はじまり
たゆたう海月のように、または、揺りかごで寝ているような、優しい揺れ。
あたたかく、包み込む感触が気持ちいい。
微睡みながら、ばあちゃんの声が頭の中で響く。
『お前がこの世に生まれた時、晴れていた空から恵みの雨が降ってきたと聞いたとよ。6月だというのに空梅雨で、天気予報では雨は降らんと言っていたのにね。水は大切なものだ。水がなければ、私らは生きてはいけん。水を大切にするんだよ。お前は水に愛されている、水希――』
ゆっくり目を開けると、そこに映ったのは、澄んだ青だった――――。
ここは……どこだ?
朝に見た青空と同じ色合いで、とても綺麗だ。
そう思ったのは一瞬で、見たことのない魚が目の前を泳いでいった……。
泳いで……え? ここって、水の中!?
周りには色とりどりの魚が優雅に泳いでいる。やっぱり、水の中にいるみたいだ。
自分がどうしてここにいるのかと考えるより、ここから出なきゃという思いが沸き上がり、手足をバタつかせて、急いで水の底から光り輝いている上を目指した。
服を着ているのに重さも泳ぎにくさも感じず、スイスイと泳いでいることや、水の中でも呼吸をしていることに気づくことなく、水面へと躍り出た。
草むらが見え、そこまでバシャバシャと水を掻き分け陸へとあがると、仰向けにゴロンと寝ころがり大きく息を吸い込み吐き出した。
ハア~ッ、フ~ッ。ハア~ッ、フ~ッ。ああ、空気がうまい。
何度か深呼吸し、落ち着くことでやっと周りが見えてきた。木々が風に揺れ、その隙間からオレンジ色の空が見えた。
……ええっ……と……。
何があったのかを考えようとしているオレに、ヒョイと逆光で見えない誰かが覗きこむ。
「女神さま!!」
はあ? 女神様?
その言葉を反芻しながら、オレは徐々に思い出してきた。
なんで、こんなことになったのかを――――。