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異世界に来て2日目。朝食はご飯、味噌汁、目玉焼き、そして味のりにした。全て美味しいと食べてくれるソフィアはいい子だ。多分本心なんだろうけど。目がキラキラしている。昼はパスタにしてやろうかな。女性受けも良いだろうし。
ご飯を食べた後は、まずはソフィアに魔法のコントロールを教えてもらうことになった。俺が物覚えが良いのか、それともソフィアの教え方が上手いのか、多分後者だろうが、昼ご飯までにはなんとか全ての属性の威力の調整が可能になった。それで初めて気づいたことだが、俺の得意属性は闇だった。こう、なんていうか、闇魔法を打つ時の体を通る魔力が一番、すーっと抜けていく感じがする。でもなんか…闇属性が一番強いのは、悪役みたいで感じが悪い。闇属性、強いけどな。嫌いじゃないけどさ、うん。ちなみにソフィアは水属性が一番得意らしい。命の神なのに、命属性じゃないのか、と聞いたら斜め上に目をそらされた。少し気にしてるっぽい。
コントロールができるようになったので、昼食の火の扱いは自分で行ってみた。俺の魔法は威力が強すぎるのでコントロールは少し難易度が上がるそうなのだが、完璧にやり遂げた。やっぱり自分好みに調整できるのは良い。魔法万歳だ。カルボナーラを作ってみたが、これも好評だった。
午後、本題のアルメス王国へ向かって出発した。ソフィアに教えてもらったように、風魔法である、空を飛べる"フライ"と、速度上昇の"スピード"を使い、上空を飛び続ける。上空といっても地上からの高さはおよそ4mぐらいなのでそこまで高くない。それなら地上を走れば良いのでは?と質問したところ、これは俺の魔力を安定して放出するための練習になるらしい。そこまで考えていたのか…、ソフィアには頭が上がらない。
そして道中、魔物というものにも何度も遭遇した。ツノが太い赤いイノシシ、レッドボア、プテラノドンのような見た目をしている、デスコンドル、立つと大きさが3mほどになるアングリーベアーなど、スマホ情報によると全てAランク冒険者4人がかりほどで倒すような強さを持つ敵のオンパレードだった。冒険者には下はFランクから上はSランクまで実績に応じて昇級していくのだが、そのAランクが寄ってたかって討伐するような敵がうじゃうじゃいる。しかしこれらは俺の敵じゃなかった。むしろ俺の武器や魔法の良き練習相手として、片っ端から殺されている。あまり可哀想だと思えないのは、もう俺がこの異世界になれた証拠か。それとも異世界補正か?
練習は練習でも、なるべく綺麗な素材を残して保存しておきたいので、一発で首をちょん切っているのだが、これがコントロールが難しい。魔法で色々な属性の刃のブーメランを作りピンポイントで首を狙う。(とりあえずこの魔法をカッターと名付けた)全力を出せば、一回のイメージでカッターを一度に100以上打てることがわかったが、それをやると素材がボロボロになるどころか見る方も結構グロいので一度しかやってない。作るとこまでは、自分のまわりにカッターをまとっているみたいで楽しいんだがな。
その一方、魔法だけに頼りたくないので、俺は武器にも挑戦した。スマホから召喚する武器は全て神の名がつく武器であったため、正直何を出してもめちゃくちゃ強かった。剣なんて軽く振っただけで敵が真っ二つだ。剣だけでなく、槍や弓など、色々試したのだが、俺は片手剣の少し長い版、ロングソードと称される武器が一番しっくり来た。最初は重そうだと感じたのだが、身体能力の向上のおかげだろうか。ものすごく軽い。あえていうなら野球の金属バッドを振り回している感覚だ。それからは腰にロングソードを帯剣しておいた。すぐに取り出せる方が便利だし、そもそもかっこいい。
そしてこの戦闘で気づいたことだが、ソフィアは敵を倒すのがとても上手い。心臓を狙い魔法の槍で確実に仕留めていく。聞くと、この世界では今日が初めてらしいが…。このって…、天界には魔物が入るのだろうか?
ソフィアにも剣などの神装備がまだ残っているので進めだところ、今の杖でいいと言われた。ソフィアは武器として、長めの杖を扱っているのだが、杖を持たないと魔法が打てない、ということではないらしい。ただ杖は魔法のコントロール力を上げてくれる力を持つと、ソフィアは話した。ソフィアぐらい強いと、魔法の力を抑えるコントロール力はとても大切だ。強すぎて自分が巻き添えになって死んでしまうケースもこの世界にはあったらしい。たぶんそれがソフィアにも起こった場合、ほぼ確実に俺もろとも死が決定だ。ソフィア、がんばれ。
そんなこんなで夜になり、地上に降り立つまでに23匹の魔物を綺麗な状態でスマホに保管することができた。ソフィア曰く、それを冒険者ギルドに持っていくだけで相当なお金になるらしい。楽しみだ。
夜ご飯は狩ったレッドボアの肉を風魔法でミンチにし、ハンバーグを作った。正直見た目がイノシシなので肉が臭いことを心配してたが、超美味しかった。高級な豚のような味だろうか?とにかく美味しかったのだ。明日はこの肉でステーキでも作ろうかな?そう思い、それをソフィアに話すとステーキステーキと鼻歌を歌いながら後片付けを始めた。たぶんステーキがどんなのか知らないだろうが、食に関しては俺に絶対の信頼を置いてるようだ。なんか餌付してるみたいだ。
食事が終わった後は、2人で色々な魔法のイメージを作り、実際に試すを繰り返した。イメージさえ出来れば魔法は自由性があるので俺はどんどん前世でラノベで得た知識を曝け出した。楽しすぎてあっという間に時間が経ってしまったので、慌てて寝袋に入って就寝した。異世界2日目は充実した一日で幕を下ろした。