特訓
12話目ですね。
先の話も見据えているのに、この投稿の遅さ。
ぼちぼち頑張りたいと思います。
「よし、もう1度剣を構えろ」
ジルスは何事もなかったかのように、平然と指示をする。
「あんたらにも、この技……『強化』を覚えてもらう。なぁに、剣に己の魔力を込めるだけだ」
うーん、そう簡単に言うけどなぁ。
「ふっ……!」
ふぬぬ……力を込めて握れば何とかなるだろ……!
「ダメだダメだ! それじゃ魔力は伝わらんぞ!」
デスヨネー。じゃあどうすれば良いんだよ!
「おら、そっちの嬢ちゃんを見てみろ」
リンカを……? そう思いつつも顔を向ける。
「…………」
なんだ? アイツただ構えて目を閉じてるだけじゃないか。
「見てな、兄ちゃん。来るぞ」
何が来るんだよ……と思ったその時。なんとリンカの持つ剣が薄く輝きだしたではないか。
「なっ……! リンカ、お前っ……!?」
「……えっ!? ちょっ、何よ!」
リンカが目を開けて声を出した瞬間、剣の輝きは失われた。
「あ、あれ? お前の剣、光ってたよな? 魔法に成功したんじゃないのか?」
「そ、そうなの? 確かに何だか手が暖かいけど……」
「おう、嬢ちゃんは上手くいってたな。そこの兄ちゃんが邪魔をしなければ、だがな」
「ぐっ……!」
やはり今のが成功なのか。くっそ、ここでもリンカに後れを取るとは……!
「あんたらはそこで頑張ってな。俺は他の3人を見てくる」
「おう」
そう言ってジルスはシュウの方へ向かっていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「よーし、こっちの兄ちゃんはどうかな?」
「あ、ジルスさん。その……言われたとおり、自分の魔力を感じようとしたんですけど……」
「よく分からないって顔だな」
「はい……。僕の心臓の鼓動や、周りの空気の流れは何となく感じるんです。けれど、そこからどうすればいいのか……」
「ふむ、それだけ感じれば上出来だ。自分と周りの空間にどんな流れがあるのかを、感覚で掴む。それが魔法を使うコツだ」
「はい……! もう少し頑張ります!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「そこの嬢ちゃん2人も、調子はどうだ?」
ミズカが地面にバッタリと倒れながら応える。
「全っ然分かんない!」
「……私はなんとなく分かったわ。自分の中に流れる血とは別に……何か他のモノがある気がする」
「おっ、いいねぇ、そっちの長い髪の嬢ちゃんは飲み込みが早いな。茶髪の嬢ちゃんは……そうだな、杖とにらめっこしてもダメだぞ?」
「にらめっこじゃないです!」
今度は体を勢いよく起こすミズカ。
「わははっ、そうかそうか! ま、もう少し座ってな!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
俺は剣を片手に考えていた。どうすればこの剣に魔力を流せるのか……。他の3人の様子を見る限り、魔法を成功させたのは今のところリンカのみ。どうしてアイツだけが……?
「ねぇタクヤ! 今あたしの剣光ってる?」
目を閉じたままこちらに聞いてくるリンカ。
「それぐらい自分で確かめろよ……。あと光ってない」
「あれ、おかしいなぁ。さっきと同じようにやったのに」
……ただのマグレかよっ! 危うく口に出すところだった。
「よーし! お前ら、全員こっちを向け!」
ジルスが叫んでいる。なんだ、何をするんだ?
「今から俺が魔法を放つ! それを見て魔法の技術を盗め!」
なっ、何を急に言い出すかと思えば……。それが出来れば苦労はしないんだよ。こちとら全く魔力を感じないんだぞ?
「それじゃあ見てろよ……!」
【炎魔法:ブレイズボム】
「おらあっ!」
ジルスの裂帛の気合いと共に、空へと火球が撃ち出させる。それはとても高く飛んで、一瞬光って大きな爆発を起こした。その衝撃波と強い熱がビリビリと体に伝わってくる。
……いやいや! なんだこの威力は!? 流石ギルド長に就任しているだけはある。じゃなくて、これは初心者に見せる技じゃねぇだろ!
すると、ギルドの中からルリサが飛び出してきた。
「ちょ、ちょっと! 今の魔法を放ったのは誰ですか!?」
「げっ、しまった……」
「ああー! ギルド長! 何をしてるんですか! まさか魔法を放ったのはあなたじゃないですよね!?」
「あー、その~……。おう、俺だ」
「開き直らないで下さい! いくら屋外に練習場があるからって、あんな魔法はダメですよ! ていうかそもそも練習場での上級魔法は禁止です!」
やっぱり上級魔法だったか……。【炎魔法】って言ってたからもしやと思ったんだよな。
「そう堅いことを言うなって、ルリ。若い者を育てるのに多少の無茶は必要だろ?」
「必要じゃないです! それにそろそろお昼ですから、朝に仕事に行った人達が帰ってきます! ギルド長も受付を手伝って下さい!」
「分かったよ……。それじゃな、兄ちゃん達! 頑張れよ!」
そう言いながらギルドの方へ戻っていくジルス。
「あ、そう言えば、ギルドルールで『練習場において上級魔法、またはそれに匹敵する威力の攻撃を行った場合、罰金を課す』というのが有りましたね。てことで、ギルド長のお給料から罰金分を引いておきますね!」
「ええっ! な、なあルリ、それって見逃してもらうのは……」
「ダメです」
笑い顔が妙に怖かったと、後にギルド長は語ったという……。
そろそろ海皇パートに戻る……かも知れないです。
もうちょっとタクヤ君パートにお付き合い下さい。
そう言った割に、まだまだ未解決の問題が山積みなんですけどね……。
次回:実情




