奈緒と殺気とイノンモール。
俺とマリア、刈谷の三人は釈明の為、自宅に向かう。
道すがら、刈谷がとんでもない事を口走る。
「キョウ君の事を狙ってるの、私だけじゃなくなったねー。」
「ーーーーーー!?」
マリアが凄まじい眼光で刈谷を睨んでいる。
「…………どういう事ですか、詩穂……。」
「やっぱりマリアは気が付いてなかったんだー。 キョウ君を狙ってるのは、私、奈緒ちゃん、湯川姉だよ。」
「「ーーーーーー!!??」」
俺もマリアも『開いた口が塞がらない』状態だった。
「し、詩穂……私は貴女は諦めたのだとばかり……。」
「いつそんな事言ったのよ。それに、私よりも湯川姉妹の心配したほうが良くない? ひとつ屋根の下よ?」
刈谷……余計な事ばかり言ってくれるな……。
そんな事を話している内に自宅に着いてしまった。
「入りにくいわね……。」
刈谷が腕を組んで真剣に悩み込む。 お前のせいだろうが!
「ただいまー。」
やはり俺から入る事になるよな。
「あれま。ちゃんと連れて帰ってきたのね!やるぅーー!」
母親は相変わらずだったが、リビングの隅から凄まじい殺気を感じる。
ギギギギギッとゼンマイ模型の様に顔を殺気のする方に向けると、奈緒ちゃんがいた。
だが、どうやらこの殺気は俺には向けられていないようだった。
「この度はご迷惑をお掛けしました。」
マリアと刈谷が頭を下げる。
「湯川さんから聞いたわよ。ちょっとアピールの仕方を間違えちゃったわね! また頑張ればいいじゃない!」
母親はマリアと刈谷に優しく声を掛けると、二人をソファに座らせた。
「奈緒ちゃんも、おいで!」
母親は奈緒ちゃんもリビングのソファに座るように促す。
「私は………ここでいいです……。」
「妹はさっきからずっとあんな感じなんです……。 まぁ、仕方ないですね……。」
湯川さんは何かを察したかのような口ぶりだった。
「キョウちゃん、ちゃんと選びなさいよー! 私はキョウちゃんの選んだ娘なら誰でもオッケーだから!」
そう言って、母親はキッチンに向かう。
「キョウちゃん、湯川さんと買い物して来てくれる〜? 牛乳切らしちゃってて!」
母親が冷蔵庫を覗きながら頼んでくる。
「あ、はい、わかりました!」
湯川さん、警察の仕事大丈夫なのかな?
「お姉ちゃん、私も行く!!」
奈緒ちゃんも何か買う物があるのか、ぴょんぴょん跳ねながらソファに来る。
さっきの凄まじい殺気がいつの間にか無くなっていた。
「じゃあ、行ってきます!」
俺と湯川さん姉妹は、湯川さんの車に乗り、イノンモールへと向かった。




