天ヶ瀬の想い。
「実はね、皆には黙ってたんだけど、聞いてもらいたいことがあるの………。」
彊兵達が病室を出ていったあと、それまで黙っていた彊兵母は閉ざしていた口を開く。
「彊兵はね、私の実の子供じゃないのよ……。」
ーーーーーーーーーーーー!!??
愕然とする一同に彊兵母は続けた。
「あの子はね、私達が施設で預かった子なの。他の誰とも心を開かなくて、いつも一人ぼっちだった。皆が外で遊んでいる時 も、一人で積み木を組み立てて遊んでいたの。」
彊兵母は明日で退院となる荷物を纏めていく。
「あの子は家に来てからも、ずっと私達と話さずに、一人で部屋にこもっていたのよ。 だから人一倍、人の心に敏感なんだと思う。 でも、私はキョウちゃんが選んだ道なら、それを全力で応援する。
世界中の全員が敵になったとしても、私はキョウちゃんの味方でいる。」
彊兵母は荷物を纏めてバッグのチャックを閉めると病室の入り口の台に置く。
「マリアちゃんは、どうしたいの?」
彊兵母は、マリアの瞳をじっと見つめる。まるで、心の中を見透すかの様に。
「私は………………。」
「本当はキョウちゃんの事、大好きなんでしょ?」
パンッ!
マリアの両頬を軽く叩く彊兵母。
「お母様……………。」
「頑張んな!マリアちゃん!」
マリアは病室を飛び出していく。
「ハァ……ハァ………。」
病院内を見渡しても、彊兵の姿が見当たらない。
どこにいったのか。
売店、レストラン、病院の外………。
「いない…………。」
「そうだ………電話……!」
プルルル………プルルル…………。
『はい、田崎です。』
彼等の本当の意味での闘いが始まった。




