退院とデート。
食事はどれもこれも、とても美味しかった。
レストランで食べたどの食事よりも、遥かに美味しく感じられた。
どの食事もとても美味しくて、とても懐かしく思える味。
「母さん、もしかしてこれ…………。」
俺はすべての料理に懐かしさと、特別な美味しさを感じていた。
「そう、どれもこれも、キョウちゃんの大好物な料理!」
なるほど、だから洋食に和食が混じってたんのか。
記憶喪失になっても、味覚による懐かしさや味わいは消えないんだな……。
「ありがとう、皆……!」
……ん? お……………思い出せそうだ……。
何か色々な事が思い出せそうなんだが、そもそも二回も記憶喪失になるとか、俺の脳みそは大丈夫なんだろうか……。
何か、記憶を思い出すよりも、そっちの方が気になってきたぞ……。
「どうしたの?何か思い出せそう?」
「い、いや、それよりも……二回も記憶喪失になって、俺の脳みそは大丈夫なのかなって思って……。」
俺の言葉に、瞬間的に全員が目を逸らす。
「おい……不安になるからやめてくれ!」
「だ、大丈夫よ!もし記憶喪失が治らなくても私達がいるから!」
「そうそう!それに記憶喪失なのに退院できるって事は、今回も記憶喪失が治るって確証があったからなんじゃない?」
「そうよね!ハハハハハッ!!」
退院祝いなのに、最後の最後で皆から苦笑いの励ましを頂いた。
すんげぇムカついた。
ーーー翌日。
「彊兵先輩!デート行きましょう!」
「先輩、デートに行きませんか?」
朝8時、ドアが蹴破られる様に開けられる。
俺はといえば、昨日の今日でまだ爆睡状態だったのだ。
「何だ!どうした!強盗か!?」
俺は寝ぼけ眼で二人を見つめる。二人共、可愛らしい外行きのオシャレな格好をしていた。
……………ん?どこかで見た事があるような……? 気のせいか?
「分かった、準備するからちょっと待ってて!で、どこに行くの?」
俺の問いに
「のんほいランド!」
「夏なら海でしょ!」
天ヶ瀬さんはのんほいランド、奈緒ちゃんは海の選択をする。
取り敢えずは夏って事なので海に海水浴に出かける事にした。
「「早く行きますよ!」」
「わかった、わかったから部屋から出てってくれないか? 下も替えたいんだ……。」
二人との両手に花(?)デートが始まった!




