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海皇やるのも楽じゃない  作者: 坂鷹孝佐
11/17

これぞ魔法

11話目です。

間隔がだいぶ空いてしまいました……。


「ここが練習場か……」


 そう言いながら中を観察する。そこには木の棒を組み立てて作られた案山子のような物があったり、青くて丸い形をしたゼリー状の物体が浮いていたり、とにかく道具が豊富にあった。


「皆、杖と剣を借りてきたよ」


「ありがと、シュウ君」


 1つ1つ手渡ししていくシュウ。


「……これが魔法の杖なの? あはっ、ただの木の棒みたい!」


 そう言いながら、杖をやたらめったら扱うミズカ。それを見かねたホノミが呆れた顔をして、口を開く。


「……ちょっとミズカ、杖を振り回すのはやめてちょうだい」


「は~い」


 ミズカは本当に高校生なのか怪しいところがある。全体的に雰囲気がフワッとしていて、見てて危なっかしい。しかし、これでも学校の成績は優秀らしい。能ある鷹はなんとやらとはよく言ったものだ。


「おお? さっきの兄ちゃん達か! パーティは組み終わったのか?」


「あっ、ジルスさん。そうなんです、今ちょうどパーティ編成が終わって、魔法や剣の練習をしようと思ってたんですよ」


 シュウがそう言うと、ジルスは顎に手を当て、こう言った。


「そうか! ……ふむ、それならこの俺が兄ちゃん達に魔法の基礎を教えてやろう。ついでにモンスターについても話してやるよ」


 先程とはうって変わって真面目な雰囲気のジルス。流石ギルドの長をしているだけあって、貫禄がある。


「本当ですか! ありがとうございます!」


 すぐにお礼を言うシュウ。女子も異論は無いようで、それぞれ得物を持ちながらジルスの方を見ている。


「よーし、まずは魔法だ。これは最初は簡単でな、ただ己の魔力を感じる。それだけだ!」


 ええ~……と、声こそ出さないが顔が歪む女子達。シュウも首をかしげそうになって、慌てて聞き返した。


「か、感じるだけ……ですか?」


「おう、そうだ。これは自分が持っている魔力を実感し、より速く、正確に魔法を使えるようにする訓練だ!」


 なるほど、自分の魔力を知らないと魔法なんて使えないだろうからな。しかし魔力を感じるだけとは言え、どうすれば良いんだ? 座禅でも組んで瞑想するか?


「まあ、取り敢えずやってみろ! 何事も行動あるのみ!」


 そう言ってジルスはシュウ、ホノミ、ミズカの魔法職3人をそれぞれ離れた場所に座らせた。どうやら本当に座禅を組むらしい。俺とリンカは剣を持ったままその様子を見ていた。


「さて、次はあんたらか。確か魔法剣士だっな?」


「あっ、はい。そうです……」


 リンカが剣を下ろして返事をする。柄にもなく緊張気味だな。


「あんたらにも他の3人と同じことをしてもらおうと思っていたが、まずは剣の扱い方を教える。いいな?」


「はいっ!」


 リンカが応える。俺は終始無言を貫く。


「では剣を持て!」


 言われるがまま剣を持つ。


「柄を両手で持ってスライムボールに向かって構えろ!」


 スライムボール……? あの青い球体か? よし、適当に近くのやつにするか……。


 するとリンカも俺の真似をする。


「……おっ、あんたら剣を持ち慣れてるな? 構えの型がいいぞ」


 ジルスが素早く見抜いて指摘する。そう、実はリンカは6年間剣道をしていたのだ。その構えを剣に応用して、中々様になっている。一方、俺は単にゲームのキャラクターの構えをパクっただけ。作法も何もあったもんじゃない。


「ちょっとタクヤ、あんたも剣道してたんでしょ! 何でそんなデタラメな構えなのよ!」


「あー、うるせぇな……俺は好きでやってたわけじゃねえって何度言えば分かるんだよ……」


 思わず反論してしまった……。くそっ、無言のまま貫き通すつもりだったのに……!


 そう、俺も実は剣道の経験がある。それもリンカと同じ道場に通っていたのだ。


 リンカはとても努力家で、剣道の全ての練習を怠らない。そのおかげで全国大会でも度々上位に食い込むほどの実力者になり、道場の女子の中では最も強くなった。


 そのリンカの母親と俺の母親が友達なもんだから、俺の母親が影響を受けて、勝手に俺をリンカと同じ道場に入門させたのだ。まあ、元々運動神経は良い方だから、入って1ヶ月程でそこそこ試合はできるようになった。


 入門してから5ヶ月が経った中学2年生のある時、俺は初めてリンカと試合をして、ボロ負けした。それがあまりにも悔しくてそこから猛特訓し初めたのだ。そのせいで俺は道場の男子の中で大将を務める程にまで上達した──。


 とまあ、そんな過去があるのだが、今は関係ない……にも関わらず、リンカは俺に剣道の構えを強制してくる。別に構えぐらい好きにやったっていいだろうに。


「んん? ケンドウ? それはなんだ?」


 ほら見ろ、怪しまれた。


「あ、えっと……その、剣道って言うのは……ですね……」


 誤魔化すの下手か。分かり易く動揺するな……。


「剣道ってのは俺達の剣技の事だ。流派とは違うが、似たようなもんだな」


「ふーむ、よく分からんがまあいい、続けるぞ。次に目の前のスライムボールを斬りつけてみろ」


 これを斬るのか……? なんか弾けそうで怖い。


「えいっ……!」


 そう考えていると、先にリンカが斬った。剣をシンプルに上から下に振り下ろしただけ。スパッという軽い音をたてながら、左右に割れるスライムボール。しかし、リンカの剣はスライムボールを少ししか斬れておらず、ボールは斬ったそばからくっついて元の形に戻っていく。……なるほど、そんな作りなのか。


 早速俺も……よし、横に斬るか。狙いを定めて──。


「ふんっ!」


 バスッ……


 げっ、だいぶ力を入れたのに斬れてないぞ? あと3分の1ほど残ってるな……見た目に反して硬いぞ、これ。


「わははっ、最初はそんなもんだ! どれ、ちょっと見てろ」


 そう言うと剣を構えだしたジルス。手本を見せてくれるのは嬉しいが、ジルスは巨漢だから俺達とは比べものにならない筋力があるはず。力業を教えられても俺達には厳しい。


「実を言うとな、このスライムボールは力業じゃ斬れん」


 そう言うや否や、一気に剣を振り下ろすジルス。しかし、剣の刀身はスライムボールにめり込むだけ。


「こいつを斬るには、剣を自分の魔力で強化する必要がある。こういう風になっ……!」


 ジルスの持つ剣が淡い光を帯びる。……まさか、これが?


「おらよっ!」


 スパァン!


 見事に真っ二つになったスライムボール。今までの硬さを感じさせないほどに、いともたやすく斬れている。その断面はとても奇麗で──。


「これが……強化魔法か……!」


 俺は思わず呟いた。

いやー、今回の話だけ滅茶苦茶遅くなりました。

少し諸事情がありまして……。これからも遅くなります。そのかわり、少し長くなる……かも知れないです。


次回 特訓

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