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田崎の隠された力。

【同刻、マリア達】


私達が植物園を出ると、そこに立っていたのは先輩と田原だった。

「 なんであいつがここに……!」

詩穂も驚いているという事はやはり、 彼女は自分の意志でここまで来たのだろう。


「 早く先輩を助けないと……!」

私たちの先輩のもとヘすぐに駆けつけた。


先輩!田原、お前!」

「刈谷、テメェが渡したブツ、回収しに来たぜ。よくも裏切ってくれたなぁ?」

「マリア、刈谷。コイツは俺にやらせろ。」

先輩何を言ってるんですか………!?


「俺が許せないか?友情をふみにじられちゃったよー!ってか? ギャハハハ!!」 

こいつ、ワザと先輩を煽って……!

「田崎、お前の本気を見せろよ。安心しろ、俺がお前を叩きのめすまで、バッグは取りゃしねぇ。それだけは誓うぜ。」

田原の言葉に先輩はバッグを植物園の出入り口付近に置いた。

私は取り巻きがまだ残っているといけないのですぐに自分が掴む。


先輩は本当にやる気だ…………。


「そう来なくっちゃな。本気でやろうぜ!」

「やる前に聞きたい。何故、石原側についた。」

「別にアイツの下に付いたつもりなんかねぇよ。 タダで女を味わえるんだ、こんないい事ねぇだろ!? それ以外に理由なんかねぇ!」

舌なめずりをする田原。

女性を性的欲求を満たす「道具」としか見ていない。下等生物!

「「最っ低…!!」」

こんなに気持ち悪い奴、 一瞬でも仲間だと思った私が恥ずかしかった。



「じゃあ、田原。俺はお前をもう二度と友人と思うことは無いだろう。」

先輩のこの言葉に悪寒が走る。

凄まじい殺気と肩に伸し掛かる重圧感。

覇気……先輩の指の先まで伝わる気迫。


「マリア、私だけ?」

詩穂も感じているんだ、この重圧感を。

体中をガクガクさせて震え上がっていた。


「いえ、私もです。」

私もたっているのがやっとだった。


「んじゃ、行くぜ!」

田原が右手を振り下ろす。 大振りのケンカパンチだ。

先輩は軽々とスルーした。あんなのが当たるわけない。

「バカめ!」

田原は直ぐ様態勢を立て直し、大きくジャンプをすると、先輩の側頭部を目掛け、膝蹴りを仕掛けてくる。

「…………。」

先輩は左腕で受け止めると、グルッと回転し、田原の左脚を背に向けると、右手ですかさず左脚を掴み引き倒す。


「…………うごっ!?」

体制を崩し、背中を打ち倒れる田原。

「立てよ、田原。まだ始まってもねぇぞ。」

先輩の殺気はどんどん増していっているようだ。


「…………くそっ!!」

田原が立ち上がったその瞬間だった。

ドドドドドドドドッッ!!

先輩が田原の腹に最早何発か分からない程、パンチを打ち込む。


「………ごほ、がほっ!!」

堪らず膝をついて、倒れ込む田原。

すかさず、先輩は田原のついた膝に右足を乗せると、左膝で田原の右こめかみを強打する。


ーーーあれは、プロレス技のシャイニングウィザード!?

まさか先輩も使えたなんて………。


モロに決まった田原はそのまま倒れ込む。

「ま、だだぜ……?」

ヨロヨロと立ち上がった田原の目の前には既に先輩はいない。

そう、先輩は既に田原の裏側にいた。

ズドッ……。

先輩の放ったレバーブローは腹の右側を裏から思い切り直撃していた。

ーーーーーー。

ドザッ………。


田原は白目を剥いてそのまま前に倒れ込んだ。先輩の圧勝だった。


目の前にいる先輩は、いつもの先輩とはまるで別人だった。

詩穂も何か全く違う人物を見ているかのような眼差しだった。


その後、誰かが警察を呼んだのだろう。

サイレン音が遠くから鳴り響いて来た為、先輩は田原を背負い、急いでこの場を後にした。

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