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彊兵とマリアのすれ違い。

「……………。」

自分に対する嫌悪感、罪悪感から彊兵は服やスマホ、財布等を手当たり次第にバッグに詰め込むと、マリアの制止を振り切り、家を飛び出した。


勿論、行くアテなど無いが、彊兵はあの場所に居られなかった。

マリアが必死になって歩いてきた道を途中でぶち壊したと思っての行動だった。

それは彊兵なりの思いでもあり、自分勝手な行動でもあった。


「何処に行こうか……。」

彊兵は倉庫から引っ張り出してきた自転車に乗り、夜の道を走らせた。


「ありっしたー。」

コンビニで買った缶コーヒーを飲みながら、彊兵は今までの事を思い出していた。

マリアと出会い、婚約をした。

マリアは俺と出会った為に、夢の医師を捨てた。

マリアは自分を犠牲にしてまで生きてきたのに、その道を途中で俺が変えてしまった。

でも、医師になれても、義理の父親といて、幸せだったのか。

考えれば考える程、頭はこんがらがった。


この時、彊兵はマリアの幸せが『何なのか』を完全に見失っていた。


「山の方に行くか、下って街まで行くか。」

豊川市まで行けば、それなりの町並みになるが、警察に見つかると完全に補導される時間帯だった。


彊兵は山を抜け、浜松の浜名湖へ向かう事にした。理由などはない。一人になりたかったのだ。

国道301号線を南下する。峠道で結構急だが、夜という事もあり、車の数は少なかった。後半は勿論下り坂。そのまま一番下まで下る。

道の両側にミカン畑が見える。三ヶ日に入ったようだ。

彊兵はそのまま夜の三ヶ日の町を走り抜けた。


ーーーーーーその頃の田崎家一同。


「マリアちゃん、彊兵は何か言ってたの!?」

マリアは一同に事の経緯を話した。

「なるほど、恐らく彊兵さんは、自分がマリアさんの将来の夢を壊してしまったと思ったんでしょうね。」

湯川姉は客観的な意見を述べた。

「そんな……そんな事無いのに……。」

「取りあえず、警察に捜索願を出しましょう。皆さん車に乗って下さい!」

皆は湯川姉の車に乗り込む。


「お母様、これはよくある事ですが、警察では捜索願を出しても、緊急性が無ければ、すぐに捜索するという事もあまりありません。ですので、捜索願を提出したら、私達で探しましょう。」

元警察官でもある湯川姉はあくまでも冷静に判断して行動するように皆に呼びかけた。

「キョウちゃん………。」

「お母様、申し訳ありません……。私のせいで。」

マリアは落ち込んでいたが、母親は

「大丈夫、キョウちゃんは必ず見つかるわよ。」

とマリアを元気付けていた。

気丈に振る舞ってはいたが、内心母親は彊兵がどこで何をするか分からない状態にヒヤヒヤしていた。


「生きてて………、彊兵………!!」

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