バトル ー後半ー
「ち、地の神よ我が声に反応し、ここに我を救いし魂よ召喚せよ…」
「え!?ヒロヤ君??」
一緒に強風に耐えていたヒロヤ君が
急に呪文を唱え始めたのだ。
ヒロヤ君急にどうしちゃったのよ!?
ギャアアアアオオオオオ
召喚されたのは…
「どどど、っドラゴン!?!?」
「は?ヒロヤのやつ
ドラゴンライダーになんのかよ!?」
ドラゴンを召喚したヒロヤ君にユウヒも驚いていた。
…Sランクってすごすぎるんだけどっ!?
ドラゴンってレアな感じしない??
これならケンタウロスにも同等に戦えるんじゃ……って
あれ?でも様子がおかしい??
「おいこら!ヒロヤ何で俺を攻撃すんだよっ」
何故かヒロヤ君が召喚したドラゴンが
ユウヒに向かって引っ掻いたり、
噛みついたりしようとしている。
ユウヒはシュッシュッと可憐に
その攻撃を避けているのだ。
「ユウヒ、後ろで何やってんの?
ヒマならこのケンタウロス手伝ってよ」
後衛の様子の変化に気付いたヒナタが言った。
「ヒナタ、お前なっ。他人事だと思って」
「まぁユウヒの事だからね。
いいか?ユウヒが傷つけば
ヒロヤにペナルティが生じるし、
ユウヒの攻撃威力じゃ
ほんの少しでもかすれば
ヒロヤは出戻りになるんだからね〜」
「んなの、わかってる」
後ろではドラゴンと戦ってて、
前では大きなケンタウロスと闘ってて…
何なの?このバトルは!?!?
おかしすぎるって!!!!!
「ヒロヤ君!ちょっと落ち着いてよ!!」
「………」
ドラゴンの背中に乗る無反応のヒロヤ君。
どうやら完全に暴走してるみたい……
とにかく、ヒロヤ君のもとに行かなくちゃ!!
私は崩れた壁を登り始めた。
はやくドラゴンの背中に行かないと。
ヒロヤ君のドラゴンがヒナタ達の邪魔したら困る。
数メートル登ると、
目線が高くなりケンタウロスとの戦いが良く見えることがわかった。
「なーんか、
後ろも大変なことになっちゃってるわね〜」
「ツバキ、MP無い」
ケンタウロスのHPが半分を切ったところでアキラさんが言った。ほとんどの攻撃を受けてるのにあの余裕……
バトル慣れしてるのが私にもわかった。
「はいはい。アキラ待ってて。
アネモイの力を秘めし杖よ、今その力を解き放ち強靭なる盾に力の源を与えたまえ、聖なる風ウインディー」
黄緑色の光がアキラさんを包みゲージのMPが回復していった。
す、すごい!
私もあんなふうに支援魔法を使いこなしたいんだけどっ!!!
MPが回復したのとほぼ同時にお兄ちゃんが剣に風の魔法を入れてケンタウロスに切りかかった。
リアルの世界じゃ考えられないほどの動きをみせつけるお兄ちゃん。
ギイイイイアアアアアアアアアアア
ケンタウロスが叫んだ。
耳を塞ぎたくなるような音で、
危うく落ちてしまいそうになった。
それと
ケンタウロスの声に反応してしまったのが…ドラゴン。
さっきよりも暴れだしたのだ。
「ヒロヤくーーーーん」
私は、のそのそと壁を上し続けた。
なんでお兄ちゃんもユウヒもあんなに機敏に動けるのに私は…
「マリカ!!!」
「え?…きゃあ」
気付けば目の前にドラゴンのしっぽ。
考え事してたから気付けなかったんだ……
私は目を閉じる事しかできなかった。
死ぬんだ
「……間に合った」
「え……ユウヒごめん」
気付けばユウヒの腕の中にいて、ドラゴンの攻撃を私を抱きながら回避する。
「ほんと、危なっかしいやつだよな。
んで、何しようとしてたんだよ?」
ドラゴンの攻撃を見極めながらユウヒが言った。
ユウヒが高くジャンプすれば、さっきまでいた場所にドラゴンのしっぽが激突する。
ズドンッ
地面にはシッポの跡。
…あれにぶつかったらと思うと、ぶるっと恐怖で震えた。
「アホマリ?」
「あ、えっと。ヒロヤ君の所にいきたいの。
ユウヒ、私をドラゴンの背中に落として?」
「は?んなの危ないに決まってるだろう?」
「でもそのくらいしないとヒロヤ君暴走したまんまよ?」
「………。
ったく、お前は無茶ばかりするんだな。
わかった。
次の攻撃を避ける時、真上に飛ぶから
その時お前降りろよ」
決断をしたら、すぐに方法を提案してくるのは今までのユウヒの経験があるからなのだろう。
「うん!わかった」
ドラゴンが私達に向かって突進してきた。
「行くぞ。せーの」
ユウヒがジャンプして私はドラゴンの背中に降りた、というよりもユウヒに落とされた。
お尻でなんとか着地。
「いたたたた」
尻餅痛すぎるしっ
「ヒロヤ君は?」
私はヒロヤ君の近くに駆け寄る。
彼は目を開けて、ただ1点を見つめているだけ。
「ヒロヤ君?」
…気を失ってる訳ではないようだ。
ただ私がいる事にも気付いていなくて、声も届いていない。
「…え?何でHPも減ってるの??」
私は目を疑った。
ユウヒは一度だってヒロヤ君に攻撃を当てていない…減るのはおかしい。
モンスターを召喚するとHPが減っちゃうの??
