自然を観察します!
17話目です。
何故か筆が進みました。と言ってもやっぱり短めです。
サクッと読んじゃって下さい。
「うへぇ、少し入っただけで結構暗くなるな……」
(この森は切り拓かれることなく、数千年もの間この姿を保ったままだ。広がることもなく、また狭まることもなく……。人間の木こり達がこぞって開拓しようとしたらしいが、全員謎の失踪を遂げていると書物にあったな)
そんな曰く付きの森ならもう少し名前を変えれば良いのに……。『帰らずの森』とかさ。そしたら近づく奴も減るだろ。
(そんなことをするまでも無く、ここはもう立ち入り禁止区域だ。人間の国の掟でこの森への出入りは許可されておらぬ。そもそもこの森にはモンスターも多々存在しているのだ。人間如きが侵入して良いものではない)
なんか一気に不安になったぞ……。モンスターとか今のままじゃ絶対勝てない。
(勝つどころか逃げることすらできまい)
うっ……。走るのはあんまり得意じゃない……。
(凶悪なモンスターに出会わぬよう祈ることだな)
なんて適当な。そこは助けてくれるんじゃないのか?
(はっ、笑わせおる。支配権は戻ってないと言ったであろう)
頼りがいのない王様だな、本当に!
(さっきから一歩も動いておらぬでは無いか。ほら、仲間を探すのであろう? この森を抜ける以外には方法はないぞ)
それ本当だろうな? 実は空を飛べました! とかじゃないよな? そもそも海を渡れば良いんじゃないの……?
(人間の国は内陸にある。川を見つけてそこを登る手もあるが、相当な回り道をする羽目になるぞ? この森を突っ切った方が遥かに近い。そして空は飛べぬ。鳥でもない限りな)
はあ……。絶対出られない森が1番近いってわけ分かんねぇな。矛盾してる気がする。
(2度と戻れないと言われているだけだ。本当に閉じ込められるとは限らん。迷いやすいことは確かだがな)
ちくしょう、舌先三寸でものを言いやがって。
こんなのが海皇で良いのか? と思った矢先、目の前に綺麗な花が咲いていた。……あれ? こんなとこに花なんて有ったか?
(ふむ、先程までは無かったはずだ。急に現れたのか? 珍しい花もあるものだ)
近くによって観察してみる。花弁は赤色で、サイズは手のひらほど。中の花粉がキラキラと光っているようにも見える。なんだか形は薔薇に似ているが、花弁の枚数が少ない。
(これはバラの一種だな。恐らく『ホタルバラ』であろう。花粉が発光することから付けられた名だ)
へー、この世界にも薔薇が有るのか! なんだか親近感がわくなぁ。聞いたこともない品種だけど。
(しかし急に咲いたとは考えにくい。この花は希少種で滅多に見られるものではない。こんな森の浅い場所で見つかるとは思えぬ)
どうしてそんなに知識があるんだ……。なに、花の専門家?
(我が神殿の図書を舐めるな。古今東西のあらゆる書物を納めてあるぞ)
そういえばそんな場所あったな……。ん? 『ホタルバラ』? 蛍も居るのか?
(当たり前だ。昔は沢山居たらしいが、今では絶滅危惧種だ。人間による乱獲が原因であろうな)
うわ、耳が痛い話だ。どこの世界でもそんな事例はあるんだな。
(人間は愚かな生き物よ。自己中心的な者達が多すぎる。互いを尊重しあう我が民を見習ってもらいたいものだ)
いや、人間にもそういう人は居るからな? 確かに過激な奴も多いけどさ……。
(ふむ、いい加減歩いたらどうだ? 花の前で立ち止まっていても……)
はいはい! 行きますよ、行きゃいいんだろこんちくしょう。
そうして、俺は森の奥へとズンズン歩いて行った。
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「おっ、見たことない鳥が居るな」
(『クルカン鳥』のオスだな。伝説の神鳥『ククルカン』に似ていることから名付けられた。攻撃的ではない上に、美しい見た目と鳴き声により、これまた人間によって乱獲された。この森に逃げ込むことで、生き長らえて居るのだろうな)
ほー、確かにキレイな羽毛だな。危険な奴じゃなくて良かった。…………あっ、飛び立った。
(こちらに気付いたのだろう。警戒心が強いからな)
ふーん……。じゃあこの変な蔓はなんだ? 色が紫とかあからさまに毒がありそうなんだが……。
(ふむ、これは『ヘビツタ』の亜種だ。毒性を持つことでより長く繁栄できたツタだな。これで即効性の高い毒を作ることができる)
んで、また人間に伐採された……と。
(いや、これは元々数が多いからな。食用にもならぬし、余り多くは伐採されておらぬはず。触るだけなら害はないぞ)
ふむふむ。こうやって質問していると、頭の中に電子辞書でも入れてるみたいだな。中々面白い。……お?
(我を便利な道具かなにかと思っているな? 無礼にも程がある……ん?)
これはさっきの薔薇か。『ホタルバラ』だっけ?
(そうだ。おかしいな、こんなに簡単に見つかるものであったか? 意外とこの森では群生しておるのか……)
そんなこともあるんじゃね? 綺麗な花だし、1本持っていきたいな……。
(やめておけ。生態系を破壊する行為になるぞ)
1本だけなら良いだろ? まだ沢山あるかも知れないし。
(それが人間のエゴというものだ。まだ2本しか見つけておらぬだろうが)
むー、希少種なら尚更欲しいんだけど。
(後5本ほど見つかれば好きにしろ。貴様は蒐集癖でもあるのか?)
いや、なんか急に欲しくなってきたんだよ。あの光る花粉とか見てると……。
(……? 何を言っているんだ貴様は。さっさと先に進め。そろそろ日が落ちる)
げっ、もうそんな時間なのか。どこか開けた場所はないか……。
(あまり良い場所ではないが、目の前の倒木に腰を下ろせ。ギャップが起こっておるから昼は日の光が入るはずだ)
よし、取り敢えずここで保存食を食べるか。ちなみにこの倒木はなんの種類の木だ?
(『カシトール』だ。陰生樹の1つだな)
なるほど……。特に重要でも無いな。どうする、今日はここで寝るか?
(聞いておいてその言い草か。……まあ、これ以上動くと危険だ。朝が来るまでここで待つとしよう)
今回も読んで頂き、誠にありがとうございます。
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忙しくてもちゃっちゃかやれば意外と書けることに驚いています。何か変なところがあれば、教えて下さい。
次回:夜は怖いです!




