森へ入ります!
16話目です!
結構短くなってしまいました。
その分サクッと読めると思います。
それから俺は海皇からの提案を受けていた。
(まず、貴様の願いは元の世界に帰ることであろう? そして我の望みはこの体を取り返すこと。貴様の魂を抜き取る方法が有れば良いが、我はそのような魔法など知らぬ)
(そもそも、魔法もろくに使えぬような者に我が体を扱えるとは到底思えぬし、どうせすぐに手こずって野垂れ死ぬであろう……。しかし、この状態のまま死なれてはどうなるか分かったものではない)
あの~、さっきから思ってたんだけど、一人称『我』なのね。
(黙れ。貴様のせいで『私』になったであろうが。それで良く部下に怪しまれなかったものだ)
そんなの知るわけないじゃん……。
(とにかく、貴様の願いが早く叶うほど、我の望みも実現に向かうはずなのだ。分かったのなら、とっとと行動を起こせ)
分かった分かった……。それでどっちも解決するんだな?
(分からんな。はっきり言ってしまえば、貴様が元の世界に帰ることができるかは怪しいところ──それより、貴様は我の体のまま人間の国に赴くのか?)
いや、サラッと流すな! 結構重要な話なんだからさ……。あとなんだっけ? この姿のままかどうか? それがどうしたんだよ。別に構わな……くないな。こんな格好じゃ怪しまれることこの上ないな。
(……本当に間抜けな奴だ。先が思いやられるぞ)
う、うるへー! なんか解決策はあるのか!?
(無属性魔法の『擬態』ならば誤魔化せるだろうが……。この魔法は他人から触れられたら解除されるのだ。さらに高レベルな魔法職の者にも見破られやすい。まあ我の魔力を持ってすれば、見破られることは有り得ないが、魔法解除そのものの無効化はできない)
『擬態』ねぇ……。『リフォーム』とかと同じものか?
(そうだ。難易度は低い方だがな)
お、それなら今の俺でもできるかもな。『リフォーム』なら使えたし、それより難易度が低いならやれそうだ。
(そのおかげで我が神殿が大改築されてしまったがな)
あれはあれで不便だったんだよ! 別に改悪したわけじゃないんだし、水に流してくれよ。
(ふん、減らず口を叩きおる。それで? 今後はどうするのだ)
うーん。仮に友達を見つけても、こんな姿じゃ誰なのか分かって貰えないだろうし……。まず国に入れてくれなさそうだな。
何かいい手はないか……。人間に『擬態』したとしても、入国する時に身体検査をされて、『擬態』が解除されるかもしれない。そうなったらタダじゃすまないってことだけは分かる。
(ほう、貴様の元の姿はこのような見た目なのか)
また記憶を覗きやがったな? フィルターとか掛けられないかな……。
(ふむ……。貴様の世界は中々に奇抜だな。科学を極端に発達させるとは……。なんて非魔法的な星だ)
『非魔法的』なんていう言葉があるのかよ。『非科学的』の逆バージョンか? それにしては日本語として成り立ってないような……。
(ニホンゴ? なんだそれは)
ウチの言語だよ。お前も今喋ってるだろ。
(仮にも海皇を『お前』呼ばわりとは……。舐められたものだ。そして我が話しているのはオリンパル語だ。この世界共通の言語である)
オリンパル……? どっかで聞いたような名前だなあ。ていうかいつの間に俺は翻訳こ〇にゃくを食べたんだ? 今まで気が付かなかった……。
(何をブツブツ言うておるのだ。さっさと案を出さぬか)
あーはいはい。今考えますよ……。と言っても俺が使えるのは『リフォーム』だけだし、もうこのまま行くしかないんじゃ……。
(待てよ…?『リフォーム』を使えるなら……いや、ダメだな。これは無しだ)
何を考えたんだよ? 教えてくれたっていいじゃん。
(黙れ。そして今のは忘れろ)
いーや、気になるね! 『リフォーム』がどうした? そんな魔法なんて今は役に立たな……い……?
(チッ、しまった……)
閃いた!! この体を改造すればいいのか!
(ま、待て! 早まるな! もう少し考えて……)
気合いを入れていくぜ! 【リフォーム】!
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(屈辱だ……。何ゆえに我が人間の体に憑依せねばならんのだ……)
そう。俺は今、元の姿に戻っている。地球に居た頃の佐上海心の体そのものだ。
種は簡単。『リフォーム』によって自らの体を造り替えたのだ。生物にこの魔法が効くのかどうか不安だったが、さすがは海皇の魔力。俺の体をきちんと再現できた。
これは便利な魔法だ……。色んなことに応用できるんじゃないか?
(馬鹿め。『リフォーム』はそもそも生物に効果は無いのだ。よって今の魔法は『リフォーム』ではない。それ以外の何かだ)
は? どういうことだよ。今の魔法が『リフォーム』じゃないなら、どうして俺は元の姿に戻れたんだ?
(わけが分からぬ。貴様は『リフォーム』を使ったつもりだろうが今の魔法は全く違うものだ。だが一体何の魔法なのか判断しかねる……。我も見たことがない魔法であった)
ふーん……。なんにせよ、これで問題は解決! やっと先に進めるな。
(何か引っかかるな。とんとん拍子とはいかぬが、それでも出来過ぎている)
なんだよ? 別に心配するほどのことじゃないだろ?
(貴様はそう思っておけ。だが我は何か裏を感じる。今の魔法に対する違和感が──)
だー! うるさいな、もう! 先に進めるならそれで良し! さっさと人間の国を探しに行くぞ! 散々せかしたのは誰だよ全く!
(うるさいのは貴様である。本当にこれで良いなら、目の前の森に入れ。この森を北に抜けると人間の国が有るはずだ。どんな国なのかは知らぬがな)
よしよし、それなら今すぐ出発しよう。もう昼になるしな。
は~、それにしてもやっぱり元の体は良いな。安心するし、動きやすい。
ところで、この森はどのくらい深いんだ?
(入った者は2度と出られないと言われるほどには深いな)
え……?
今回も読んで頂き、誠にありがとうございます。
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海皇パートは主に、佐上君と海皇様の掛け合いになります。海皇様の口調が意外と難しく、これからもっとバリエーションを増やしていきたいですね。
次回:自然を観察します!




