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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人口削減計画

作者: カテチャ

 「(ニュースの日本語の訳)今年の統計を基づきましては、現在、地球上の人口は既に93億を上回っています。相変わらず、インドが一位、中国が二位、アメリカが三位・・・ロシア、日本などの減少期の国を除外すれば、他の国は増加期で、徐々と増加していく一方です。人間をレベルとして分類はしていますが、やはり『下等二レベル』の人がかなり多数に当たります・・・」

 どうせ俺には関係のないことだと思いながら、テレビをオフにした。それに中国にまで出張をさせられて、今日でも中国の大手の会社の契約の相談があるし、テレビを見る場合ではない。早速に支度をして、ホテルから出て朝ご飯でも食べることだ。

 今年というのは、2156年のことだ。人口がかなり増えてきて、コントロールするために、減少期の国を除いて、他のどの国においても、25歳から80歳までの人々はレベルとして分けられている。レベルの順位としては、「上等」、「中等」、「下等三」、「下等二」、「下等一」に数えられる。レベルは、とても重要なものだ。

 「上等」は、各国の首脳や政府の重要人物ぐらいの欠けてはいけない人。

 「中等」は、科学におく研究者や教師、社長ぐらい優秀な人。

 そして、俺が属するレベルの「下等三」は、サラリーマンや警察などの普通な職業の人。

 「下等二」は、主に農民・下民や無職の野郎などの人。これは最も数の多いレベルだ。

 誰かが罪を犯すと、償えず、自動的に最低のレベルの「下等一」に入る。つまり、「下等一」は、犯罪者、或いは一度犯罪をした人だ。こいつらは一生を終えるまでに、貶されたりすることでさえ至る、正しく最悪のレベルの人だ。

 レベルというのは、国家のバランスを保つように、社会的な価値として各国の首脳の語らいに依って規定されている。25歳以下の人は、対象外だけれども、25歳の年を踏むと、或る試験を受けて、レベルで分ける。そして誰かが80歳になる瞬間に、安楽死が訪ねてくる。これは、身分も問わず、誰でも受けざるをえないことだ。

 それに、現代では、誰でもバリューグラスを持っている。バリューグラスというのは、人間の価値、つまり、そのレベルを見通す、科学に依って作られたメガネのことだ。かけると、目の前の人はどのレベルに当たるかはメガネが分析して、レベルが文字として映ってくるのだ。

 階段を降りて、ホテルを出た。上海は常に盛んだ。中国の最も盛んなところと言っても過言ではない。高く作られたビルはもちろん数え切れず、忙しく走る車両、突き当たりの見えない通り道、信号の待つファッションの美女、これらは俺にとっても素晴らしく、ここは憧れの都市とでも言えるほどだ。

 感慨しているうちに、或る男性に強くぶつかれて、俺と男性はバリューグラスをかけ始めた。

 「(日本語の訳)すみません。」

 相手はバリューグラスを下ろして、謝った。

 「(日本語の訳)てめえ、目瞑って歩いてんのか!」

 「(日本語の訳)すみません、急いでいるもので。」

 「(日本語の訳)下等二、しっかり見ろや!」

 「(日本語の訳)すみません。すみません。」

 「(日本語の訳)いいから、去れ!」

 相手は慌てて、前方へ向かった。耳には何度も「すみません」が聞こえてくる。

 そして、俺はやっと混む道を抜いて、レストランに着いた。案内ロボットについて、席に座る。

 「(ニュースの日本語の訳)各国の首脳の決定に依って、本日から、中国も全面的な人口削減計画が始まるそうです・・・」

 くだらないこと、と水を飲みながら、思った。目の前に映ってくる、映像化された注文の画面を手で回して、タッチをする。注文が終わって、目の前の映像は消える。何分間にかけて、運搬ロボットが料理を持ってくる。食べようとしたときに、外から叫び声が聞こえてくる。目を惹かれて、外に眺めてみると、地味な服を着ている人々は何かから逃げようとしている。ガラスを通して、人々の逃げ方が下品で、転けたりする人もいて、一方的に逃げていく。

 これは事件だと思いながら、食べるのもやめて、外へ立ち向かった。すると、逃げる人々の後ろには、真っ黒な戦闘ロボットが速やかにかかってきて、まず転けた人を捕ってどこかへ戻る。その捕り方は、ものすごく残忍で、機械の腕から剣先のような尖るものを使って、人の肩甲骨を貫いて、背中に置き、さらに人の体を嵌めてどこかへ戻る。捕まる人々は痛みに耐えられずに、大きく叫び出して、一生をかけても流石に簡単に見えることのない、地面に滴る血に依って、赤まみれとなっていく、壮絶な光景だ。

