マリアと刈谷とイノンモール。
【その頃のマリアと刈谷。】
「気になって来てみたら……何であんな事になってんのよ……ほら!」
刈谷はどこから持ってきたのか、手にしていた双眼鏡を手渡してくる。
「何なのよ……。」
マリアは詩穂から双眼鏡を受け取ると、双眼鏡を覗き込む。
「ギギギギギギギ………………!!」
マリアの口から言葉とも歯ぎしりとも取れないおぞましい音が漏れる。
「どうする………。膝枕なんて、恋人のする事じゃない!」
「でも……ただ、気分が悪くなっただけかもしれないし……。」
刈谷の捲し立てる様な言葉にも、マリアはあくまでも冷静を装っている様に見える。
「にしても、湯川姉はどこに行ったのよ。」
刈谷は苛立ちをつのらせているようだ。
「もう少し近くに行くわよ。」
刈谷とマリアは、しゃがみながら移動を開始する。周りから見たら間違いなく不審者である。
「マリアは黄緑なのね。」
刈谷は振り向くと、暫くしてからそう語る。
「………………何の事?」
マリアには何の事か分かっていないようだ。
「因みに私は赤よ。周りの視線感じない?」
「視線…………!?」
マリアはしゃがみ込んでいて丸見え状態になっていた下着を隠す。
「何でもっと早く言わないのよ!」
「だって、興奮するじゃない。」
「あなたの様な変態と一緒にしないで!」
マリアは刈谷の襟首を掴み上げる。
「ぐるじぃぃぃ…………あ、おはなばたけが……………。」
「全く、あなたって人はいつもそんな感じなの?」
掴んだ襟首を離すマリア。
「毎日オ○○ーは欠かさないわ。」
「シーーーーー!!!」
「勿論、キョウちゃんの事を考えてね!」
「アンタねーー!!!」
「ちょっと待って、二人共いなくなってる!!」
二人(刈谷)が下品なやり取りをしている間に田崎と奈緒の姿はなくなっていた。
「どこに行ったのかしら………。」
マリアは、辺りを見渡すが二人の姿はない。
「そういえば、牛乳買いに行くって言ってたから、食品売り場に移動したのかも……。」
さっき田崎達が座っていたベンチは一階の隅。食品売り場からは離れている。
そこから移動したのなら、まだ追いつけると踏んだマリア達は、食品売り場に移動する事にした。
「詩穂、行くわよ!」
「わっ!ちょっと!」
マリアは詩穂の手を引いて食品売り場に早足で向かう。
ーーーーーー。
ーーー。
「見つけた!」
「おい、マリア。あいつらまた手を繋いでるぞ……グッ!」
詩穂は血が出そうになる程に、唇を噛み締める。
「近くまで行くよ……!」
傍から見たらやはり不審者な二人組だった。




