91話【遭遇1・出現・】
「俺はリセットしねぇよ。既にリセット者だからな」
篠川は砂時計を取り出し、女に見せつける。
女は「あ……」と呟き、俺の砂時計を睨みつける。
「ホンモノ、かよ……」
女は舌打ちをして叫び始める。
突然、叫びだした女の言葉を一つ一つ読み取っていくと_____
「おい!居るんだろ!ハーちゃん!なぁ!」
「ハーちゃん!見てんだろ!」
ハーちゃん……?
だれだよ、それ。
お前の知り合いを呼びたいなら、ここで呼ばなくても良いだろ。
うるさく叫び続ける女をジッと睨んでいると、
「ハーちゃん、はここに居ますけど」
篠川の背後で聞き覚えのある声がしていた。
妙に落ち着き、冷たい、冷めてる………というか、なんというか。
頭を動かし、振り返ればそこには__________
「篠川さん、こんにちは。占い師です」
「ハーちゃんってお前のことだったか!?」
「言ってませんでしたっけ?」
・・・記憶に無い。
元々物忘れしやすい体質のせいか、話してくれていないのか、分からない。
占い師はローブの隙間から手を出し、篠川に何かを見せる。
それは、ホワイトボードだった。
黒いペンで丸文字が書かれている。
{逃げて下さい}
始め、その文字が目に入ってきた時何も理解できなかった。
に、げぇろ?
その言葉に頭をひねる。
逃げる、ということ自体人生でほとんど味合わない。
{逃げて}
もう一度、占い師は文字を書く。
どんどん頭の中はこんがらがって行く。
「何の話してるのかは知らないけれど、既にリセット者なら興味はない」
良かった、興味が無いということは=ここでオサラバだ。
篠川は「やったー!」と叫び、クルリと赤ローブに背を向け走り出す。
占い師を残したまま。
しかし、まぁ簡単に逃げられるわけもなく、人生がすんなりと進むわけもなく、そんな事がすんなりいく人間など何人居るのか居ないのか。
いきなり目の前に暗く渦巻く闇が現れ、ぴったりと蓋が閉じられ、光が一つも入らず、閉じ込められてしまう。
「・・・人生うまくいかねぇな」




