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85話【墓地で遭遇】

篠川はふと、鞄から携帯電話を取り出し、カレンダーを見ていた。


(やっぱり………今日だ)


真夏の今日、それは篠川の母親の命日である。

あの日は絶対に忘れない。


_____________

篠川、明日夏は母親と共に買い物へ行っていた。

それは、夕方の帰りに起きた事。


いつもの様に、川沿いの小さな道を歩いていると、なぜかその日は騒がしい気がした。

川原のほうへ目をやると、大学生くらいのサークル仲間か、バーベキューをしていたのだ。


「バーベキューだ!」

「本当だね」


俺には母親の顔が分からない。

俺の母親は居ないため、殆どの人間にはいる、と嘘をついてきた。


俺がバーベキューにはしゃいでいると、背後から車が近づいていた。

ブレーキ音は一つも聞こえなかった。


気が付けば、母親の姿は消えていた。

明日夏はその場に立ち尽くしている。


________________________



篠川は学校が終わると、すぐに鞄を持ってでていき、近くの花屋で花束を購入した。

そして木陰のある道を選びながら、墓地がある場所へ向かう___


___灰色や、黒などの色とりどりの墓石が並んだ墓場に、少しだけ小さな墓があった。

そこには「篠川家の墓」と彫られている。


持ってきた花束を古い物と取り替え、墓石を洗い、手を合わせ、立ち上がった。


「母さん、ありがとう」


母親の事を聞かれた際は、必ず嘘を話した。居ると、偽ってきたのだ。

まだ、誰にもバレてはいないと思っているが……


振り返り、帰ろうとした時誰かがこちらを見ていた。

ハッ、として目をやると、


「篠川?」


華山だった。

長い髪は後ろで結ばれ、白いTシャツに濃い緑色の短パンを合わせ、手に花束を持っていた。


「誰を………?」


篠川はその言葉にブルリ、と震える。が、口を開いた。


「母」

「私は、父」


2人はその後は言葉を交わさず、すれ違う様に華山は墓石の前で手を合わせ、篠川は帰り始めた。

華山も静かに立ち上がり、篠川を追う様に歩き出した。


「・・・・・」

「・・・・・」


二人の間に会話はなく、葬式の様に静かだった。

ザザッと風が吹くたび、草が揺れ体に当たる。


華山は途中で道の片側により、そこで自転車に跨り緩い坂道を下っていった。

篠川は変わらず、ゆっくり坂道を歩いていく。


途中で竹藪に入り、あたりは翠に包まれる。

地面には葉が落ち、カサカサと歩く度音を立てる。


華山はもう、何処にも居なかった。



墓地を出ると、またテクテクと強い日差しに耐えながら歩いていく。


次、来る日はいつになるのだろう………



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