ピロロローン
“召喚士はモンスターを召喚する事でHPは減りません。消耗はMPのみです”
じゃあ何が原因なの?
ピロロローン
“それは私にはわかりかねます”
…神の声でもわからない事ってあるのね。
でもまだHPは半分以上ある。
先にヒロヤ君に正気に戻さなくちゃ
「ヒロヤ君、落ち着いて??私の話きいてよ」
私は小さなその背中を抱きしめた。
「…」
反応は変わらない…
こういう場合どう攻略するのよ??
悩んでいるとヒロヤ君の腕に違和感を感じた……
……なにこれ??
ヒロヤ君の腕に何か石のようなものが刺さってた。
HPが減っていたのってこれが原因!?
その石は琥珀色。
どうしようユウヒが言っていた通り、裏切者がこのパーティにいるの??
…もしそうだとしたら、それはアキラさんだ。
琥珀色の石は土属性を表してる…
私はその石に触れるとピリッとした。
―500
私のHPも減る。
こうやって少しずつ
ヒロヤ君のHPを奪っていったんだ。
早くこれを取り除かないと……
「…マリちゃん?」
「え?ヒロヤ君?!」
小さな彼がやっと反応してくれたのだ。
「あれ、僕…」
「ヒロヤ君、このドラゴン落ち着かせること出来る?」
「…やってみる。」
ヒロヤ君は何が起きているのか、わからないといった表情をしたけど、ドラゴンを落ち着かせるために瞳を閉じた。
その姿はドラゴンに念じているように見えた。
すると暴れていたはずのドラゴンの動きがゆっくりなり始めたのだ。
「これでいい?」
「うん。ねぇ、このヒロヤ君の腕にある石どうしたの?これ取り外せる??」
「んー…。魔法やってみる。土をつかりしガイアよ、我から悪なるモノを取り除け…うぅ」
「ヒロヤ君っ!?!?」
腕に埋め込まれている石がピリッピリッとダメージを与え続けている。
このままじゃダメだ。どうしよう?
私にできる!?ユウヒの方が…
ピロロローン
“ヒロヤさんがモンスターのターゲットになりまた”
「え?!嘘でしょ!?!?」
さっきまでガーディアンのアキラさんが
ターゲットをしていたのに…
もしかしてこれでヒロヤ君を殺そうって事??
「マリカっ!!
ヒロヤにそのドラゴンしまわせて!」
ターゲットをうつされて焦った私達の中、ヒナタが迅速に私に言う。
って言ってもヒロヤ君意識ないよっ!
その間にピリッピリッってHPがどんどん減っていく。
もー!こうなったらやるしかないよっっ
お願い、ヒロヤ君を苦しめるものから守りたいのっ
私に魔法を使わせて……
ふと、頭に呪文が浮かんだ
「……水の神を秘めし杖よ、新の力を今我に与えたまえ。邪悪なるものを取り除く、癒しの力……セイレーンリムーブ」
ぶわーーーん
水色の光がヒロヤ君を包んだ。
……カタン。
琥珀の石がドラゴンの背に落ちた。
「はぁ、はぁ。と、取れた」
自分のゲージをみるとMPが3分の1しか残っていない。
どうやらこの魔法はかなりMPを消費するみたいだ。
息が肩でするくらい私は体力を使っていた。
ユウヒが魔法を使ったのか、走ってくるケンタウロスが炎に包まれた。
ゴオオオオオオオオォオオォォオオォ
「マリカ!!
