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海皇やるのも楽じゃない  作者: 坂鷹孝佐
13/17

実情

13話目ですね。

サブタイトルが合ってない気もしますが、見逃して下さい。お願いします……。

 

 ジルスがギルドに戻ったあと。俺は皆にパンを配っていた。


「ギルドのお店の人がタダでくれたんだよ。食料無かったから助かったな」


「そうだね……。僕達はお金もなければ寝る場所もない。こんな状態じゃ元の世界に帰るどころか、ここで餓死してしまう」


「どうにかしてお金を手に入れたいわね……。やっぱり冒険でもするしかないの?」


 リンカの疑問にシュウが頷く。


「ルリサさんが言ってたよね? モンスターのドロップ品を買い取るって。つまり、僕達もモンスターを倒せるようになれば、自ずとこの世界で生きていけるようになるはずだよ」


 ここで話を聞いていなかったミズカが口を開く。


「ねえねえ、ホノミちゃん、このパン美味しいね!」


「そうね……でもパンじゃないかも知れないわ。見た目が似てるだけで」


「ええ? どう見たってパンだよ?」


 俺はここで口を挟む。


「んにゃ、店員もパンだとは言ってなかったな」


「うそ! じゃあなんだろうね~」


 こいつ本当にほのぼのしてるなぁ……。


「それなら、お昼ご飯食べ終わったら、皆でモンスター退治よ!いいわね!」


 リンカはノリノリだなぁ。モンスター退治て……。ゲームじゃないんだぞ、ホントに。


「うーん……僕もそうしたいんだけど……」


「どうしたの? いつもすぐに行動するシュウ君らしくないけど」


 確かにリンカの言うとおりだ。シュウが何故か渋っている。何が心配なのか……あっ。


「そうか、俺達はまだ魔法が使えないんだった……」


「そう。そこがネックだよね。僕達は魔法も使えない、体も鍛えてない、そもそも戦闘経験がない。色んな面でハンデが有りすぎる。しかもここは現実。今の状態で街の外に出るのは危険以外の何物でもないよ」


「…………」


 全員黙ってしまった直後、ギルドの方から賑やかな声が聞こえてきた。


「まあ、取り敢えず冒険は後回しにして、ギルドの仕組みでも観察しようぜ。てことで俺は中に戻るけど……まだここで魔法の練習をするか?」


 俺の提案にシュウが応える。


「僕もギルドの中に居ようかな。今後どんな動きをする参考にできるだろうし」


 俺は頷きながら同意する。


「あたしは……もう少しここで剣を振ってるわね。刃物の扱いに慣れておきたいし……」


 リンカはうって変わって不安そうだな。まあ、急に本物の剣を使えって言われるのもだいぶ抵抗があるよな。


「リンカちゃんが残るなら私も残るよ! 3人で修行した方が効率いいもんね!」


「ちょっと? その言い方だと私の参加は決定みたいだけど……」


 ホノミは困惑しているが、こちらを向いて口を開いた。


「えっと……。じゃあ私達はここに残るから、ギルドについてはお願いするわね」


「うん、分かったよ」


「おう」


 俺はシュウと共にギルドへと戻っていった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「うおっ、めっちゃ人が居るぞ!」


「うん……思っていたより多かったね」


 ギルドに戻った途端、そこには沢山の人だかりができていた。


 俺達は受付と入口を見渡せる場所で、なるべく端の方のテーブルに座り周りを眺める。


 次から次へと入って来る人はまず受付に向かう。そこで、ある人は職員と一緒に裏の方へ行ったり、またある人は渡された紙に何かを書き込んだりしている。恐らく冒険の後処理だろう。


 戻ってくると仲間達とテーブルを囲み、談笑したり作戦会議をしたりしている。そうして数分も過ごすとすぐに出て行ってしまう。


「なあ、シュウ。なんか分かったか?」


「そうだね……。まず分かったことは、1つのパーティに女性が2人ほどしか居ないこと、さらにその女性は恐らくは魔法使い……つまり、後衛だということかな。あとは……僕達よりも年上が多いということだね」


 ふむふむ、シュウはパーティについて見ていたか。しかも女性が後衛ってことまで見抜いたと……。


「なるほどな……。ん? あそこに座っている奴らは男3人のパーティじゃないか?」


「本当だね。赤い髪の人は軽装備で片手剣……もう1人の青い髪の人は重装備に大型の盾とハンマーかな? 金髪の人はローブに杖だね。ということは……」


「3人で前、中、後衛を一人ずつ担当しているのか。つまりは3人居ないとパーティは組めないのかね?」


「うん、そうなるだろうね。ああ……それにしても、もしも僕達に筋力があれば、前衛と中衛を同時にこなすこともできるかも知れないのにな……」


「お前は魔法職だろ? そっちを極めればいい話じゃないか。俺なんか魔法剣士のくせに魔法が使えないんだぜ?」


 シュウは苦笑しながら応えた。


「僕もまだ魔法は使えないんだけどね……」


「そ、そうだったな、すまん……。あ、さっきの3人が練習場に向かっていったぞ? 見に行くか?」


「いや、せっかく中に入ったんだし、僕はまだここで観察を続けるよ。気になることもあるし」


「そうか……。なら俺も残るかな」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ふっ……せいっ……はあっ!」