 中国語のニュースを思い出せて、バリューグラスをかけて、捕まる人を見ると、やはり下等一で、下品なものばかりだ。ざまあみろと思いながら、レストランに戻る。

 街に響く様々な叫び声を耐えて食事を終える。レストランを出てタクシーを呼ぶ。運転ロボットからこう言われた。

 「モウシワケアリマセン。タダイマ、ジンコウサクゲンケイカクのジッシチュウデス。コウツウキカンハ、ゴリヨウニナレマセン。」

 仕方がない。契約の会社まで歩いていくしかないそうだ。こんな事件に巻き込まれて、会社に着くのも遅くなった。バリューグラスをかけて、契約会社の社長を見ると、やはり中等の方だ。そして社長もバリューグラスをかけて、間違いなく俺の身分を知った。

 「(日本語の訳)何をやってますか、君は。遅刻したんじゃないですか。」 

 「(日本語の訳)申し訳ありません。事件に巻き込まれてしまいまして。」

 「(日本語の訳)契約は要りませんね!20分も待ってました。」

 「(日本語の訳)申し訳ありませんでした。」

 「(日本語の訳)いいんです。今回の件はなしです。」

 「(日本語の訳)是非とも、こちらの契約書をご一覧ください。」

 「(日本語の訳)いいんです。私の話は聞こえてないですか?」

 「(日本語の訳)申し訳ありませんでした。」

 俺は何度も頭を下げて、チャンスを求めたが、無用だ。

 「(日本語の訳)お帰りになるそうですね。見送りいたします。」

 すると、社長の秘書から帰らされる。

 会社を出ると、気分が沈む。街は相変わらず忙しくて、通路人の顔に溢れてくる微笑みはなんだかさらに気分に障る。一方で、戦闘ロボットの姿は見えなくなった。地面も、誰かが拭いたように、赤は消えてしまって、さっきと同様な綺麗さに戻っている。

 ホテルへ戻る途中に携帯電話が鳴る。氏名を見ると、国内にいる、同じく下等三の親友の中村からの電話だ。

 「もしもし、中村。どうしたの?」

 「お前は大丈夫?」

 「えっ?どうゆうこと?俺なら、大丈夫なんだけど。」

 「ニュースを見てたら、上海で事件が起こってるって。」

 「あ〜、確かに、あったな。実見したんだよ。」

 「そうなの?ニュースで見たけど、すごかったよ。」

 「実にすごかった。だけど、あいつらはほとんど下等一だよ。」

 「身分で言うんじゃないだろう。まあ、とにかく、気をつけて。いや、会社に帰国の申請を出したほうがよっぽどいいんだよ。」

 「いやいや、中国語が喋れるっつっても、根本的に日本人だし、それに、レベルとしても下等三だし。帰国申請なんて、要らんよ。俺には関係ねえことだよ。じゃあ、これで、切るよ。」

 ・・・

 契約の件で、中村の話の続きを聞こうともせず、電話を切った。そうだ、俺には関係のないことだ。俺はただここへ出張に来ただけだ。だが、電話は静まらずに、中村からの電話がずっと鳴っている。いっそのことに、マナーモードに設定してカバンの中に入れておいた。

 部屋に着いて、カバンをベットへ投げて、テレビをオンにしたが、気分転換になれそうな番組なんてなくて、ずっと今日のことを放送されている。

 画面に「(日本語の訳)犯した罪を基づいて、下等一の30パーセントの削減が終了」というテーマが映されてある。30パーセントだったことがわかった。下等一の人は、絶対に生きるより、死んだほうがましなのだ。あいつらの価値は、敢えて言えば、死こそ、社会的貢献に当たるものだ。ボタンを押して番組のチャンネルを変えたが、「(日本語の訳)削減事件は最低限人権に触れた」と、中国のどこかで事件に反対するデモを行う群衆の映像に至るまでも出てきた、また今日のことが映されてある。群衆は衆愚だ。たったの下等一の野郎どものことで、デモまでも起こす必要はないだろう。さらにチャンネルを変える。今度は、やっと、中国人の芸人の漫才が出てきた。すごくおもしろい話だけれども、差し込みのニュースに邪魔される。チャンネルを変えようとしても、なんだかリモコンの電池が尽きるようか、テレビへのコントロールが効かないかは知らないが、画面は漫才から、一瞬にかけてニュースに引き換えられた。

 「(日本語の訳)差し込みニュースです。差し込みニュースです。各国の首脳の語らいに依って、2回目の削減計画が行われるそうです。対象者はレベルの下等二のアトランダムに選択される30パーセントだそうです。中国においては、本日の正午をもって・・・」

