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湯川巡査の失態。

湯川さんが連絡を取る為に病室を出て行ったあと。

 

ガラガラ………。

誰かが入ってくる。その姿は次第に明らかになる。


「天ヶ瀬………さん………ですか?」

「………………先輩。」

天ヶ瀬は三日間いなかった割には、身なりが整っていた。

「どこに行っていたんですか?皆さん、心配してましたよ!?」

「………先輩。どうしたんですか、その話し方。」

「実は以前の事、全く覚えてなくて……。湯川さんに全てを教えてもらってたんだ。」

「そうだったんですか……………。」


「天ヶ瀬さんはどうしてたんですか?」

俺の問いかけにしばらくの間、悩んでいた天ヶ瀬さんはやがて、口を開く。


「石原の家に居ました。」

ザワッと全身、鳥肌が立ったのが分かった。 石原の家に………居た!?


ガラガラ………。


「天ヶ瀬さん、今、何とおっしゃいましたか。」

病室に入ってきたのは、連絡を終えた湯川さんだった。


「正確には石原と同じアパートの一室にいました。」

天ヶ瀬さんーーーーーーーーー!!

「紛らわしい言い方は避けてください。天ヶ瀬さん………。」

「そうだよ!今の言葉でどれだけ………!痛たたっ!!」

怪我してるの忘れて、無理矢理起き上がろうとした為、全身に痛みが走る。


「先輩!…………ごめんなさい、私のせいで………。」

「それで天ヶ瀬さん、石原先生のアパートの一室に泊まっていたというのはどういう事ですか?」

湯川さんは天ヶ瀬さんをジトッと睨んでいる。


「湯川巡査、何も知らないんですね。」

今度は天ヶ瀬が睨み返す。

「湯川巡査、お宅にお邪魔してたんですよ。この三日間程、湯川巡査は先輩に付きっきりでしたよね。ですから、私用の携帯もロクに見ていないでしょう。」


「……………あ。」

湯川巡査が携帯を開く。どうやらマナーモードになっており、自宅からの着信に気付かなかったようだ。


「そして、私は周りに悟られないように自宅にいる親に連絡をして、友達の家に泊まる。その間、誰から電話が来ても帰っていない事にして、と。」

「しかし、どうして私の自宅に!?」

湯川巡査の言葉にため息を漏らす天ヶ瀬さん。

「いませんか?妹さんに『湯川 奈緒』ちゃんが。同じ足伊達高校に通う生徒が。」

「……………………まさか………。」

湯川巡査が冷や汗を流している。


「そうです。私と奈緒さんは同じクラス。そして……………。」

天ヶ瀬は続けた。

「石原の自宅……いや、もとい、別宅が湯川さんの自宅の真隣にあったんですよ!」


最早、灯台下暗しレベルではない……。


「以前、奈緒さんから聞いていた事があったのを思い出したんです。『私の左の家は不良の溜まり場になってる』って。」


「そして三日間張り付いていましたが、その家に出入りしていたのは、石原と田原、取り巻きのみ! 石原は既婚者で子供もいる筈なのに、奥さんもお子さんも出てこなかった!」

驚愕も驚愕。これを他の捜査員が知ったらどう思うだろうか。


「うっ………………………!?」

頭が痛い………激痛が走る。頭が割れそうに痛い………。ガンガンする………………!!


「先輩、大丈夫ですか!?」

「彊兵さん、大丈夫!?」

彊兵さん…………彊兵さん、思い出した………。


何もかも、思い出したぞ…………都合のいい頭痛よ、ありがとう!


「……全部、思い出しましたよ!漫画の如く、頭の割れそうな頭痛でね!」

俺は今までのことを全て事細かに思い出したのだ。

「マリア、湯川さんの自宅はアパートの六室ある内の一階の中央だな。」

「そ、そうだけど………まさか、先輩!!」

凄まじい形相で睨んでくる天ヶ瀬。


「違う、違う!湯川さんは俺を彊兵さんと呼んでいた。僕とは直接、そんなに面識が無かったけど、奈緒ちゃんとは昔からよく遊んでたんだ。 で、左の家は不良の溜まり場になってるから気を付けてって、湯川さんのお母さんが言ってたのを思い出したんだよ。」


「………………奈緒ちゃん、奈緒ちゃんねぇ。」

マリアは何故か不機嫌になっている。


「思い出しましたよ!お母さんが以前からその話をしていたのを。隣の方の名前が確かに『石原』さんだった……のも………。」

言いながら湯川さんは冷や汗ダラダラだった。


「早く皆に連絡をした方が良くないっスか?」

俺達の湯川さんに対する信頼度はガタ落ちだった………。

この人、マジもんの天然さんや…………。


「奈緒ちゃん、奈緒ちゃん、奈緒ちゃん、奈緒ちゃん………奈緒ちゃんねぇ……。」

マリアはまだ何故か一人不機嫌なままブツブツ呟いていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] マリアちゃん怒り溜まってきてますね。
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