5話【食い違いと、一致】
違った。若い教師だった。
『篠川君、萩野先生って綺麗だよね』
美和は、うっとりとその萩野という教師に見とれている。しかし、俺の記憶にはそんな教師はいない。
『篠川君、大丈夫?萩野先生覚えてないの?』
俺の記憶の中に、そんな教師…………いた。覚えている。萩野帆乃華、確か研修生だ。やっぱり、記憶と一致する。これは………一体……。俺の頭の中が複雑に絡み始めた時、その教師は自己紹介を始めた。
『こんにちは。萩野帆乃華です。今日から1週間お世話になります』
やっぱり。萩野だった。一致する部分もあれば、食い違う部分もある。一体、この世界はどうなっているんだ。萩野の自己紹介は続く。
『担当教科は、数学です。これからこの学校の1年生になります。皆さんの方が、2年生で私より上になりますね』
おきまりの挨拶である。マニュアルを読んできたみたいな人間……。昔からかわらねぇな。いや、変わるわけが無いのだが。
俺が、心の中でぶつくさ呟いていた時、
『篠川君!1年生、だって!面白くなぁい?』
(いやいや、マニュアルぜってぇあるから。)
美和は、ケラケラと笑っている。こういうの、好きなんだ。初めて知ったなぁ。なんだか、このリセット人生も楽しくなってきた!しかし、いつ終わるんだ?
頭の中は、また複雑化していく。思考回路がショートしてしまい俺の頭の中は、会議が中断された。(あああああああああああああああああああ!)訳ワカンねぇよ。どうなってる!?
『みなさん、これから仲良くしてあげてくださいね』
この声は、萩野のものでは無い!俺は、その声の方へ頭を向けた。クラスメイトたちも、頭をそちらへ向ける。
(あっ!)
瀧本!あの、瀧本だ!
『せんせー、もう1時間目始まってますよー!ちこくぅでぇーす』
クラスのお調子者が、瀧本を笑う。すると、周りの生徒も笑い始め大騒ぎとなっていった。