くっそ止まんねぇのかよっ」
ユウヒの叫び声が聞こえた。
炎に包まれてもなお、勢いよくこっちに向かってくるケンタウロス。
私は逃げる事もできなくて、ただただ見る事しか出来なかった。
ケンタウロスのHPが0になり、体にヒビが入っていく。
ユウヒがトドメをさしたの??
「きゃっ」
気づいた時には強い衝撃が私達に走った。
ケンタウロスがドラゴンにぶつかったのだ。
パリーーーン
私はそのまま廃墟の屋上から落ちた。
このまま地面に落下するのか…
空が見えて、ケンタウロスの欠片も見えた。
せっかく倒せたのに……
羽ヒロヤ君に渡せなかった。
「光っ……」
ぶわ―――――――ん
ん??あれ痛くない??
もう地面にたたきつけられてもいいはずなのに、何故か体はゆっくりと地面におちた。
そしておかしい事に一緒に落ちてきたはずのドラゴンとヒロヤ君はそのまま宙に浮いたまま。
時間が止まってるの?
じゃあなんで私だけ動けるんだ??
「ほ~間に合った〜
って何でマリカ動けるの?!」
廃墟の玄関から出てきたのはヒナタだった。
「ヒナタ?!
え?何これどうしたんだろ??
ヒナタの魔法??」
「…そうだよ。時間を停める魔法。
でもみんなには内緒ね?」
ヒナタがニッコリ笑った。
「う、うん。ありがとう」
「……ねぇマリカって本当に水属性なの?」
「え?」
「ううん。なんでもないよ。
さてそろそろ時間を動かすから後ろに下がってて」
「光ッ…」
ヒナタの呪文はいつも聞こえない。
なんて唱えているんだろう?
気付けは時間は動き始めていて、
目の前でドラゴンが派手に落下してきた。
土煙が立つ中ヒナタがヒロヤ君を抱きかかえてきた。
よかった。HPもちゃんとあるみたい。
ピロロローン
“マリカさん
クエストクリアおめでとうございます。”
画面がでてきてケンタウロスを倒したのがわかった。
ドロップアイテム ヒカリの羽
初めて見るヒカリの羽は黄金色でとてもきれいだった。現実世界へ帰るのね。
屋上を見上げると
そこにはアキラさんとユウヒの姿がみえた。
こんだけ離れてるし、それにユウヒが隣にいるんだもん。裏切り行為は失敗で終わりね。これでヒロヤ君を現実世界に帰してあげられる。
「風よ我のもとへ…ふふふ。ヒカリの羽ゲット~」
突風が吹きヒカリの羽が私の手元からはなれた。
「ツバキさん!?」
え??裏切者はアキラさんでしょ??
なんでツバキさんなの??
ヒカリの羽はツバキさんの手元にあった。
「おい、ツバキ!お前」
「現実世界、帰りたいのは私もよヒナタ。そんなガキに譲るわけないじゃない。でも私はBランク。私光のヒナタとAランクのヒナタがいたからついてきたのよ」
「…くっそ」
ツバキさんは愛おしそうに羽を見つめた。
「…ったく。やっぱりそういう展開かよ」
ユウヒは面倒くさそうな顔をしていた。
「途中でマリカちゃんに石に気づかれたときは焦ったわ〜」
「あれは土属性だった。
ツバキさんは風属性でしょ?」
「ふふふ。
マリカちゃんが初心者で本当によかったわ。
ねぇ、マリカちゃん風って緑色だけじゃないのよ?砂嵐は何色の風だと思う?」
「…琥珀色」
「ふふふ。まぁこのガキもSランクだからなかなか石の攻撃じゃHP削れなくて焦ったわ
でも結果オーライね」
「ツバキ、こんなことしたらペナルティになるんだよ?」
ヒナタがツバキさんに向かって発した。
「ならペナルティになる前にこの世界から逃げるわ。
ペナルティは攻撃してすぐに罰せられるもんじゃないし」
ツバキさんが手にした羽を天高くつきあげると光の柱が空に向かって伸びた。
そして、光の柱から大きな扉がでてきたのだ。
「初心者のマリカちゃんにいい事教えてあげる。
ヒカリの羽はフェニックスに会う扉の鍵なのよ?
