田崎、再び。
その後、俺達は植物園に来ていた。
だが、ここで二人に伝えなければならない事がある!
「俺、実は……花粉症なんだ……。」
前で手を繋いでいた天ヶ瀬と刈谷の動きがピタリと止まる。
「「マジですか……。」」
見事なまでのハモりだった。
「入れないじゃないですか、先輩……。」
天ヶ瀬がジト目で見てくる。 あの目はもっと早く言えよという目だ。
許せ、あまりにもはしゃいでたから、言いにくかったんだ。
「と、取り敢えず、二人で行ってきなよ。俺は出口で待ってるから!」
「わかりました……。行きましょうか、刈谷さん!」
「うん!」
植物園に入っていく二人。 何とか仲直りしてもらえたみたいで良かった。
俺は植物園の出口を目指して歩き出す。 植物園自体はそれ程大きい訳ではなく、ビニールハウス二つ分位の大きさで園内の中央辺りに設置されている。
「花粉症持ちの人間には辛いんだよなぁ……。」
俺は出口のベンチに座って待っていた。
「よぉ、田崎ぃ。」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには田原が立っていた。
「ーーーーーー!?」
「何で俺がこんなとこにいるのかって顔をしてるな。」
コイツ………俺が一人になるのを狙ってたな……!
「さ、もう分かってんだろ、バッグの中の物を渡せ!」
「お前、今までの事は全部……。」
俺の言葉にガハハハ!と笑ってくる田原。
「あんなのを本気にしてたなんてな、平和な野郎だぜ!」
……やはりコイツが黒幕だったのか……。
やるしかないか………。
「お、やる気か?言っておくが、以前の喧嘩は芝居だからな。 俺に勝てるなんて思わないほうがいいぜ。」
田原が構える。確かに以前とは気迫が全然違う……。
「てか、子供たちが楽しみにして来るテーマパークに、休日に学ラン着て喧嘩しに来るお前は暇なの?」
「煽るじゃねぇか、田崎!……いくぜ!」
右ストレート、確かに以前より速い!
シュッ!
ほぼ同時に放たれる左フックが顎先をかすりそうになる。
「あっぶなっ………!!」
確かに以前の田原じゃない。あの時は演技だったのか……。
役者になれよ、もう。
続いて右のハイキックを左腕で受け止める。
…………重い!
右脚が下がるとほぼ同時に、今度は左のローキック!
コレは右足を上げてかわす。
「おい、田崎!何で反撃してこない!?」
「俺はお前を友人だと思っていた。」
本気でそう思っていたのに……。
「ぬかせ!」
田原は体を右に回す。 ローリングソバットか!?
「…………ぐっ!!」
咄嗟に防御したが、少し遅れた。みぞおちに鈍い痛みを感じる。
その時だった。
「先輩!田原、お前!」
マリアと刈谷の二人が植物園から出てくる。
「刈谷、テメェが渡したブツ、回収しに来たぜ。よくも裏切ってくれたなぁ?」
「マリア、刈谷。コイツは俺にやらせろ。」
「俺が許せないか?友情をふみにじられちゃったよー!ってか? ギャハハハ!!」
下品に笑う田原。
「田崎、お前の本気を見せろよ。安心しろ、俺がお前を叩きのめすまで、バッグは取りゃしねぇ。それだけは誓うぜ。」
田原の言葉に、俺は植物園の出口の扉にバッグを置くが、天ヶ瀬がすぐに回収する。
そっちに被害出ないように置いたのに……。
「そう来なくっちゃな。本気でやろうぜ!」
「やる前に聞きたい。何故、石原側についた。」
「別にアイツの下に付いたつもりなんかねぇよ。 タダで女を味わえるんだ、こんないい事ねぇだろ!? それ以外に理由なんかねぇ!」
舌なめずりをする田原。ここまでゲスな奴と俺は一緒に行動していたのか。
「「最っ低…!!」」
天ヶ瀬と刈谷のハモりが聞こえてくる。 仲良くなれたみたいで俺は嬉しいよ。
「じゃあ、田原。お前をもう二度と友人と思うことは無いだろう。」
俺は、女の子を性的対象としか見ていないコイツを、本気で叩き潰す事にした。




