天ヶ瀬戦休戦救出 田崎編2
「こいつらも、縛り上げますか?」
「裸にして校庭のど真ん中に捨ててこい。」
石原の命令により、スタンガン男達が動く。
「オラァ!!」
俺と田原はスタンガン男のスタンガン目掛け蹴りを入れる!
スタンガンはゴロゴロっと転がっていく。
立ち上がった俺達は、もうコイツラを許す気なんて無かった。
「本当に、上に書いてある様に凄まじい衝撃で倒れてたら良かったですね、残念だけど。」
「上に書いて……はぁ?何言ってんだ、田崎。」
田原が困惑する。とりあえず………。
「こいつ等をブチのめすよ、田原。」
「あ、お……おぅ!」
俺の声に圧倒される田原。
「何で平然と立てる、お前ら!」
スタンガン男が慌てふためく。
「あぁ、万が一のことも考えてな。」
背中から取り出し、ガランと音を立ててソレは落ちた。
「木の板?」
天ヶ瀬は呆然としている。
「乾いた木の板は絶縁体になる。加えて俺達は学ランだ。学ランは生地が厚い上に、首まで覆っている。良かったよ、俺達は衣替えし遅れて。」
そう、たまたま衣替えに遅れていた為、難を逃れたのだ。
「恐らく、天ヶ瀬には首にスタンガン当てたんだろ?」
俺はもう我慢できなかった。
「お前ら、『俺の彼女』によくも傷を付けてくれたなぁ!覚悟しろ!」
「……………先輩………。」
その時だった。
パトカーのサイレン音が聴こえてくる。
こちらに徐々に近付いてくる。
「田原!」
俺の声に察した田原が扉を閉めに向かう。
「おい、待て!」
制するスタンガン男は
ドスッ!!
俺のボディブローで軽く沈んだ。
「さぁ、こっから出さねぇぞ!お前ら!」
田原と俺で扉は守られている。
「クソが!お前ら、やっちまえ!こいつ等のせいにすりゃいい!」
馬鹿な石原はまだ気付いてないようだ。自分が最大のミスを犯した事に。
その時だった。
「警察だ、ここを開けなさい!」
警察が来たようだ。俺達は扉を開ける。
「全員両手を挙げなさい!」
これで石原は終わりだな。あのミスに気付いていない以上。まぁ、それ以外にも手は打ってあるが……。
「私は何もやってません! 全部こいつらの指示なんです!」
石原は取り巻き達を指差す。
「テメェ、裏切る気かよ?!」
取り巻きと石原が罪の擦り付け合いを始める。
「静かにしろ!全てやり取りは聴こえていた!」
警察官の一人が天ヶ瀬の縄を解く。
「私はこの男達に監禁され、犯されそうになりました!」
大きな声でハッキリと言い、取り巻きと石原を指差す。
そして、スカートのポケットに入っていたスマホを手に取り画面を見せると、110番に繋がったままの状態になっていた。
そして、石原最大のミス。 それは、録画しっぱなしになっていたビデオカメラだ。
警察がソレを見逃すはずも無く、証拠は確実なものになった。
ーーー暫くの後。
石原達は連行され、俺と田原、天ヶ瀬は事情聴取を受けた。
ーーーーーーーーー。
ーーーーーー。
ーーー。
事情聴取が終わったのは4時間後。
真夜中の道を俺達は歩いていた。
「ドッと疲れたな。」
田原の言葉に俺も頷く。
「しかし、お前……手当してもらったとはいえ、ひでぇ傷だな。」
見ると確かにそこら中包帯まみれで血が滲んでいた。
「……………先輩。」
後ろを歩いていた天ヶ瀬がポソリと呟く。
「ん?どうしたの?」
俺は天ヶ瀬の顔をのぞき込んだ。
「ごめんなさい……先輩の忠告を無視して突っ走って、こんな事になって……。」
「あぁ、いいよ。おかげでクソ共が捕まった。せいせいしてるよ。」
頭の後ろで手を組み歩く俺に天ヶ瀬が尋ねる。
「……先輩は格闘技、出来たんですか?」
「あぁ、それは俺も気になるな。 あの強さなら俺達は倒せただろう。 何でやらなかった。」
天ヶ瀬の問いに田原も同感のようだった。
「俺はなるべく穏便に済ませたかっただけだよ。 それに格闘技を習い始めたのは二年前からだ。」
二年前、そう。 あの、何も出来なかったあの次の日からだ。 俺は警察を呼んで、結果助かったが、警察の到着が遅れていたら……きっと。
「…………先輩。」
天ヶ瀬が不意に抱きついてくる。
「…………ありがとうございました、好きです。大好きです!」
ギュッと抱きついてくる天ヶ瀬。
「いででででで!!!!」
さっきの傷で悲鳴を上げてしまう情けなさ。
「私、決めました。やっぱり先輩は私が護ります!」
抱きついたまま見上げてくる天ヶ瀬。
「わかった、わかったから!ほら、血が付くから離れて!」
俺は照れて天ヶ瀬の顔を見る事も出来なかった。
「俺、邪魔じゃね?」
田原は一人呟いていた。