この羽を鍵穴に入れれば、フェニックスの所へ行けるわ」
ゆうゆうとした表情で彼女は出現した扉の鍵穴にはヒカリの羽を入れようとした
その時だったーーー
「…タイタンウォール」
扉の前にあの強靭の土の壁があらわれた。
「この壁は…アキラ!!」
「俺は裏切者が嫌いだ」
鍵穴が土壁の向こう側となってしまった今、ツバキは扉を開ける事なんて不可能になった。
「風に効果抜群の属性って何か知ってるか?」
気付けば屋上から降りてきたユウヒが私の隣に立っていた。
土属性が苦手な属性は…
「炎?」
「ご名答」
ユウヒが呪文を唱えた瞬間、炎の鎖がツバキさんに巻きつき身動きが取れない状態にしたのだ。
「風のコイツじゃ、俺の鎖はどうやったって切れねぇよ」
「くそぉ。あと、少しだったのに…」
ツバキさんはその場で泣き崩れた。
……なんでよ?
仲良くしてくれたのは全部嘘だったの?
嬉しかったのは私だけ??
そんなのバカみたいじゃん……
「……ねぇ、マリカちゃん
あなたは本当にみ」
ツバキさんが私に何か言いかけた時……
ウーーウーー
サイレンが鳴り響いた。
ツバキさんの目の前に赤色のウィンドウがでてきた。
「…これってもしかして」
「ペナルティだよ。ヒロヤを傷付けたから
……それにマリカも」
ヒナタが答えてくれた。
ピロロローン
“ペナルティ発生ペナルティ発生。風属性Bランク、ツバキ強制送還”
アナウンスのようなものが流れた。
「…覚えときなさいよ」
きぃっと私達を睨んだツバキさんは、シュッっと強制的に瞬間移動となった。
「強制送還ってどこへ行ったんだろ…」
「知るか。ルールを守らないやつの事なんか」
ユウヒが冷たく答えた。
「マリカ、大丈夫だったか?!」
ぎゅっ
「ちょ、お兄ちゃん!?」
いやいや、お兄ちゃんとは至って仲が悪い訳でもないし、特別仲が良いって訳でもない。
抱きつかれるのが初めてでびっくりしたのだ。
「よかったぁ……」
……心配してくれたんだ。
「大丈夫だよ?ありがとう」
「ツバキがごめん。
裏切るとは思わなかったから。
今までずっと一緒にいたやつだんだ」
ツバキさんの裏切りはお兄ちゃんも傷付けていたのだ……
「マリカ、俺は今からツバキの事報告する為にセントラルに行く。
話はまた今度でいいか?」
「うん」
「アキラ行くぞ」
「……了解」
シュッ
2人が瞬間移動をしたのだ。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
「あ、ヒロヤ君目を覚ましたよ」
「あれ?ここって」
「…廃墟の前だ。
ったくお前のドラゴンよくやるよな」
ヒカリの羽をもってセントラルに帰ることは危険だと判断した私たちはその場から動かなかったのだ。
「ヒナタ僕のドラゴン強かった?」
「うん、とっても強かったよ」
無垢なヒロヤ君は真実を知らない。
きっとツバキさんの事は
知らない方がヒロヤ君のためにもなると思った。
「はい、ヒロヤ。これは君のだ」
ヒナタがヒカリの羽を渡した。
これで帰れるんだね。
…なんだろう。嬉しいはずなのに涙が溢れそう。
「ヒナタ、ありがとう~」
天使の笑顔に私は何度も癒されたな。
この世界で生きていくのが嫌だったけど、ヒロヤ君がいたから私はここまで頑張れたんだよね。
「マリちゃんも一緒に行こ?」
「俺たちは後から行くよ。
だからヒロヤは俺達を待っててくれるかい?」
ヒロヤ君は1人ずつしか行けない事を知らない。
「ユウヒ本当??」
「…おう。当たり前だ。な、アホマリ」
「う、うん。」
「マリちゃん、泣いてる?」
いつも私にくっついていたヒロヤ君は私がいつもと違う様子にすぐ気づいてしまった。
「大丈夫だよ。私ねヒロヤ君がいてくれたからここまで頑張れたんだよ。ありがとう」
「ふふふ。マリちゃん僕こそありがとうだよ。……また会える?」
「……もちろん」
