57話【カンニングとか、虐めとか……】
テストが回収されていく。
テスト1日目は悲惨な結果で幕を閉じてしまった。しかし、ある噂が教室を駆け巡りテストの事などどうでも良くなっていた。
「カンニング」、その行為は絶対にしてはならない禁断の行為だ。うちのクラスの生徒がカンニングを行ったらしい。カンニングをされたという少女が友人にこの話をしたため、あっという間に伝染してしまった。
そのせいで、カンニングをした{と思われている}少女は孤立してしまった。少女に救いの手を差し伸べた人間には共犯の罪がきせられると、考えた生徒達は少女から離れていく。
篠川はただ、ジッと傍観する事しかしなかった。俺が変に首を突っ込んで解決する話でもないだろう。逆に、状況を悪化させてしまうだけ。
美和が要点ノートを鞄に片付けながら篠川に話しかけてきた。
「テスト期間中って、みんな敏感だから面倒くさいわよね」
篠川も相槌を打ちながら、話を見守っていく。
「まぁな」
「"正義の篠川"も今回は、お手上げですか?」
「正義、か____。まぁ、今回は首を下手に突っ込まない事にするよ」
面白くないわね、と美和は呟きながら足を組み直す。
首を突っ込んで、事態を悪化させてくれれば面白くなったのに。
まぁ、次事態が悪化すれば『虐め』が始まる事は、目に見えているわね。
篠川はそれを恐れたのかしら。
そこは私的にはガツンと言って、スッキリしたかったのだけれども。
「やけに大人しいわねぇ。気持ち悪いくらい」
「そりゃ、すみませんでした」
篠川は本当に気持ち悪いほど変わってしまっている。
(厨二病かしら……)
ヤレヤレと、首を振り髪を揺らしながら美和は体を動かし前へ向き直りペン回しをしながらテキストを読み進めていった。
「お前さ、カンニングがいけない事だって、分かるよな?」
机に座り、俯いた丸眼鏡の大人しそうな少女がクラスの不良に絡まれていた。
「っ………してませ___」
少女は口を開くと、不良達は椅子を蹴り転倒させる。大きな音がなり、少女の姿は消えていた。ただ小さな呻き声が教室に響くだけ。
「ぅぅ……ぅぁぅ……」
怪我をしたのだろうか。野次馬の目の前で腕を抑え、声を殺して泣いている。
スカートがめくれているが、気にしていないのだろうか。
倒れた少女の前の席の生徒にはガッツリ見えていたかも知れない。
眼鏡は床に曲がって落ちていた。周りの生徒は俯き、何も話さない。この光景をただ、ただ、ただ_____
周りの生徒達の恐怖に歪んでいた表情は、笑顔に変わっていた。
誰かが虐められて、見ているのは気分がいいものではないハズだが……
華山ならば、この光景を必死に記事にしていたかも知れない。
なんて、考えながら俺は見ているのも耐えられず、教室を出た。
廊下には誠と涼が二人、壁に体を預け少し開いた窓から中の様子を見ていた。
「お前ら、あれどう思う?」
篠川の質問に驚く二人だったが、
「まぁ駄目だろ。やり過ぎだと思うが……」
「そうだよ、な。まぁ、やり過ぎぃ___」
涼の様子は少し違った。何かがおかしかった。
「涼、様子が変だが。もしかして、お前も______」
涼はいきなり目の前にいた篠川に向かい、叫んだ。
「人間ってさ、いけないことだと知っていても見てしまうんだよ!それが、愉快だから!快感だから!癖になったらやめられないんだよ!」
涼が、虐めを黙認する人間だったとはね……。その様子に誠は驚き、固まってしまった。鉄人形のように動かない。
「涼、お前もアッチ側の人間かよ。人間のクズかよ」
涼の表情が変わったのが目で見ても、分かった。驚きを隠せないのか。
「お前ら……」と、呟きながら目を吊り上げ涼は教室の中へ消えていった。
言葉に詰まりしゃがみこんだ篠川の肩に、優しく誠は手をポンっと置いた。
「人間は、そんな生き物だよ。期待が大きい分、裏切られた時の悲しみも大きい」
誠は篠川の短い髪の毛をクシャクシャとして、篠川の横にしゃがんだ。
「俺はお前を裏切らない。一生の友だからな。人間も道の選択を間違えることだってあるよ。でも、間違えたって後戻りはできるんだよ」
篠川は顔を上げ、誠の頭に頭突きをお見舞いした。
「カッコ付けてんじゃねーよ!何、熱弁してんだよ……」
目尻の涙を指で拭きながら、誠に笑顔を見せた。
「ったくよ、まぁ涼が戻ってきた時は歓迎会やるからな」
「わかってるよ」
誠は親指を立て、グッジョブサインを見せる。
「あいつ、根っから悪い奴じゃねーよ。俺が保証する」
(篠川の保証、ね……)
付き合いが長い俺らならば涼を変えることが出来るだろうか。
もし涼が帰らないと、俺らのグループに、そう言ったとしても無理矢理連れて帰ろう。




