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84話【真夏のブチョウ】


煩く蝉がなく今日、華山は夏休みだというのに制服をきっちり着て、手には鞄を持ち、通学路を歩いていた。

真夏の太陽は、華山を照らし額には汗が滲む。

白い制服は汗でベットリと張り付き、数分おきに口にペットボトルの水を含んだ。


「あちぃ。なんて、暑いのよ」


目に汗が入り、チクチクと痛む。

(誰か、自転車の後ろに乗せてくれないかネェ)

なんて、都合の良いことを考えながら、足を動かす。


その時、後ろから自転車のベルが鳴り、華山の体は飛び上がっていた。

チッ、と舌打ちをして道の端によると、自転車は華山の横で停車していた。

華山は口を開き、相手を睨______


「全く、まだ用事が______」


自転車に乗っていた相手は、見覚えのある生徒だ。

茶髪の短髪の、小麦色に焼けた健康的な肌の少年。


「乗って行きなよ。学校までだろ?俺も近くまで行くから」

「誰?」


少年は、悲しそうに笑って、華山を自転車の後ろへ乗るように即す。

華山は「ありがとう」と、礼を言って後ろへ乗った_________



「部長!部長!寝ないでくださいよ!」


誰かの声で華山は頭を起こしていた。

重たい頭は、今にもコロコロと転がっていきそうだ。


「ごめん、夢みてた………」

「部長も夢見るんですね。でも、結構幸せそうな顔してましたよ」


その途端、華山の顔はリンゴ飴のように真っ赤になってしまう。

カァァァ、と血が上り頭が熱い。


「からかわないで!ちょっと、良いことがあっただけ。(でも、誰だろう?)」

「彼氏さんとデートの夢ですか?そう言えば、彼氏さんは?」

「ハァ!?何言ってるの?…………いいから!戻ってよ!夏祭り新聞完成してないでしょう?」


しぶしぶ、その生徒は席へ戻っていった。

華山は顔を抑え、頭を下げる。


「どうして、どうして。もぉ!夏なんか大っ嫌い!」


華山はキーボードを打っていった。

ガチャガチャ、と激しくキーが動き、部屋が騒がしくなる。

その時、先ほどの生徒が華山の近くに寄ってきて、


「部長、部長の記事作ってみました♪」

「何言ってるの?私の記事?そんなもの載せて、誰が読むのよ、貸して」


{『恋する部長』夏のある日、何時ものようにカメラを持って取材をしていると、道路を挟んだ向かい側に1人の少年が立っていました。その少年のいる場所だけは、なぜか太陽が照り、その周りは暗い影になっていました。あの、少年は誰なのでしょう。只、一つ分かることは我ら新聞部の部長と親しい仲だという事__________}


「………なんて、記事作ってるの!!今すぐ、この記事は作り直して!こんなの書いたらダメ!」

「そんな事、言われましても(部長抜きの)会議で決定した事ですし」


華山は慌てて、その生徒が使っていたパソコンへ走り、マウスを動かし原稿を削除する。そして、生徒の手の中の新聞を破り捨て、記事を没にした。


「いい?二度とこんな事は書かないで」


華山は大きく溜息をつき、鞄を持って部屋を出ていった。

(もぉ、なんであんな夢ばっかり見るのよ……)


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