59話【情報収集で嘔吐】
俺は新聞部の人垣の隙間から、すり抜け皆の視線の先にある物を確かめた。
「なんなんだよ……」
目の前には赤い液体が円を描くかのように飛び散り、その真ん中で少女が絶命していた。死体は頭が割れており頭から落ちた事を物語る。腕も変な方向に曲がっている事から体を庇おうとしての骨折と思われる。
「うっ………」
隣にいた男子生徒は口元を抑え、地面にしゃがみ込んだ。新聞部の人間だ。俺はその生徒とその場を離れ、保健室へ歩いていった。あの現場から、どうしても離れたかった。男子生徒の口を押さえた手の隙間から液体が垂れている。
「うっ……ご、えん。うぇぇぇ」
まぁ、死体をみれば普通の人間であればこうなるだろう。生臭い匂いとかもあるし。ベチャベチャ、と液体が手のひらから流れ落ちていく。
保健室に着くと、俺は慌てて現場に戻り現場の状況を詳しくメモしていった。
{時刻・17時1分。現場・高校裏の庭。落ち葉多めの木の付近}
隣ではカメラを構える少女と、鳴き声をあげる少女がいた。
「うわぁぁぁぁあ。みやぁぁぁぁぁ」
みや、という少女なのか……。また、メモに書き加える。
{死亡した少女、みや}
同じクラスでも、陰が薄い生徒だと記憶にいない事が多い。今、聞いても良いのだろうか。と、思いつつも新聞部のため聞き込みを開始する。
「自殺した生徒は……?」という質問を、複数の生徒に投げかけていった。
「確か、美弥。獅子川美弥」
一つ目の情報。____獅子川美弥。
「虐められたんだよ。大人しいからさ……」
二つ目の情報。____性格はおとなしめ。
そうしているうちに、情報は集まっていった。
PM.6時半、情報交換会議が行われた。司会は何故か、俺。場所は高校の空き部屋だ。
「じゃあ、集めた情報を____」
俺の合図とともに、情報が教室を飛び交い始めた。
「んじゃ、その列」
「虐められていた女子生徒は、獅子川美弥。中学2年生、性格が大人しく虐めの標的に。親に迷惑をかけられないと、相談はしていませんでした。残る相談相手は姉の獅子川彩音ですが、元ヤンですが良い人だそうです。ですが、やはり姉が親にチクるのではないかと心配し結局言えなかったようです」
「では、先ほどの事件の現場を見てきた話です。飛び降りたと思われる屋上には無いと思われていた上履きがありました。遺書らしきものは見つかっていません」
などという、警察の捜査会議のような時間が流れていった。会議が終了したのは1時間後。PM.7時半。会議が終わると同時に、寮生以外は足早に帰っていった。
俺は最後まで教室に残っていた。黒板を消して、動かした机を戻す。ノートに内容を整理した後俺も教室を出た。寮までは小走りで向かい、帰るとまた内容を整理していった。読んでいるうちに、美弥が哀れに思える。
「虐めの相談が出来なかった、か」
頭の中に眼鏡の奥の目を細めて笑う美弥が浮かぶ。
「助けられなくて、ごめん」
窓の向こうで、校内から警察車両が出て行くのが見えた。こんな時間まで捜査かよ、ご苦労様だぜ。