 私は目の前の青い球体──スライムボールを斬ろうと剣を振るう。しかしどうやっても斬れる気配がない。途中まで斬れて、どんどん再生してくる。やっぱり剣を光らせないとダメなのかな……。


「いやー、リンカちゃん凄いね! その剣って重すぎて私じゃ持てなかったのに、軽々と振り回すんだもん」


 ミズカが目を輝せてこっちを見ている。


「まあ、腕力は鍛えてたからね。それでもやっぱり重いよ、これ」


 ほえーっと変な声を出すミズカ。すると、それに被せるようにしてホノミが私の方に質問してきた。


「ねえリンカ、そう言えばあなたの属性って聖属性……だったわよね?」


「うん。そうだけど?」


「聖属性ってどんな魔法なのかしら……?」


 ホノミの質問にミズカが答える。


「知ってる! ビカーッてなるやつ!」


「えっと……もう少し詳しくお願いしても?」


 ホノミは困惑顔で言う。私も何のことだか分からない。


「あれだよ! なんか、悪魔とかを溶かすやつ!」


 うん。分かっちゃった。光で照らして攻撃する魔法ね……。


「なんだかその言い方だとサイコパスね……。でも大体分かったわ。リンカも理解したかしら?」


「うーん、何となくね……。結局どんな魔法なのかは使ってみないと分かんないかもね」


 それもそうねと頷くホノミ。彼女はいつも冷静で、その冷静さが近づきがたい雰囲気を醸し出している……と、誰かが言ってた気がする。タクヤだったっけ?


 そんなとりとめも無いことを考えていると、ギルドの方から誰かがやってきた。


「ふー、やっぱり体がなまってしょうがねえな」


「あのなぁ。俺はてっきり、お前は引退したのかと思ってたぞ。なんだって急に狩りに行こうとか言い出したんだ?」


「ホントだぜ。俺もそろそろ金が貯まってきたし、贅沢したいと思ってたんだがなぁ」


 なんだか冴えないおじさん3人組が口々に何かを言いながら、こちらに近づいてくる。あの人達が冒険者……ここで言う『冒険家』なのかな……?


「まあまあ、そう言うなって。俺達もまだまだ元気……おお? なんだ? 珍しいな、かわいこちゃん達がこんな所に居るなんてな」


 最初に入ってきた赤髪の男がこちらに気付いた。本能的に身構えてしまう。ミズカもホノミも向こうを警戒しているようだ。


「おおっと、そう睨み付けるなよ。大丈夫、ここに居る3人は妻も子供も居る。あんたらに手を出すことはないさ」


「おいおい、ビビらせてどうするんだ『紅剣士(レッドバスター)』さんよ? いきなり声をかけるのは紳士的じゃねえな。……よっ、ウチのリーダーが驚かせちまったな。悪い悪い」


 今度は青みがかった短髪の男が話しかけてきた。冴えないおじさんかと思ったら、意外と若い。肌を見る限り、そこまで年を取ってないようだ。


「あ、いえ……こちらこそ」


 取り敢えず悪い人では無さそうだから、謝っておく。


「へぇ、礼儀正しいな。あんたらは悪い事なんぞしてないんだぜ? 謝らなくてもいいぞ」


 今度は金髪の男が口を開いた。こうしてみるとなんだか信号機みたいで面白い。金髪男の後ろでは、赤髪の男と青髪の男が取っ組み合いをしている。


「その名前で俺を呼ぶなっつったろ! この『青い衝撃(ブルーインパクト)』が!」


「なっ……! 俺もその2つ名は返上したんだよ!」


 そこに金髪男が割り込む。


「おいおい、お前ら喧嘩はやめようぜ?」


「「黙れ! この『黄弾(イエローバレット)』野郎!」」


 そのやりとりを見て私は思った。


 この人達……中二病?



ここら辺は書くのが結構楽しいです。

今後の展開はぼんやりとしか考えてないですが。


それはそうと2つ名って格好いいですよね。

自分にもありました……『空気ストッパー』っていうものが。自分が何かを言うとその場の空気が止まるのです。友人との会話でも時々なります。結構悲しいです。まあ、話を聞いてもらう分には便利なんですけどね……。


さて、最初の方を見返してみると、海皇パートの展開が早すぎて、こっちの展開が追い付かないという状況になりました。海皇パートを適当に済ませた過去の自分を殴りたい……!次の海皇パートは丁寧にやっていこうと思います。



次回:特訓再び

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