田崎、死す!?
俺達は今まで集めた情報を、東栄を通じて警察に開示した。
直接警察に行かなかったことにも理由はある。
まず、俺達がそのまま警察に持ち込んで行ったところで、真面目に対応して、捜査してくれる可能性は限りなく低い。
そこで、警視総監を父に持ち、警視長を母に持つ、トンデモ家族の東栄にお願いした方のが、真面目に対応してくれると考えた訳だ。
「大田、万が一奴らが来た場合、何かあるといけない。隠れながらお母様の警護に当たれ。」
「分かりました。」
大田警部補は部屋を出て階段を降りてゆく。
しばらくして、一階から声がする。
「いっやん、こんなイケメン!発情期迎えたらどうすんのよぉ!もぅ!」
母親ーーーーーーーーーーーーーーー!!
「お母様、あまりこういうの気にしない方なんですね……。」
マリアは複雑な表情を浮かべ、こちらを見てくる。
「昔からあんな感じだよ。」
マリアが引いてるじゃねぇか!あのBBA!
「田崎さん、お部屋を拝見させてもらいたいのですが……。」
古橋警部がバツが悪そうにそう言葉にした瞬間だった。
「シッ!!皆、静かに!!」
俺は一階の僅かな会話に気が付いた。
『多分、この声は取り巻き達だ。』
『取り巻き達は昔からこの家に出入りしていたのですか?』
湯川巡査の言葉に俺は首を振る。
『最近ですよ。部屋に来たことなんかは一度もないです。』
『現金を仕舞っていた場所を後で教えてもらえますか?誰も他には触れたことない場所ですよね。』
湯川巡査の言葉通り、誰も触れない場所に隠していた。
『そうですね、普通では触れない場所ですね。』
『では、鑑識を呼び、指紋の検出をさせてもらいます。』
湯川巡査、しっかりと10万円の件、憶えていたのか。
『静かに………上がってくる。』
トントンと数名の足音が階段を上がってくる。
「この部屋です、田原さん。」
田原!?何で奴がここに………!?
「奴が出掛けてるうちにやるぞ。」
間違いなく田原の声だ!
『田原とは昨日、遊園地で出会った田原で間違いないですか?』
古橋警部の言葉に頷く。
しばらくの後、ガチャガチャと音が聞こえてくる。
「これでいい。石原の所に行くぞ。」
そう言い残し、田原達は階段を降りてゆく。
『水島、大田を連れて奴等を追え!石原の自宅と別宅を押さえろ。』
『はい。行ってきます!』
床に耳を当て、奴等が出ていったことを確認すると、静かに水島さんは部屋を出ていった。
古橋警部はカーテンをゆっくりちょっとだけ捲り、田原達の去っていった方向と人数を確認する。
『彊兵さんの部屋以外を確認してきます。』
湯川巡査はそう言うと部屋を去る。
あれ、俺は湯川さんに名前教えたっけ?
ーーーしばらくして。
「お母様以外は誰も居ませんでしたね。」
湯川巡査が戻ってくる。
「俺の部屋には何が仕掛けられたんだ?」
「恐らく、今までのパターンだと、監視カメラか盗聴器よね。」
刈谷の言うように、今までのパターンならそうだが、田原も一緒だった。
「ちょっとだけ見てくる。部屋の配置変わってたら直ぐに分かるし。」
「でしたら、私も行きます!」
「湯川さんは警察の方でしょ?カメラに映ったりしたら、石原は証拠隠滅を図りますよ、多分。」
ーーー結果、俺が部屋を見に行くことになった。
ゴープロ付けて……………。
「んじゃ、今から部屋入りますねー。」
ガチャ……。
見た感じ、変わっている所は無さそうだが……。
ん?置き手紙、と箱?いやにデカイな。
「今まで、すまなかった。せめてもの気持ちだ。受け取ってくれ。」
ふむ。謝罪の品か。
俺は箱に手を伸ばす。
「田崎さん、駄目だーーー!」
古橋警部の声が空き部屋の方から聞こえてきたが、既に遅かった。
俺は、箱を開けてしまっていた。目に飛び込んできたのは、複数のコードが折り重なった、よくドラマで見る時限爆弾のような物だった。
コードは蓋と繋がっていた。
「やっちまった…………………。」
ドガアァァァァァァァン!!!
目の前が白く光った時には俺の意識は飛んでいた。




