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天ヶ瀬と甘酒と。

「アンタねぇ…………。いくら初の彼女が出来たからって、早速その日に致そうなんて、誠にでもなったつもりかよ!この色ブタクソガキが!そこはせめてベッドだろ!」


俺は母親に天ヶ瀬といる所を見つかり、罵声を浴びせられていた。

 

「あ、あの、お母様、私が悪いんです。クローゼットの中を見たいなんて言ったから。」

天ヶ瀬は嘘をついてまで俺を庇ってくれた。

「駄目よ、マリアちゃん!男なんて甘やかすと直ぐに図に乗るんだから!」

母親はマリアを気に入ってくれてるらしい。


そういえば、刈谷は…………。


「母さん、そういえば刈谷は?」

「刈谷ちゃんならすぐに帰ったわよ。用事があるとかで。大丈夫かしら、雨もまだ強いのに……。」


じゃあ、なんの為に刈谷は俺の部屋に来たんだ?

俺と天ヶ瀬は顔を見合わせる。


「なぁ、母さん。刈谷は何か言ってたか?」

「え?特に何も言ってなかったけど? アンタまさか、二股かけようとしてんじゃないでしょうね!」

いつもながらに最っ低な考えしか出来ない母親だな。


「マリアちゃん、雨が止むまでいるといいわ。親御さんには私から連絡しておくから。番号いいかしら?」

「あ、はい!」

母親と天ヶ瀬は部屋を出ていく。


「じゃあ一体、刈谷は何をしに…………。」

俺は部屋を探索する事にした。 刈谷の事だから、石原の指示の元動いている可能性が非常に高い。

俺に会う、若しくは家族に会うためなら、何かしらの言伝を残すはず。

それに、雨宿りならば、さっきよりも雨の強い今、帰るはずがない。

と言う事は、この部屋に用があったと踏んで間違いはないだろう。


ならば………カメラか盗聴器を仕掛けている可能性が高い。

普通に犯罪じゃね?

あくまで今は可能性の話をしているだけなんだ…………が……………。


「あった………。」


俺は棚の上に仕掛けられたカメラを見つけたが、目を合わせずに見つかってないフリをした。

カメラは棚の上からベッドに向かって取り付けられていた。 

やめて、変態!!………じゃなくて!


目的は何なのか分からないが、カメラを取り付けたという事は、刈谷は俺を監視対象としているということだ。

他にもカメラや盗聴器が仕掛けられているかもしれない。

あのカメラの死角から探していくか。

ーーーーーー。

ーーー。

ー。


「無いか……。」

俺の部屋は入ってすぐ右側に棚があり、更に右側にベッドがある。

その向きにカメラが仕掛けられていたという事は左側は全て調べ放題だったのだ。(ちなみにクローゼット内も調査済。)


「なにやってるんですか、先輩?」

電話を終えた天ヶ瀬が戻ってくる。

「あ、あぁ。どうだった?」

「雨が止むまでお世話になります!」

天ヶ瀬が頭を下げてくる。  

「気にせず、ゆっくりしてくといい。それより……。」

俺は天ヶ瀬の耳元に手をやった。

『あそこを見てみろ、カメラが仕掛けられている。』

俺は棚の上を指差し呟いた。

『んんっ!せ、先輩、耳元はぁ…………!』

天ヶ瀬、聞いてくれーーーー!!

天ヶ瀬は何故か腰砕け状態になっている。


『カメラ………先輩が仕掛けたんですか?……エッチですね………。いいですよー?』

何言ってんの、天ヶ瀬さーーーん!!

いいですよ?え、いいの?

……じゃねぇわ、アホ!

俺は自分の頬を思い切りぶん殴る。

「いふぁい……。」

ん?天ヶ瀬から何やら甘い匂いが………。


「あらー。やっぱりー。」

後ろから母親の声がしてくる。

「さっき寒そうにしてたから、生姜入りの甘酒あげたのよ。甘酒弱かったみたいね………。」

段々とぐでんぐでんになっていく天ヶ瀬を見ながら母親は更に呟く。

「あとは、任せた!アデュー!」 

そう言いながら舌を出し、ムカつく顔をしながら去っていった。


「マジかよ………。」

俺は酔っぱらった天ヶ瀬を背負い、ベッドに寝かせた。

「……あ。カメラ……。」


棚の上に仕掛けられたカメラを外すか迷ったが、天ヶ瀬がベッドで寝ているのを第三者が見るのはとてつもなく不快だった為、カメラは手袋をしてから引きちぎるように外した。


俺はカメラを机の戸棚の奥に隠すと、天ヶ瀬に布団を掛ける。


カメラを外すとき、手袋をしたのは仕掛けた人物の指紋を取ってもらうためだ。

他人の家にカメラを仕掛けるなんて犯罪だからな。


「取り敢えずはこれで一安心か。」


俺は机の椅子に座り、机に突っ伏して一休みする事にした。


「……………せぇんぱぁい♡」

後ろから耳元に声を掛けられて振り向くと、ダボダボパーカーから胸が見えそうなくらいに着崩れした天ヶ瀬がフラフラして立っていた。

「なんれ、ひろりで行っちゃうんれすかぁ?」

天ヶ瀬にガッと掴まれ、ベッドに押し倒される俺。


ーー俺の貞操の危機はすぐそこまで迫っていた。ーー

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