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田原はエサになりました。

「で?貴方は何を命令されてこんな平和なテーマパークに、どのツラ下げて来たんですか?」

マリアは言葉の端々にトゲを含んで田原に問い詰める。


「石原に例のSDメモリーカードとカメラやモニターの回収を命令されて来たんだよ。 ただ、アイツ等が来てるとは知らなかったが……。」

「アイツ等?」

「あぁ、元俺の手下達だよ。今は完全に石原の指示にしか従わなくなっちまった。だから前、校門で挑発された時も、石原に目ぇ付けられたくねぇからシカトしたんだ。」

田原の言っているのは、東栄が前に話していた時の事だろう。


「手下とは別行動しているという事ですか?」

「そうなるな。アイツ等はアイツ等で、石原の指示を別に受けているようだ。」

「……………なるほど。」

「ねぇ、マリア。そうなると厄介じゃない?」

刈谷の言葉にマリアは首を傾げる。

「何故ですか?」

「だって、ここには監視カメラ、無いよ?」

その言葉に俺とマリアは、戦々恐々とする。

「それが狙いだったのか……!」

「けれど、先輩。他の証拠品はこちらにあります。ある程度、向こうの予想も狂っているはずです。」

マリアの言うとおりだな。取り敢えず、奪おうとした物はここにある。

このSDメモリーカードの中身こそ、一番重要な証拠品になるはずだ。


「平和な脳みそしてんなぁ、お前ら。石原が何で今まで捕まらずにここまで来れたと思ってんだ?」

田原は石原についてまだ、何かを知っているようだ。

「田原先輩。」

「んだよ、天ヶ瀬ぇ!」 


ーーーボグゥッ!!

強烈なボディーブローが炸裂する。

うずくまる田原の髪を掴み上げると、顔面に膝蹴りを決め込む天ヶ瀬。

「ハガッ……………!!」

「さっき、聞こえなかったのかしら?どのツラ下げて来たんですかって。こんなツラだったかしら。」

悪党には本当に容赦ないな、マリアは……。

「話す、話す!石原は足伊達の校長と教頭の弱みも握ってる。口裏を合わせてな。裏では教育委員会やPTAのおっちゃんやおばちゃん達も巻き込んでるって話だ。」

「いくらなんでもそんな話…………!」

「信じられねぇだろうが、じゃあ聞く。今までの被害者が名乗り出た奴もいたのに、全てなかった事になったのは何でだと思う?」

「………………………。」

確かに、以前に風の便りに聞いた事があるな。

石原に犯されたやつがいて、校長にも、教育委員会にも親が掛け合ったが相手にされなかったと。警察も証拠が全くなく、動きようが無かったとか。


「だが、あまりにも出来過ぎた話だわ。教育委員会やPTAまでなんて……。」

「まぁ、天ヶ瀬の言う通り、教育委員会やPTAまで巻き込んでるってのは尾びれ背びれが付いた可能性もあるだろうけど、校長と教頭の話はマジだぜ。 それにアイツはまだ何か隠してる。俺達も知らない何か。」

確かに田原の言う通りだ。でなければ、今までの強制性交がなかった事にされるのはおかしい。

強制性交は犯罪で罪も重い。そんな奴がいつまでも学校の、しかも生徒指導をする立場にいて言い訳がない!!


「石原について、何でも良いから教えろよ、クズ野郎!」

気が付けば俺は田原を締め上げていた。

こんな奴等のせいで人生狂わされた子達が何人も居るんだ!許せない!


「わがっ……………だ……………おばなばだげが……………………。」

「先輩、それ以上は………………。」

マリアが止めに入る。田原は泡を吹きかけていた。


「目には目を、歯には歯を。ハンムラビ法典、同害復讐法だ。」

俺は田原を投げ捨てる。

「コイツは何も反省していない。駒にも出来ない。」

「でも、このままでは……。」

「駒にも出来ないなら………エサにさせてもらう。マリア、刈谷、協力してくれ。」

「わかりました、先輩!」

「私も力になるよ、キョウ君!」

あとは、東栄の力がいる。

「取り敢えず、明日、俺の家で。」

俺には秘策があった。思い出したのだ、とっておきのカードが残されている事を!


「先輩、コイツはどうしますか?」

泡を吹いた田原が寝転がっている。

返事がない。ただの屍のようだ。


「一応連れて帰る。コイツは明後日、エサになってもらう。今日は必要ない。」

俺は再び田原を背負って、のんほいランドを後にする。


「マリア、ごめんな。」

「え、何がですか?」

「ほら、今日は折角のデートだったのに、台無しにしちゃって……。」

俺がデートと口にした途端、顔を真っ赤に染めるマリア。 こうしてると普通の女の子なんだけどなぁ。


「うぇえ!?今日はお二人、デートだったんですか!?」

心底仰天する刈谷。コイツの目には俺達はどう映ってたんだ……逆に知りたいわ。


♪♪〜〜

閉園の音楽が流れる。

今日は散々だったな。まぁ、また来るか……。


俺は田原を近くのベンチに一旦降ろし、スマホを手に取る。

「俺だ。明日、時間あるか?話したいことがある。」

「キョウ君は誰と話してるの?」

「私にも分かりません。」

後ろから天ヶ瀬たちの声が聞こえるが気にしない。


「そうだ、例の件だ。ニ、三人連れて来れるか?………分かった。明日、10時に俺の家で。じゃ。」

プツッ。

「誰ですか。女ですか?」

天ヶ瀬が凄まじい形相で睨んでくる。

「何でそうなる!明日のお楽しみだ。」

俺達は、その後、何もなく帰路についた。


念の為、俺は監視カメラを戸棚の奥から引っ張り出す。 汚れといい、型といい、間違いない、これだ。

部屋に誰か入った痕跡があるが、盗られた物は……現金10万か。

これは明日、奴等に言うか。 


俺は風呂に入り、晩飯を食べ、床についた。念の為、カードの入ったバッグはベッドのシーツの下の空間に入れて。

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