70話【絶叫しない部長のリア充さん!】
「ああああ!どうしよう、雪くん困らせちゃった」
頭を抱えながら、凛はゴミ箱に紙パックを投げ捨てた。
やっぱり、悪かったな。
うわぁ、いけない事しちゃった。
その頃、雪は。
「どどどどどどどうしよう。凛、困っちゃったかな。
ああああ、ストロー既に刺さってるのに気にしないのは良くなかったな。
あああああ、馬鹿馬鹿。ごめんね、凛…」
雪は溜息をついて、凛の帰りを待った。
そして数分後、凛は帰ってくる。
汗だくの顔面蒼白の凛は雪の前に立った。
雪は、凛とは違い顔が真っ赤だった。
そして雪は凛に頭を下げた。
「ごめんなさい!ストロー刺さってたのに、凛が飲んでる事気がつかなくて、それで確認もせずそのまま受け取っちゃって、それで咥えちゃってごめんなさい!」
凛は雪の頭を撫でた。
柔らかい髪の毛が指の間に入り込んでくる。
不良ぽかったけれど、全然可愛いじゃない。
_______________
そして篠川は。
夕凪が他のグループに移動した為、休み時間はすっかり暇になっていた。
涼と誠は二人とも机に突っ伏して寝てしまうし。
美和も読書をして本から目をあげようとしない。
仕方なく、教室を出て校舎裏へ向かった。
そこで占い師に電話を掛ける。
呼び出し音が数回なった後、占い師が電話に出た。
「篠川さん!いやぁ、最近電話してくれないから寂しかったんですよ。で、なんの用ですか?」
「華山だよ。最近、どうしてる?」
「あっ!リア充生活送ってますよ」
良かった。
幸せなんだ。
電話を掛けながら俺は自販機でコーヒーを買う。
ストローを挿して口に咥えながら話を聞いてく。
「実はですね、華山さん、彼氏できたみたいです。結構カッコいい彼氏さんです。それでですね、彼と共にこちらの世界へ戻って来たみたいですよ」
ブシャーーーーーーッとコーヒーが口から放出された。
咳き込みながら、占い師に叫ぶ。
「ハァ?彼氏ができた?リア充生活?こっちへ戻って来た?部活は休み続ける?おい、華山今何してる!」
「華山さんは、今は彼氏さんと楽しく美術の時間です。乗り込むとかはやめてあげて下さい。可哀想ですから」
短く舌打ちをして、俺は電話を切った。
あぁ?彼氏とか出来る感じのしない残念な美人脱却ですか。
もう、幸せいっぱいの美人新聞部の部長ですか!?
なんだか、敗北感を感じて俺は伸びをした。
彼氏ができた華山はすっかり変わってしまった。
新聞部でも優しく指導をして、〆切の前日も叫ばなくなった。
というより、前が酷かったのかもしれない。
「お前らぁ!〆切前日だぞ、おい!さっさと原稿一枚ぐらい仕上げろヤァ!」
という絶叫を聞く事ができなくなってしまった。
今では、
「〆切の前日ですから、急いでくださいね」
なぁんて、言ってやがるんだヨォ!
今までのお前はどこにやってって話だ。
スカートの丈は次第に短くなり、髪も整えられた。
「人間って恋したら、こんなに変わるんだな」




