天ヶ瀬とウォークインクローゼットと。
俺と天ヶ瀬はウォークインクローゼットの中にいた。
クローゼット内は広めでコートやパンツ、洋服等が仕舞われている。
隠れる場所は意外とあるが……。
「キョウ君、二階にいるっておば様が言ってたのに……。 出かけちゃったのかな。 でも、天ヶ瀬さんの靴はあったからいるわよね。」
刈谷はそういうとガタガタと部屋中を探し出す。
アイツ……勝手に人の部屋を…………。
ーーーしばらくの後。
「やっぱりウォークインクローゼットが怪しいわよねー。」
はじめから気付いてて、わざとやりやがったな!
少しづつ近付いてくる足音。
ーーーそして。
ーーーガチャン!!
ウォークインクローゼットの扉が開く。
「…………あれ。いない?」
ウォークインクローゼット内をひと回りする刈谷。
「おっかしいなぁ。いると思ったのに。」
諦めたのか、刈谷はウォークインクローゼットから出ていき、部屋をあとにした。。
『もう大丈夫そうだな。』
『そそそそ、そうですね!』
天ヶ瀬は刈谷に見つかるかも知れないという緊張からか、思い切りどもってる。
俺たちが隠れていたのは、コートが並べられているポールの裏側にある扉の奥の小部屋。流石にこの小部屋までは見つけられなかったようだ。
この部屋は結構狭くて二人共、抱き付いて体を密着させなければならなかったが、見つからない為だ、致し方ない。
ウォークインクローゼットからも声が聞こえる為、地面に耳を当てて確認する。
「〜〜。〜〜!」
「〜〜!〜〜〜!」
母親と刈谷の話し声がする。
『もう大丈夫だ。』
……ガチャリ。
俺達はウォークインクローゼットから出る。
ここで改めて俺は天ヶ瀬と何をしていたのかを思い出した。
あの小部屋に天ヶ瀬を連れ込んで………抱き付いて…………身体を密着させて…………!!
「ーーーーーーーーーーーー!!!」
天ヶ瀬に目をやると案の定、俯いてしまっていた。
しかも、待て!今の天ヶ瀬の格好って……。
膝のちょい上位までの丈の灰色のダボダボパーカーにニーハイソックス。あの時、短パン渡したっけ………。
ーーーーーー。
ーーー。
ー。
覚えがない…………。
って事は、もしかしたらあのダボダボパーカーの下は…………下着!?
だーーーーー!!
こんな時に俺は一体何を考えているんだ!
今、俺の部屋には、俺と天ヶ瀬二人きり………。
「あ、天ヶ瀬……。えと……さっきは……。」
「あ、いいいえ!だだだ大丈夫ですよ、先輩!! あれは仕方なかったんです!」
天ヶ瀬も俺もめちゃくちゃ離れて会話していた。
さっきの事をやたら意識してしまう!
小部屋で抱き合うとか!
そもそも、雨宿りとはいえ、自宅に女の子連れ込んで、着替えて、部屋に連れてくとか、どんだけぶっ飛んでんだ!俺は!
「天ヶ瀬!」
俺は天ヶ瀬に近づいていく。少しでも誤解を解きたい!
下心は無いんだと!
「なななな、なんですか先輩!?なんで近付いてくるんですか?!」
「天ヶ、瀬?!」
俺はカーペットの縁に躓く。
ふにょん!
柔らかいものが俺の顔に当たる。
何だこりゃ。手で触るとムニムニしてる。
「ーーーーーーーーーーーーー!!??」
天ヶ瀬の声にならない叫び。
ま、まさか……………これは……………。
俺の身体からサーッと血の気が引いていくのが分かる。
「分かった!これはおっぱい!そして俺はこれから殴られる!」
見ると、俺はパーカーの上から天ヶ瀬のおっぱいをガッシリ鷲掴みしていた。
だけど………殴られなかった。
「…………先輩のえっち……。」
ちょっと潤んだ瞳、赤く染まった頬、荒い吐息、汗ばんだ肌……。
そして何より…………フヨフヨの柔らかい胸。
「天ヶ瀬!!」
もう我慢なんて出来なかった!
と、その時だった。
ガチャッ!
……部屋のドアが開く。
「何をやってんの、アンタは。」
抱きつこうとする俺に、部屋に入ってきた母親がジト目で見てくる。
殴られたのは天ヶ瀬からではなく、母親からだった。




