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森に一人で捨てられたお嬢様はお嫌いですか?4

さて、リアルが少し落ち着いたので、再開していこうかと思います。正月ぶりですね。

 昼食を終えた私は、家の中へ入ってあらゆる場所の掃除から洗濯物処理、皿洗い、食事の支度まで教えられました。正直初めてだらけで、上手くいかなかった上に、まだあんまり把握出来ていないのですが、彼は「最初はそんなもんです、慣れてしまえばどうということはないので、なるべく早く慣れてくださいね」とのこと。体感では全く出来るようになれる気がしませんね。


 一段落ついたところで、彼に気になってたことを聞いてみました。

「この家には私たち二人しかいないけれど、レイ君の両親は普段いないの?」

「ああ、両親さんなら、日中は共働きでいません」

「……この家はそんなに貧しくは見えないけど、なにか理由が?」

「理由ってほど、大袈裟なものでもないですかね。元は父だけが仕事に出ていたのですが、大怪我を負ってしまい、一時期仕事が出来なかったんですよ。そこで母がその間だけ出ていたのですが、その仕事にやりがいを感じていたらしく、怪我が完治して父が仕事に復帰した後も、なお続けているだけです」

「へー、こんな普通そうな家庭じゃ、大怪我なんてそうしなさそうだけど」

「突然現れた魔物ですね。こう、背中をざっくりと」

「大変だったのね、どこで何が起こるかわからないとはこのことね」

「ええ、常に周囲に、気を張りめぐらせておかなければいけません。あの人のことだから、そろそろ何か来そうだなぁ。例えば-」


 ズドオォン!


 その音と共に彼の声をかき消しながら、家の一角を突き破って現れたのは鹿の魔物でした。魔物を見たことはありますが、それは遠目に安全な場所からのことです。巨大な体に凶暴な容貌、荒く吹き出す鼻息の前に、私の体は動けなくなりました。

「あ、ああ……」

「噂をすれば、ね。シェルスさん、聞いてますね。僕を試すのは別にいいんですが、彼女を巻き込む必要はなかったのでは?」

「いやいや、これも形は違えどレイ君の体験した『冒険』と同じものだ。少しくらいハプニングや手違いがあっても、別に問題ないだろう」

「手違いって……仕込みましたよね?」

「そうとも言う!」

 その言葉と共に姿を現すシェルスさん。

 え、あの人いたの!? あっ、そういえば最初に……

(私は親切だからな。この家は居候先の、レイの家と同じ造りになってる。そして今の時間は朝の設定だ。庶民の一日の流れを、たっぷり学んでいくがいい。私は影から見守っているからな、それは頭の隅に置いとくように)

 ……すっかり忘れてた。


「それに君なら、問題なく対処できるだろうからね」

「わかりましたよ、もう。******、*************《****》!」

 彼が何か聞き取れない言葉を喋った途端、魔物の中心から黒いエネルギーが発生して、魔物を蝕み、吸収していきます。その間僅か数秒、エネルギーが魔物を飲み込んだ後には何も残らず、エネルギー自身も小さくなり、自然消滅しました。あんな現象は、英才教育を施された私にもわかりませんでした。一体何が……。

「あ、あの」

「ああ、ごめんね驚かせて。あれは僕の奥の手だから、そうそう使わないから安心して」

「そうじゃなくて、今起こしたのは何なのかって聞いてるの! あんな恐ろしい現象が起こせるなんて、習ったこともないわ!」

 激しい感情を露わにすると、シェルスさんが厳しい口調で言葉を挟む。

「そこまでにしてくれないか、その力は私がレイ君にあげた『冒険』を完遂した報酬の一部さ。しっかりその力の危険性を理解して、掌握している。それにさっき奥の手と言っていたね、奥の手を他人にホイホイと晒すわけもないし、私がさせないからね」

「けれど、あんな」

「これ以上は言わないぞ、既に呼び方で気づいてるだろうが、今日一日あんたに色々と教えていた、彼がレイさ。失礼にも今日会ったばかりの他人の秘密にずかずかと踏み込むようなら、そんな失礼な人は、誰であれ別に要らないよな?」

「ええ、これに関しては絶対に教えられません。もし知ってしまったなら、この家に住まわせないどころか、貴方を消さなければなりません」

「う、」

「そういうことだ、諦めろ」

 どうやら引くしかないようです、しかし命を対価に要求するまでとは。

「なーに、そこに触れさえしなきゃ、彼はただの13歳さ。寂しがりやな魔法使いに、目をつけられてるだけのね」

「僕もシェルスさんに目をつけてるんですが」

「おっと、それはまた二人の時にしてくれ、とりあえずリリィ君の冒険はこれで終わりだ。元の世界はまだ昼だが、気疲れもあるだろう、今日は休んでおくといい」

 そう言って、シェルスさんが指を鳴らすと、視界が揺らぎ、中にいたはずの家の外にいました。元の世界に戻ったのでしょう。

「さて、あんたも慣れないながら頑張ったんだ。少し報酬をやろう」

 そう言って懐から取り出したのは、手に収まる大きさの金の宝石でした。

「こいつは持ってるだけで、一日に一度だけ所持者への致命傷を吸収してくれる、とんでもない石さ。わかってるだろうが、絶対に口外するなよ」

「わかってます。そんなことしたら死にます」

「そうだ、それだけわかってればいい」

 そう言ってシェルスさんは私に宝石を握らせ、瞬きした瞬間に消え去っていました。


「帰っちゃいましたか。けどそのうちまた来ますから。それはさておき、改めまして、私はレイといいます。そして我が家は貴方を歓迎します、リリィさん。居候として、家族の一員として、しっかり働いてくださいね」

 レイ君はそう言って手を差し出します。そこに、先程の静かな怒りを秘めた表情は失せ、歳相応の笑顔がありました。


 私はようやく、再起へのスタート地点に立てたのです。平民として新たな生を歩むための。いきなり失礼な様を晒してしまっただけに、信頼を築かないといけないのです。そのために私は差し出された手をしっかりと握りました。

「私はリリィといいます、これからあなたの家に居候させていただきます。この家の方々から信頼を得られるように頑張ります。よろしくお願いします」




少し短めになってしまいました。

あと色々と忘れててつらいですね。

というかこの作品自体が見切り発車だったので、今から不安になってきました。

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