守れるかわからない約束をした。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
「あ、ヒロヤ君目を覚ましたよ」
「マリちゃん?ここって」
「…廃墟の前だ。
ったくお前のドラゴンよくやるよな」
ヒカリの羽をもってセントラルに帰ることは危険だと判断した私たちはその場から動かなかったのだ。
「ヒナタ僕のドラゴン強かった?」
「うん、とっても強かったよ」
無垢なヒロヤ君は真実を知らない。きっと知らない方がヒロヤ君のためにもなると思った。
「はい、ヒロヤ。これは君のだ」
ヒナタがヒカリの羽を渡した。
これで帰れるんだね。
…なんだろう。嬉しいはずなのに涙が溢れそう。
「ヒナタ、ありがとう~」
天使の笑顔に私は何度も癒されたな。
この世界で生きていくのが嫌だったけど、ヒロヤ君がいたから私はここまで頑張れたんだよね。
「マリちゃんも一緒に行こ?」
「俺たちは後から行くよ。だからヒロヤは俺達を待っててくれるかい?」
ヒロヤ君は1人ずつしか行けない事を知らない。
「ユウヒ本当??」
「…おう。当たり前だ。な、アホマリ」
「う、うん。」
「マリちゃん、泣いてる?」
いつも私にくっついていたヒロヤ君は私がいつもと違う様子にすぐ気づいてしまった。
「大丈夫だよ。私ねヒロヤ君がいてくれたからここまで頑張れたんだよ。ありがとう」
「ふふふ。マリちゃん僕こそありがとうだよ。……また会える?」
「……もちろん」
守れるかわからない約束をした。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
「あ、ヒロヤ君目を覚ましたよ」
「マリちゃん?ここって」
「…廃墟の前だ。
ったくお前のドラゴンよくやるよな」
ヒカリの羽をもってセントラルに帰ることは危険だと判断した私たちはその場から動かなかったのだ。
「ヒナタ僕のドラゴン強かった?」
「うん、とっても強かったよ」
無垢なヒロヤ君は真実を知らない。きっと知らない方がヒロヤ君のためにもなると思った。
「はい、ヒロヤ。これは君のだ」
ヒナタがヒカリの羽を渡した。
これで帰れるんだね。
…なんだろう。嬉しいはずなのに涙が溢れそう。
「ヒナタ、ありがとう~」
天使の笑顔に私は何度も癒されたな。
この世界で生きていくのが嫌だったけど、ヒロヤ君がいたから私はここまで頑張れたんだよね。
「マリちゃんも一緒に行こ?」
「俺たちは後から行くよ。だからヒロヤは俺達を待っててくれるかい?」
ヒロヤ君は1人ずつしか行けない事を知らない。
「ユウヒ本当??」
「…おう。当たり前だ。な、アホマリ」
「う、うん。」
「マリちゃん、泣いてる?」
いつも私にくっついていたヒロヤ君は私がいつもと違う様子にすぐ気づいてしまった。
「大丈夫だよ。私ねヒロヤ君がいてくれたからここまで頑張れたんだよ。ありがとう」
「ふふふ。マリちゃん僕こそありがとうだよ。……また会える?」
「……もちろん」
守れるかわからない約束をした。
「ヒロヤ、これを鍵穴に入れて扉を開けるんだ。
そこで現実世界に帰りたいって言うんだよ?」
ヒナタがわかり易くヒロヤ君に話をしていた。
私はただそれを見ているだけ。
「わかった」
……本当に行っちゃうんだ。
「マリちゃん、ありがとう」
ぎゅうっといつもの様にヒロヤ君が抱き着いて、ゆっくり離れていく……
「じゃあ、みんなまた後でね」
羽を鍵穴に入れた瞬間黄金の光が放たれ、扉が開いた。
「マリちゃーん大好きだからね!!」
「私もヒロヤ君大好き!!」
「ヒナタもユウヒも
マリちゃんいじめちゃダメだからね!」
「うるせぇ」
「わかったよ~」
ヒロヤ君は扉の中に入ってしまった。
すると扉は消えて光の柱も無くなってしまった。
一気に静けさが訪れたのだ。
「行っちゃったね。マリカ大丈夫?」
我慢していた涙が一気に溢れ出した。
「よく耐えた。がんばったよ、お前」
ヒナタとユウヒが優しくて、私が泣き止むまで隣にいてくれた。