篠宮。
気が付くと俺はベッドの上だった。
「何で……こんなとこに……?」
鈍い痛みが頭を襲う。
「先輩!よかった、目が覚めたんですね!」
少女の言葉にゾロゾロと入ってくる見知らぬ人物達。
「よかったです!心配しましたよ!」
スーツ姿の美人さんが声を掛けてくる。
「キョウちゃん、良かったわー!心配したんよー!」
誰だ、このオバハンは!
「キョウ君、心配してたんだからねー!」
抱きついてくる金髪美少女。いい匂いする〜!
「先輩、無事で何よりです……心配しましたよ!」
またしても美少女!泣いている………。俺は………一体…………。
「あの、俺は誰ですか!?」
「先輩、流石に二回目は騙されませんよ?」
フフン!と腕を組む美少女。柑橘系の香りが鼻をくすぐる。
そもそもなんで、このオバハンを除いて、皆美人なんだ!?ハーレムか!
「えと、僕は何やってた人ですか?ホストか何かですか?」
俺の言葉に皆は大爆笑の渦だった。
「え、だって……美人さんばかりじゃないですか! ホストでもない限りこんな美人さん達とばかり知り合いになれないですよ?」
俺の言葉に、それまで大爆笑していたみんなが黙り込む……。
「待って下さい、二度目の記憶喪失はヤバくないですか?!」
茶髪で髪の毛を一つに結んで、大きなリボンを付けた少女が手を握ってくる。
「ごめんなさい、彊兵先輩!私があそこで走ったりしなければ!」
どうやら俺の名前は彊兵らしい事は分かった。 あと、これが二度目の記憶喪失らしい事も。
「私が先生を呼んできます!」
スーツ姿の美人お姉さんが、先生を呼びに病室から出ていく。
「アンタ、何も憶えてないの?買い物に行った事や、マリアちゃんの彼氏とか。」
何も覚えていないなぁ…………。口調からすると、この人が母親かな?
「わからない。マリアちゃんてこの子?」
俺が指さしたのは茶髪リボンの娘だった。
ーーーーーーえ。
固まる一同。
「な、何でそう思うの?」
両サイドを三つ編みにした濃いめの茶髪の女の子は柑橘系の香りを漂わせながら、不安そうに聞いてくる。
「うーん、一番側に座って様子見てくれてるし、タオル替えてくれてるし、手も握って励ましてくれてるから。そうなのかなって………。」
俺は率直な意見を言ったまでだが、質問した子はその場にへたり込む。
一方、看病してくれていた美少女は顔を赤らめている。
「呼んできました!」
「篠宮だ。久しぶりだな、彊兵。」
篠宮?誰だ、この男は?
「まぁ、記憶喪失なら覚えてなくても無理はないか。 検査をしたが、数値に異常は見られない。今回も一時的なものだろう。」
男性医師はぶっきらぼうにそう答えると病室を後にする。
「何アイツ!偉そうに!」
金髪少女は腕を組み不機嫌そうに吐き捨てた。
篠宮…………。
聞いたことがあるようなないような……。
取り敢えず、一時的な記憶喪失なら良かった。
このままだとどうすりゃいいのか分からないしな……。




