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遂に退院。

特に何も無いまま、無駄に時間は流れ、今日が遂に退院の日。


今までお世話になった先生に挨拶を済ませ、母親に挨拶をしに行く。

「今日で退院。先に家に帰ってるよ。」

「分かった!私はあと二週間くらいだってさ!」

なんで嬉しそうなの?

「この度は、ご家族に多大なご迷惑を……。」

言いかける湯川さんの言葉を、手で制する母親。

「その話は昨日、終わってます。だから気にしなくてもいいよ!」

母親のその言葉に湯川さんは

「ありがとうございます!」

涙を流しながら、笑顔で答えた。


「じゃあ行くよ!」

「退院おめでとう!」

俺と湯川さんはナースセンターへ向かう。ここらへんでは一番デカイ病院。

相変わらず患者さんの数が多いなぁ……。

担当医師の方、お世話になったナースの方々に挨拶を済ませる。


その後、俺達は退院の手続きを終わらせた。


「これで晴れて自由の身だ!シャバの空気は美味いぜ!」

外に出ると、俺はバッグを片手に、大きく伸びをする。

「その言葉、漫画の元受刑者とかが言う言葉ですよね(笑)」

湯川さんは笑顔でクスクスと笑いながら語りかけてくる。

ここで、病室の入り口を警護をしてくれていた警察官二人とはお別れだ。 引き続き、母親の警護をしてくれるらしい。

「では、母親の事、お願いします!」

警察官二人は敬礼し、病院の中へと戻っていった。


「さて湯川さん、行きましょう。」

俺は湯川さんの手を引いて、祖父の自宅へ向かう。

着の身着のままってのはこの事を言うんだろうなぁ……。

「あ、ああの……彊兵君……。」

これから祖父の自宅に着いたら、まずは掃除してホコリを取って、先ずは風呂かな。

「彊兵君、彊兵君てば。」

湯川さんもお風呂まともに入れてないからまず、湯川さんから入る事になるな。


「き、彊兵君!!」

「うわぁ、なんですか、いきなり!」

「いきなりじゃないです、さっきから呼んでました! そ、その………手を……。」

手?なんの……事を………?

Oh………。

「あ、いや、これはその、迷わないようにって……!」

お互い俯いてしまう。無意識にとはいえ、年上の女性の手を強引に引いて……。

手が柔らかかったなぁ……………。


「退院、おめでとうございます、先輩!」

「いででででで!!??」

急に誰かに後ろから話し掛けられた上に、耳を思い切りつねられる。

「………マリア!酷いよ、いきなり!」

耳をつねってきた張本人はマリアだった。


「先輩。どうして、湯川さんと手を嬉しそうに繋いでたんですか!?」

マリアがズズィっと不機嫌な顔を寄せて来る。

「わ、私達は、そういう関係では……!」

「ポンコツ警察官は黙っていて下さい。」

湯川さんの弁解も、マリアの前では無意味だった。

「ポンコツ……私はポンコツ………。」

完全にヘコんでしまったようだ。


「という冗談はここまでにして、どこに行くんですか?」

冗談だったのか……。にしては、耳へのダメージが凄い……。

「これから、湯川さんと祖父の家に行くんだよ。」

「あぁ、一時的に引っ越すという、あの件ですか。 私も行っていいですか?」

「いいけど………学校は?」

そういう俺に首を傾げるマリア。

「先輩。」

「もう、夏休みですよ……。」


ーーーーーーーーーーーーー!?


「あーーーーーーー!! 入院してたから、全然気付かなかったーー!!」

俺は夏休みを一、2日無駄に病院で寝て過ごしていたのか!

くっそ、石原共のせいで貴重な時間を無駄にした!


俺の青春を、返せー!クソ共ーー!!

俺は青空に一人虚しく、叫んでいたのだった。

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