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ソフィアはこの世界の転生担当も行なっていたらしく、結構深いところまで、俺にこの世界のことを色々教えてくれた。
順を追ってわかったことを整理すると、まずこの世界全体のことを、ランドリティアルという。水と酸素が存在する、地球の妹星で、2つの星を作った神は同一人物らしい。ただ、このランドリティアルは、地球とのお互いの星への干渉ができないよう、パラレルワールド化した世界にあるという。地球と違うところは、神から魔法という概念が与えられたことで、魔法を主体に独自の発展を続けてきた。それにより、科学という概念がないらしく、未だ、地球の昔の西洋のような状態である。電気もガスもない。すべて魔法でなんとかなるため、必要性がないのであろう。
次に、ランドリティアルには、アルンスト、レジーク、ソメロニア、メユナーゾ、テポンス、そしてここ、暗黒大陸、という大きな大陸が6つ存在することがわかった。五つの大陸が、暗黒大陸を中心として囲むように位置していて、それぞれが陸繋ぎで繋がっているため、行こうと思えば隣の大陸にも徒歩で移動ができる。ただ、各大陸に何ヶ所が設置してある転移門を使えば移動が可能だそうだ。ただし、暗黒大陸にはない。その理由は後で説明する。
各大陸(ただし暗黒大陸以外)には3〜5の国があり、そこに属している村や町が、数多く存在する。国と町や村との判断の境目は、人口が1万人以上であり、どこの国にも属していない状態で、その国に王を立てれば、国として周りに認めてもらえるらしい。意外と簡単そうだな、と俺は感じたのだが、国を建てるというのは、周りの国に攻められる危険性が高まるということを意味する。守ってもらう立場から守る立場になるのだ。それにより、力のある国だけが、国として残っているらしい。日本の戦国時代をイメージすればしっくりくる。
国と称されるからにはさまざまな施設が揃っている。例えば、ほとんどの国には冒険者が集い、依頼を受ける施設、冒険者ギルドが存在する。ソフィア曰くそこに所属して依頼を受け、細々とモンスター討伐などをすれば、生きていくだけのお金は貰えるらしい。簡単そうな気もするが、命をかけているのだから報酬はそこそこあるのだろう。とりあえずまず俺たちは何処かの国に行って冒険者登録をしなければならないな。
次に武器や魔法の説明だ。
まず、ひとくくりに武器といっても、多くの種類が存在している。片手剣、両手剣、双剣、刀、ナイフ、と剣だけでも大きく分けると五つの種類に分かれている。その他にも槍、弓、杖、オノ、ハンマー、手にはめて戦うナックルなどなど、大陸によって独自の武器もあるらしいがそんなところだろう。
そして魔法。これは大きく分けて二つ、通常魔法と精霊魔法に分かれている。魔法の見た目には変わりがないのだが、分け方は単純。精霊族が使っているか否かだけだ。普通、魔法は魔力を用いて展開する。ただし、精霊族は大気中の魔力を取り込んで魔法を展開する。いわゆる魔力枯渇が無いのである。精霊族は寿命が長く、数が少ないため人里に下りてくる精霊族は、大国の魔法研究員になることが多い。生まれた時から超出世コースだ。
そして魔法には2つの適正というものが存在する。それによって魔法使いとしての強さも左右される。
1つ目は属性適正。魔法には火、水、風、土、雷、光、闇、そして命の八属性がある。この世界の人々は生まれながらにして属性適正があり、80%の人間は二属性までしか扱えない。自分の得意属性と、ペアの属性だ。火は闇、水は光、土は命、風は雷とペアになっている。三属性以上持っているものは20%しかいないのに、五属性以上持てるのは1000人に1人。ましてや全属性は世界全体で探しても10人行くか行かないからしい。
ただ、属性適正があるからといって、みんながみんな凄い魔法を打てるとは限らない。2つ目には、魔法適正が関係してくる。魔法適正も、生まれながらにして固定で、初級、中級、上級、超級、高級、神級の6段階に分けられ、使える魔法の自由性や魔力量が神級に近いほど多くなる。
初級は生活魔法、例えばコップに水を出すとか、薪に火をつけるだとか、洗濯物を乾かすだとか、そういう威力がない魔法。実際に戦えるのは中級からで、中級だとファイアボールなどモンスターにも効く魔法を打てるようになる。10人に1人は中級になれる、という統計があるらしい。冒険者の魔法使いで一番多い層だ。
1000人に1人と言われる上級だと、自分の周りへの範囲攻撃や、一定距離がある敵にも魔法を打つことができる。冒険者のエリートや、大国のお抱えの魔法使いになることも可能だ。
1万人に1人と言われる超級は、冒険者だとパーティーに1人いるだけで全然違う。小型のドラゴンなら盾役がいなくとも、一人で勝ってしまうらしい。ここまでくると、大国の筆頭魔法使いにと、スカウトが来るレベルらしい。しかし大抵の超級持ち魔法使いは、若い頃は冒険者として荒稼ぎをし、冒険者をやめた頃に仕える。筆頭魔法使いは、存在自体が政治の材料として使われるため、冒険者としての自由がきかないからだ。王国側のスカウトも、そこは理解しているため、未来の投資で誘っているためなんの問題もない。
高級になると、世界で10人ほどになり、ここまでくると大国も簡単に手を出さない。下手をして怒らせて戦闘になれば、小国1つの騎士団レベルじゃ太刀打ちができないため、国がぶっ飛ぶ。そのため大抵の高級持ちはソロ冒険者として過ごすことが多いようだ。とはいっても、そんな優秀な人材を大国がほっとくわけもなく、国同士の戦争に介入する高級持ちも少ないがいるらしい。
神級に関しては100年に1人、現れるか現れないかそんなレベルらしい。ソフィア曰く、存在自体が爆弾なため、高級持ちと偽っている説もあるという。
このように、属性適正と魔法適正によって1つに魔法使いといってもさまざまらしい。ちなみに俺は全属性の高級持ち。これもかなり凄いことなんだとソフィアに言われたが、ソフィアはなんと、全属性持ちの神級。爆弾どころか、超本気を出せば、1人でこの世界の人類を滅亡に追い込めるらしい。そんなことやらないでくれ。俺が死んだ顔でソフィアを見ると、ソフィアはにっこりと笑う。どっちなんだ…。