 突然、カバンの中に「ウーンーウーンー」と携帯電話の音がする。携帯を出すと、中村の名前が目に入り込む。中村も多分、このニュースが見えて、電話をかけてきた。だけど、俺にとっては、こんな気分ではない。それに、削減計画については、俺に関係のないことだ。

 漸くテレビの画面が漫才に戻れて、それに楽しんでいる。しかし、時間を忘れて、下の叫び声に惹かれた。壁にかかる時計を見てみれば、既に12時半ぐらいだ。窓から見下ろすと、また戦闘ロボットたちが、人々を追いかけて、まるで獲物を捕まえようとしている。随分と高く泊まっているので、街で追いかける戦闘ロボットと逃げる人々は、蟻のように小さく見えて、互いの行動も緩めるように捉えられる。そして、下の通路だけではなくて、他の通路でもこの狩りが起こされている。捕まる人は朝のように、肩甲骨が貫かれる。叫び声は決して絶えず、人が背中に置かれて、ロボットと人が同体となって、視野では捉えられないほどの遠くのどこかへ行かれた。

 俺は下の壮絶な光景をじっと見ている。しかし、同情は一切ない。何十分にかけて、地面は再び真っ赤となって、窓から見ると、人の身が見えず、叫び声も消えた。まるで目に当たる通路は真っ赤で描かれた素晴らしい油絵のようだ。だが、他の普通な油絵とは全く違って、この絵に着色するのは人の血で、時間とともに、艶が褪せていくものだ。

 いつの間にか、掃除ロボットが現れた。掃除ロボットたちは足がなく、代わりに、輪ようなものがついて、血まみれの地面をすっと通ると、アスファルトが平常のような、暗いグレーの色に戻っていく。もし、さっきまでの光景は油絵だと例えると、掃除ロボットは効果の高い消しゴムのような存在だ。実際に見事の働きが終わるのも、それから間も無くのことだ。仕事を終えて、掃除ロボットたちも視野から姿を消す。

 当たり障りのない俺が興が醒めると、ベットに伏せて、天井に見届けた。なぜ天井を見たのか、自分でさえわからない。契約の件で、気分がまだ戻ってこないからかもしれない。それとも絶好の油絵を見たからの可能性もある。だが、契約が水の泡となった以上、日本に戻って会社に報告するしかほかがないようだ。いかに憧れの上海に残ろうと思っても、本業としては、日本で働くことだ。

 早速に支度をして、タクシーを乗って、浦東プートン空港へ向かう。タクシーが空港へ向かっているうちに、何度もインターネットで飛行機のチケットを押さえようとしたが、なぜか購入することができない。

 遂に浦東の国際線のターミナルの前に着いたが、まさか、行列はドアの外にも長く続く。並んでいるうちに、空港のアナウンスが流れてきた。

 「(日本語の訳)みなさま、通知に依りますと、本日の16時をもって、三度目の削減計画が行われるのです。対象者はレベルの下等三のアトランダムに選択される30パーセントでございます。故に、18時以降の便に限って、飛行することができます。ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありませんけれども、ご協力をよろしくお願い申し上げます。」

 聞こえた途端に、周りの人がざわざわと話している。最もの人は、行列から離れて、走り出す。バリューグラスをかけて見ると、彼たちは、全員、下等三の人だ。しかし、俺にとっては、余裕を持っているほどだ。なぜなら、俺は日本人だから。おかげで、時間が長くかからずに、順調にターミナルの中には入った。

 カウンターを見つけて、18時以降のチケットを押さえた。席に着いて座って腕時計を見たら、15時50分となった。急に、携帯電話が震動した。中村からのメッセージが届いた。

  「お前、大丈夫?

   電話をかけても全然出てこないから。

   メッセージにした。

   さっきから色々調べていたんだけど。

   お前に言いたいことがある。

   実は、中国の二回目の人口削減計画では、

   外国籍の死者は特にいたそうだ。

   つまり、人口削減計画は、

   国籍を問わず、その国にいるだけで、

   既に抹殺リストに入ってるかもしれないんだ。

   だから、呉々も、気をつけて!」

 俺は何分間もこのメッセージをじっと見張っていた。

 知らずのうちに、空港の時計は16時を指して、「ドーンードーンー」と、身が地獄に閉じ込められそうな耳立つ音が鳴り始まる。握ったチケットはいつの間に、地面に落ちている。席からどうも立ち上がらなくなった。出口から戦闘ロボットが入ってきたのもそれからのことだ。断末魔のような叫び声はロビーで響く。そして、俺は恐らく、あの飛行機には乗れないかもしれない。

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