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69話【使用済みの白いストロー】


ガコンという音と共に、オレンジの絵がプリントされたパックが落ちてくる。それを取り出し、手に握り凛は元来た道を帰り始めた。薄暗い校舎は不気味で、不審者や幽霊が出るのでは、と考えてしまう。凛は怖がっているわけではないのだが。頭の中で、それをどう記事にするか考えているのだ。


「やっぱり、夜の校舎で〜とかのほうが良いかな?」

などと、イメージを膨らませつつ歩き、角を曲がった。頭の中では原稿用紙が広げられている。(いやぁ、幽霊、この学校が住処か!?とかでも良いよね_____)と、考えているといつの間にか保健室前の廊下に立っていた。そこで体の向きを変え、雪くんの元へ。


「雪くん、どこ?」

薄暗い校舎では人の顔も判別できない。

「雪くん!返事して!」

先に帰ってしまったのだろうか。確かに、飲み物を買うだけに時間がかかってしまったかも知れない。それでも、先に帰るような人だろうか。確かに、不良ではあるが。仕方なく、雪の居た場所にしゃがみ、壁にもたれた。まだ、壁は雪の体温で温かい。さっきまで、ついさっきまで、いたってことかな。


「先に帰るなんて……。もぉ、買ってきたのに」

仕方なく、自分の残り僅かな水を飲み干し、オレンジジュースの紙パックにストローを突き刺した。怒りを込めて、力強く。もし、もしも雪くんが帰ってしまっていたら。元の世界に帰ってしまっていたら。私はどうすれば良いの。何のお別れの言葉もなく、帰ってしまっていたら。ストローを口に咥え、凛は天井を見上げた。


その時、ドサッという音が隣から聞こえ、呼吸の音が耳に入った。

「雪……くん?」

「ごめん、この学校の中探検してた。そしたら、時間が経ってて慌てて戻ってきた」

なんだ、心配して損した。考え過ぎだったのだろう。早とちりで良かった。

「あっ!俺の頼んだオレンジジュースは?」

明るく雪は凛に問う。ギクッと凛は紙パックを手に取った。まだ、残っている。え、でもそれはマズイよね。うん、私飲んでるし。

「あ!凛の持ってるのが俺の?サンキュー!頂戴!」

雪は凛の手の紙パックを手に取り、ストローを口に咥えた。

「ちょっと、それは」

「何が?」


雪の陽気な声が返ってくる。ボンっと凛の顔が熟れた林檎のように赤くなる。

「それ、さっき飲んじゃったからさ、そのストローはちょっと」

その言葉に雪は耳まで熱くなっていくような気がした。今、口に咥えたストローは……。(え?なんで、凛が飲んでるの?喉乾いたのかな?あ、俺が帰ってくるのが遅くて待ちくたびれちゃった?)目線を下げ、ストローを見る。

「嫌、だよね。ごめん、ストローは除けるよ」

ストローを指で掴み、左手で持つと紙パックの角を破りそこから一気に飲んで行った。オレンジジュースを一気飲みした為、喉がチクチクと痛むが、恥ずかしさが勝ってしまった。


「あっ……ゴミは捨ててくるよ」

凛は紙パックとストローを受け取り、ゴミ箱へ歩いて行った。


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