの山では鳶が鳴いている。辺りに響く蝉の声。波の音。


「おっ!!キタキター!!」

俺にアタリが来たのだ。リールをすばやく巻く。釣れたのは、砂浜の女王『シロギス』だった。

「やった、天ぷらにすると美味いやつだ!」

「おめでとうございます、先輩!!」

俺は天ヶ瀬さんとハイタッチをして喜びあった。なんか、凄い自然なハイタッチで、喜びあったのも、本気で………嬉しかった。




【その頃の湯川姉妹】

「失敗だったね、海。」

湯川姉は、奈緒に話し掛ける。

「べっつにー。まだ夏休みはあるし、彊兵先輩は絶対に渡さないから。」

浮き輪に肘を付き、完全に不貞腐れた奈緒は、横目でチラチラと彊兵達を見ていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 彊兵くん、そのまま思い出して。
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