イジメとは。
後輩美少女とぶつかったその後。
俺は校門の前にいた。
「はぁーあ、憂鬱。」
俺は何度もついた溜息を漏らし、校門をくぐる。
何がそんなに憂鬱なのか。
それは、俺が昔からイジメられっ子であった事。
それが今も続き、イジメられている事に他ならないからである。
校門をくぐるのでさえ、吐き気を催しそうになるというのに、校舎に入り、教室に入り、授業まで受けなければならないなんて。
ダラダラ歩いていたせいで、とっくの昔に授業は始まってしまっていた。
教室の外から先生の声が漏れてくる。
「やべっ、授業始まっちまってんじゃん!」
慌てて教室のドアを開ける。
案の定、注目の的。
「おぃ、田崎!何遅刻してんだ、テメー!」
イジメっ子の一人、田原が怒鳴る。
「おい、田原静かにしろ!田崎、座れー」
「すみませんでした…」
俺はそう言うと、そそくさと席に着く。
こういう時は当たり触らず、空気と同化するに限る。
しかし、俺が遅刻したことにより、イジメグループの矛先は完全に俺に向いていた。
キーンコーン、カーンコーン!
授業終了のチャイムが鳴る。
と同時に俺は教室を飛び出した。
「待て、コラ!田崎!」
後から田原の怒号。
構わず俺は廊下を駆け抜けた。
捕まってたまるか!
第一、なんで俺なんだ!?
何で俺じゃなくちゃならないんだ!?
馬鹿げてる!学校なんて、馬鹿げてる!
ひたすら廊下を走り、階段を駆け下りた。
その時である。
「あ、今朝の」
凛とした声に、咄嗟に振り向くとそこには……。
今朝、出会い頭にぶつかった後輩の美少女が立っていた。
「どうしたんですか?そんなに慌てて……」
心配した顔で俺を見つめてくる。
言えるわけ無い。
イジメに遭ってて、しかも、そいつ等から逃げ回ってるなんて、かっこ悪い事!
「あ、いや、その……何でもないよ?」
しどろもどろな俺に何か違和感を感じたのだろう。
彼女が口を開く。
「何が、あったんですか?」
その眼差しと声のトーンに、体の芯から恐怖を感じた。
「あ、それは………」
言い終わる前にソレはやって来た。
「見つけたぞ、田崎ぃ!!」
田原達だ。もっと逃げ回っておくべきだった。
「俺達から逃げられると思ってんのか、コラ!!」
ここには後輩の子もいる。
迷惑は掛けられない。そう思った次の瞬間だった。
「何ですか、貴方達は。この方に何をするおつもりですか!?」
後輩が口を開く。鋭い眼光、身体の芯を突き刺すような勢いのある言葉。
後輩と、田原達が対峙する。
何もできずに呆然と立ち尽くす俺。
この後、思いがけない出来事が起こることを俺はまだ知る由もなかった。