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74話【最後に……】

手術が行われ、部屋の外に凛は膝に額を付けて終了を待っていた。雪くん……。致命傷ではない様だったけれど、後遺症とか色々残ってしまったらどうしよう。凛は両手を固く握り締め、椅子に座っていた。


しばらくすると、篠川、日和、美和、クラスの同級生数人が病院へ肩で息をしながら到着した。先程凛がメールを送ったためだ。皆顔を真っ赤にして飛び出してきたのだろう。

「救急車で運ばれたのは、見ましたがまさか手術が必要になる程の大怪我とは……」

日和が短い真っ黒なショートヘアを揺らしながら、胸に手を当てて話す。寮のリビングに居合わせていたのだ。


「雪、大丈夫なのか?」

凛達と同じクラスの生徒が手術室を睨みながら、凛に問う。その生徒はまだ、制服を着たままだ。腕時計で時間を確認すると帰りが遅い部活は、今頃が帰宅時間だった。

「分かんない。刃渡り20センチの家庭用の包丁だったらしいけど」

美和は凛の隣に腰掛け、華山の背中に手を当てた。

「先輩、大丈夫ですよ。きっと無事ですから」

「だと良いけど。包丁は心臓まで行ってなかったし、血もそこまで出てなかった。でも………」


日和は篠川の方へ向き、

「雪君って誰ですか?良く考えたら私知りません」

「華山達と同じクラスだから、校舎が違うだろ」

「そうですか……」

濃い紫色の上着のポケットに日和は手を入れ、手術中とかかれた赤いランプを見つめた。血の様なランプはまだ、ついている。早く、無事に手術が終わると良いなぁ。


______しばらく時間が経ち、門限のある寮以外の生徒は帰って行き寮メンバーだけが病院に残った。美和も鞄を手に取り、手を振って帰っていった。まだ、華山は膝に顔を埋め座ったままだ。灰色の床には涙がポツポツと落ちている。


「雪君、死なないで…。雪君、元の世界に帰してあげるから」

華山は制服の袖で涙を拭き、篠川の腕を掴み日和から離れ、数メートル距離をとった場所で、

「手術が終わったら雪君をこれ以上危険な目に合わせたくないから、帰してあげて。雪君を守りたいから、お願い」

篠川は「はいはい」と返事をして、携帯電話を取り出し廊下を歩いていった。


華山は篠川を見送ると、手術室を見つめた。

「雪君_____」




篠川は病院の外のベンチに腰掛け、携帯電話を取り出し占い師を電話帳から探し出し、電話をかけた。呼び出し音が鳴り続けるが、占い師は出ない。切ろうかと思った時、

「もしもし?うっらないしでーす!しっのかわさんですか!?」

いつも以上に上機嫌の占い師は、ワハハと笑った。篠川は短く舌打ちをして、

「雪って奴を元の世界に帰してやってくれ」

「え?雪?あー、あの茶髪君ですか。ほぉほぉ、OKです」

占い師はそう言って、電話を切りパソコンのキーボードを打っていった。


篠川が戻ると、手術は終了して雪は病室へ運ばれていった。華山は慌てて、雪を追いかける。病室へ入った雪はスヤスヤ、と寝息を立てて眠っている。無事だった様だ。

凛は雪の手を握り、

「帰してあげるから。元の世界に……」

と呟き、雪の顔を覗き込んだ。幸せそうに眠っている。良かった……。このまま、眠ったまま元の世界に戻っちゃうのかな?だったら…。凛は鞄からペンを取り出し、蓋を取った。そして、雪の手首にペンでメッセージを書いた。


全て、雪に元の世界に帰ってもらって忘れてもらっても良かった。でも、嫌だという自分がどこかに居て…。布団にそっと手を戻し、雪にそっと顔を近づけた。




占い師はEnterキーを打って、雪を帰す作業を終了させた。

「これで、雪さんは帰ることになりますね」

占い師は伸びをして、机の上のお菓子に手を伸ばした。が、

「また、食べてるんですか?糖尿病になります」

と、同僚に腕を掴まれお菓子は没収されてしまった。お菓子のカゴはそのまま誘拐され、戻ってくる事は無かった。

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