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海皇やるのも楽じゃない  作者: 坂鷹孝佐
16/17

森へ入ります!

16話目です!

結構短くなってしまいました。

その分サクッと読めると思います。


 それから俺は海皇からの提案を受けていた。


(まず、貴様の願いは元の世界に帰ることであろう? そして我の望みはこの体を取り返すこと。貴様の魂を抜き取る方法が有れば良いが、我はそのような魔法など知らぬ)


(そもそも、魔法もろくに使えぬような者に我が体を扱えるとは到底思えぬし、どうせすぐに手こずって野垂れ死ぬであろう……。しかし、この状態のまま死なれてはどうなるか分かったものではない)


 あの~、さっきから思ってたんだけど、一人称『我』なのね。


(黙れ。貴様のせいで『私』になったであろうが。それで良く部下に怪しまれなかったものだ)


 そんなの知るわけないじゃん……。


(とにかく、貴様の願いが早く叶うほど、我の望みも実現に向かうはずなのだ。分かったのなら、とっとと行動を起こせ)


 分かった分かった……。それでどっちも解決するんだな?


(分からんな。はっきり言ってしまえば、貴様が元の世界に帰ることができるかは怪しいところ──それより、貴様は我の体のまま人間の国に赴くのか?)


 いや、サラッと流すな! 結構重要な話なんだからさ……。あとなんだっけ? この姿のままかどうか? それがどうしたんだよ。別に構わな……くないな。こんな格好じゃ怪しまれることこの上ないな。


(……本当に間抜けな奴だ。先が思いやられるぞ)


 う、うるへー! なんか解決策はあるのか!?


(無属性魔法の『擬態』ならば誤魔化せるだろうが……。この魔法は他人から触れられたら解除されるのだ。さらに高レベルな魔法職の者にも見破られやすい。まあ我の魔力を持ってすれば、見破られることは有り得ないが、魔法解除そのものの無効化はできない)


 『擬態』ねぇ……。『リフォーム』とかと同じものか?


(そうだ。難易度は低い方だがな)


 お、それなら今の俺でもできるかもな。『リフォーム』なら使えたし、それより難易度が低いならやれそうだ。


(そのおかげで我が神殿が大改築されてしまったがな)


 あれはあれで不便だったんだよ! 別に改悪したわけじゃないんだし、水に流してくれよ。


(ふん、減らず口を叩きおる。それで? 今後はどうするのだ)


 うーん。仮に友達を見つけても、こんな姿じゃ誰なのか分かって貰えないだろうし……。まず国に入れてくれなさそうだな。


 何かいい手はないか……。人間に『擬態』したとしても、入国する時に身体検査をされて、『擬態』が解除されるかもしれない。そうなったらタダじゃすまないってことだけは分かる。


(ほう、貴様の元の姿はこのような見た目なのか)


 また記憶を覗きやがったな? フィルターとか掛けられないかな……。


(ふむ……。貴様の世界は中々に奇抜だな。科学を極端に発達させるとは……。なんて非魔法的な星だ)


 『非魔法的』なんていう言葉があるのかよ。『非科学的』の逆バージョンか? それにしては日本語として成り立ってないような……。


(ニホンゴ? なんだそれは)


 ウチの言語だよ。お前も今喋ってるだろ。


(仮にも海皇を『お前』呼ばわりとは……。舐められたものだ。そして我が話しているのはオリンパル語だ。この世界共通の言語である)


 オリンパル……? どっかで聞いたような名前だなあ。ていうかいつの間に俺は翻訳こ〇にゃくを食べたんだ? 今まで気が付かなかった……。


(何をブツブツ言うておるのだ。さっさと案を出さぬか)


 あーはいはい。今考えますよ……。と言っても俺が使えるのは『リフォーム』だけだし、もうこのまま行くしかないんじゃ……。


(待てよ…?『リフォーム』を使えるなら……いや、ダメだな。これは無しだ)


 何を考えたんだよ? 教えてくれたっていいじゃん。


(黙れ。そして今のは忘れろ)


 いーや、気になるね! 『リフォーム』がどうした? そんな魔法なんて今は役に立たな……い……?


(チッ、しまった……)


 閃いた!! この体を改造すればいいのか!


(ま、待て! 早まるな! もう少し考えて……)


 気合いを入れていくぜ! 【リフォーム】!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(屈辱だ……。何ゆえに我が人間の体に憑依せねばならんのだ……)


 そう。俺は今、元の姿に戻っている。地球に居た頃の佐上海心の体そのものだ。


 種は簡単。『リフォーム』によって自らの体を造り替えたのだ。生物にこの魔法が効くのかどうか不安だったが、さすがは海皇の魔力。俺の体をきちんと再現できた。


 これは便利な魔法だ……。色んなことに応用できるんじゃないか?


(馬鹿め。『リフォーム』はそもそも生物に効果は無いのだ。よって今の魔法は『リフォーム』ではない。それ以外の何かだ)


 は? どういうことだよ。今の魔法が『リフォーム』じゃないなら、どうして俺は元の姿に戻れたんだ?


(わけが分からぬ。貴様は『リフォーム』を使ったつもりだろうが今の魔法は全く違うものだ。だが一体何の魔法なのか判断しかねる……。我も見たことがない魔法であった)


 ふーん……。なんにせよ、これで問題は解決! やっと先に進めるな。


(何か引っかかるな。とんとん拍子とはいかぬが、それでも出来過ぎている)


 なんだよ? 別に心配するほどのことじゃないだろ?


(貴様はそう思っておけ。だが我は何か裏を感じる。今の魔法に対する違和感が──)


 だー! うるさいな、もう! 先に進めるならそれで良し! さっさと人間の国を探しに行くぞ! 散々せかしたのは誰だよ全く!


(うるさいのは貴様である。本当にこれで良いなら、目の前の森に入れ。この森を北に抜けると人間の国が有るはずだ。どんな国なのかは知らぬがな)


 よしよし、それなら今すぐ出発しよう。もう昼になるしな。


 は~、それにしてもやっぱり元の体は良いな。安心するし、動きやすい。


 ところで、この森はどのくらい深いんだ?


(入った者は2度と出られないと言われるほどには深いな)


 え……?



今回も読んで頂き、誠にありがとうございます。

もし気に入って貰えたなら、ブックマーク等よろしくお願いします。


海皇パートは主に、佐上君と海皇様の掛け合いになります。海皇様の口調が意外と難しく、これからもっとバリエーションを増やしていきたいですね。


次回:自然を観察します!

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