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66話【心が汚い人間】


華山は退院した翌日から登校することができた。鞄を持ち、学校へ走る。

「雪君、雪君、雪____」

大好きな雪君を他人に取られたくなかった。奪われたくなかった。嘘だ、と言って欲しかった。玄関で雪の靴を確認すると、まだ来ていないようだ。華山は玄関の壁にもたれ、雪を待った。雪が来るのは7時55分丁度。華山が着いたのは7時52分。後、3分だ。


雪が来る55分になった時、しとしとと細い線が空から降ってきた。

「雨だ……」

雪君、傘持ってるかな。傘持って校門まで行こうかな。華山は傘立てから自分のクロい傘を取り玄関で開いて雪を待った。腕時計を見ると、57分になるところだ。今日は、遅いなぁ。今日は、休むのかな。そう思い、クルリと身を翻し戻ろうとした時、

「凛!」

と呼ぶ声がした。間違いない、雪君だ!華山の心臓の鼓動が早くなる。嬉しい。口を開き、雪君の名前を呼ぶ。「雪く………」声が途中で出なくなってしまった。全身から血の気が引き、体温が下がっていった。


雪君は、いつも通り白いシャツに黒の制服のズボンを履いている。変わりないのだ。シャツはボタンを外し、中にTシャツを着ている。でもね、なんで、雪君。私の場所にあいつがいるの?確かに、「付き合う」とは言ってた。でも、家の方向は真逆だよ?わざわざ迎えに行ったの?


そんな仲になってたの。電話で既に付き合っているとは聞いていた。けれども、そんな仲にまでなってたの?嘘だ嘘だ嘘だ。。凛が目を見開き、突っ立っていると雪君は、横を通っていった。挨拶だけをかわし、その他は何もしてくれなかった。


「雪君」

私の恋は終わったんだ。短い恋は終ったんだ。もう、散ってしまったんだ。こんな思いをしにリセットしに来たんなて馬鹿らしくてバカらしくて。

「もう、帰ろう」

華山は俯き、ポケットに手を入れた。スカートのポケットの中で右手を開いたり閉じたりして携帯を探す。冷たい何かに手が当たる。それを引っ張り出すと、いつ入ったのか。雪君が付けていたネックレスだ。シルバーのネックレス。何かの拍子に紛れ込んでしまったのだろう。(帰る前に、返さなくちゃ)


凛は教室へ入っていった。

「雪君、大っ嫌い。もう、顔も見たくない」

と、呟きながら歩いていく。そして教室へ入り、席に着くとある生徒が華山に声をかけてきた。髪を染め、短く切った少女。健康的に小麦色に焼けたスポーツが得意そうな子だった。華山の机に手をつき、問いかける。

「雪君と、付き合ってるの?私は、雛って言います」・・・。この子、なんではっきり聞くの?

「私、貴方を応援してるの。自分は恋とかそういうのに掛け離れた人間だからさ、人の恋とか応援したい訳。でさ、雪君と仲良いみたいじゃん?だから、つきあってるのかと……」

ギリッ、と華山の奥歯が音を鳴らす。膝の上で拳を握り、震える。

「ちょっとだけ、付き合っていた。でも振られた。私を捨てて、愛羅と付き合ってる」

雛の表情が変わっていた。怒りが混じった表情だ。彼女は目を吊り上げ、華山の手を取っていた。そしてそのまま教室から走って出て行った。


突然の出来事に周りの生徒たちは呆然と立ち尽くしてしまった。華山たちは、屋上への階段を上っていた。

「私、思うんだ!雪君は、愛羅が好きじゃない。本当に好きなのは_____」

足が止まった。雛は振り返り、華山を階段に座らせ自分も隣に腰掛けた。

「私、見てて分かった。雪君は、本当に凛ちゃんが大好きなの!大好きで大好きでたまらないの。でも、愛羅は雪君が大好きで凛ちゃんにまで被害を及ぼそうとしてる。だから、守るために離れたんだよ!」

「根拠、あるの?」

雛はドンっと胸を叩き、「傍観者の勘」と言って笑った。


「そっかぁ。まぁ、根拠はないけど雪君ならやりかねないや」

華山は笑った。もしそうだったら、雪は馬鹿で天才で____。雛は華山の床に置いた手を取り、握りしめた。

「雪君は、待ってる。凛ちゃんが来てくれるのを待ってる」

・・・・・待ってる?雪君が?雛はキッ、と華山を睨んだ。

「雪君が大好きなら、行ってあげて。雪君も待ってる。ずっと、待ってる」

「まっ、まさかぁ」

「諦めないで!自分の気持ちに嘘をつかないで!心は泣いてる!凛ちゃんが諦めちゃうって泣いてる!涙流してる…だから、行って」

雛は華山の背中を押した。

「凛ちゃん!ネックレス、返さないといけないでしょ?」


「うん」

華山は走り、屋上まで駆け上がった。扉を開け、屋上へ飛び出す。そこには、雪君が居た。凛が現れると、雪の表情は一変した。頬が赤くなり、俯いてしまう。

「雪君、ネックレス返しに来た」

雪は笑い、立ち上がった。

「わざわざ届けに来たの?」

ネックレスを受け取ると、自分の首には付けず、華山の首にはつけた。

「え……」

「あげる」

華山の首に、シルバーのネックレスが輝く。雪の後ろで愛羅が笑っていた。

「アハハハハハハ。雪君、それ私にくれない?」

手を差し出し、愛羅は笑う。しかし雪君は、振り向かなかった。そして、一言。

「お前みたいな心が汚い奴にこれは渡さない」





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