#0 プロローグ
ボクは幼い頃から、魔法が大好きな子と言われていた。
幼少からテレビに映る魔法の世界に憧れ、紙と棒でできたステッキを振り回し、家中をクレヨンの魔法陣でいっぱいにしては両親に怒られていた。幼いながらも部屋を与えられ、魔法を使うのは部屋の中だけと釘を刺されながらも、有り余る魔法への憧れは体から溢れんばかりだった。
与えられた部屋の窓の外には、いつだって羽の生えたピンク色の象や、虹色のローブを纏う魔法使いが空を飛び、描く魔法陣からは毎日違う不思議が顔を出す。忙しい両親の代わりにボクの日常を彩り豊かなものにしてくれた。
夜に帰ってきた両親に、その頃のボクは決まって
「きょうはね、みんなといっしょにおそらをおさんぽしたんだよ!」
と、その日のことをはしゃぎながら話していた。二人とも子どもの世界の話を、聞いてくれていた。
時が経ち、もうすぐボクは中学2年生になる。年を重ねる毎に窓に浮かぶものを見ることは少なくなったけど、それでも窓の外には今日もこの世ならざる光景が広がっている。
今日の夜も両親はボクの話を聞いて頷きを返してくれる。
でも、話を本気にしてはいない。それはボクにだって分かっている。
魔法という存在は、空想でしかなく
これからも、魔法という存在が現れることはないという現実に、ボクは気付いてしまっていた。
だが、運命の日に。
それは窓の外ではなく、内側に現れた。
部屋の中心から突如ボクの視界を埋めるほどの光がほとばしる。
徐々にその光は円形に象られ、円の中に図形を配置していく。
まるでそれは、漫画やアニメの「魔法陣」のようだ。
その中心から、細い手が、腕が、そして一人の少女が現れた。
人形のように整った顔、きめ細やかな白い肌、風を受けたように広がる黒髪。白を基調として控えめな赤や黄色の装飾が散りばめられた装束も相まって、その姿は神に仕える巫女のように見える。
「klgbshtrんsm、jdyksnがwpggdsん!」
彼女が不思議な言葉を話して、ボクの手を取る。
「え?」
その細腕からは想像できないしっかりとした力のまま、ボクは少女に引き寄せられ、二人まとめて光の奔流に飲み込まれた。
初めての投稿になります。
拙い部分もありますが、これからよろしくお願いいたします。