後輩彼女現る。1
「ぁあ!?何だお前は!邪魔すんじゃねぇよ!」
田原の怒号にも一切ひるまない彼女。
「邪魔すんなら、女だろうが容赦しねぇ!」
田原が拳を振り上げる。
ー刹那ー
俺の目に飛び込んできたのは白目を剥いて倒れ込む田原だった。
ーー何があった?
あまりにも一瞬の出来事で、全く理解できなかったが、田原の右頬が赤く腫れあがっていた。
まさか…ハイキック?いや、パンチか?
どちらにせよ、この子の放った一撃には変わりないようだ。
「まだ、やりますか?」
後輩の女の子が静かに口を開く。
その口調には鋭く、そして重みがあった。
ヨロヨロと立ち上がる田原。
余程ショックだったのだろう、仲間に担がれながら何も言わずその場を去っていった。
こういう時は定番だと「覚えとけよ!」とか、捨て台詞を残していきそうなものなんだが…。
ひと呼吸おき
「大丈夫でしたか、先輩?お怪我はありませんでしたか?」
後輩の彼女が声をかけてくる。
「あぁ、大丈夫。」
情けない……。
女の子に、しかも後輩に助けられるなんて。
「あ、あの……」
彼女が声をかけてくる。
「は、はい……?」
「お名前教えてもらえませんか!?」
……………おや?
聞き間違いかな、これは。
待て、落ち着け、きっとこれはただ単に社交辞令的な名前教えて下さいっていうアレだ、うん。
「あ、あぁ、俺の名前ね。えと、田崎彊兵。」
平静を装ってみたけど、声は裏返るし、発音はおかしいし……最悪。
「面白いですね、先輩!あ、私も。私の名前は天ヶ瀬マリアと申します。宜しくお願いします、先輩!」
天ヶ瀬…マリア?
聞いたことがある。確か、テストは毎回学年一位の天才。
学園一の美少女とも称されていたはず。
一時期、風紀委員も務めていたはず。
……って、ストーカーかよ、俺。
「先輩?」
覗き込むように天ヶ瀬が声をかけてくる。
「あ、あぁ、悪い。何でもない。とにかく、さっきはありがとう!可愛かった。」
………ん?
わしゃ、今とんでもない事を口走らなかったか?
可愛かった?
違うだろ!そこは「助かった!」だろ!
何が言っちゃってんの、俺は!
慌てて、彼女の顔を見る。
「………。」
俯いてらっしゃる!!
引かれた?ドン引かれてらっしゃる!
「あ、あの…さっきのは、その…。」
しどろもどろになりながら弁解しようとするが、何を言えばいいか、分からない。
「先輩。」
重い空気が俺を包み込む。
「ひゃ、ひゃい!」
情けない声の俺。完全にビビってしまった。
「私と…付き合ってもらえませんか?」
…………え?
間隔が空いてますが投稿続けていきます。
宜しくお願いします。




